劇中劇とは、ストーリーの中で、
別のストーリーが入れ子になっていることをいう。
分かりやすい例は、
作中で演劇をやるときの舞台内容、
作中のテレビの中で流れるCM、
作中で噂される怪談などだ。
これがヌルイ出来だと、一気に作品の格が落ちる。
特に僕はCM業界にいるため、
CMシーンに煩い。
そんなヌルイCMオンエアしてるわけねえだろ、
もっとリアリティーのあるものつくれや、と突っ込みたくなることが多い。
(もっとも、リアリティーのあるCMをつくろうとしたら、
それだけで数千万かかるから、現実的ではないのかも知れないが)
冒頭だけ見て切ってまだ見ていない「ジャッジ!」の劇中CMは下手くそ過ぎた。
CMディレクター出身の中島哲也の傑作「下妻物語」の中では、
ジャスコのCMが素晴らしいパロディのクオリティで作られている。
あそこまでいって初めて劇中劇の格というものだ。
劇中劇は、すなわち本編の中にもう一本話を創作しなければならない、
ということである。
近いのは過去話だ。
しかし、過去のことが現在の何かに繋がるから、
現在の文脈から隔離されているわけではないので、
厳密な意味での劇中劇ではない。
が、回想シーンまるまる劇中劇的な扱いにはなるかも知れない。
漫画「ガラスの仮面」は、演じる舞台劇を様々に変えて行く、
劇中劇をメインとした、特殊な構造を持っている。
毎回演目は変わるから、毎回劇中劇を考えなければならない。
そのクオリティが物凄く高いのがガラスの仮面の特徴だ。
その演劇一本だけでも作品として成立するくらいの、
密度と分量を持った劇中劇だらけなのだ。
(参考の為に読むのをすすめる。しかし、
未だ完結していない地獄に招待されることになるよ)
Wikiによれば、その殆どがなんと創作なのだそうだ。
だから尺に入るのだろう。
作者は、開始当初から「幻の舞台」といわれた演目「紅天女」を
マクガフィンに、ずっと話を続けている。
その劇中劇が完成したときが、恐らくガラスの仮面が完結するときだ。
これほどクオリティが高くなくとも、
舞台劇がクライマックスに来るような作品は沢山ある。
この舞台のストーリーのクオリティが低くないようにするには、
あなたがもう一本脚本を書くのと同じ労力を使わなければならないのである。
劇中劇は、
出来れば起承転結をもった完結したストーリーが良いが、
部分的な場合もある。
例えば「映画のオーディション」シーンを考えよう。
そこで読む台本の原稿を書いてみたまえ。
何を書いてもいいが、
「映画の中のワンシーン」のリアリティーを持った内容でなければならないことは、
予想がつくだろう。
「月が綺麗ですね」「まあ」
のレベルではコントだ。
うっとりするようなシーン、ハラハラするシーン、
熱い台詞が交わされるシーン、
とにかくそんな感情が凝縮された、
見ているだけで引き込まれるワンシーンが、
そもそも書けなくてはならない。
奇しくも、「太秦ライムライト」「インザヒーロー」では、
クライマックスの劇中劇が、両方ともアクションシーンだった。
どちらも、アクションは凄いのだが、
これはどんな文脈のどういう役割のシーンか、
という、最も大事な「シーンの目的、焦点」が欠けていた。
だから、我々は何が成功で何が失敗か、
何もハラハラ出来なかった。
アクションが成功するかどうかという、
隠し芸大会が成功するかどうかと同じレベルの緊張しかなかった。
つまり、映画に必要な焦点が書けない脚本家は、
劇中劇でも書けないのである。
劇中劇は大抵短い。
数分から10分もない短さだ。
つまり短編で凝縮しなければならない。
それを分かってない脚本家が書くと、
凝縮されていない、ヌルイ劇中劇を書くことになる。
例えばテレビの中のニュースは、
頻出する劇中劇の例だ。
ニュース番組の内容を、上手に凝縮しなければならない。
それが下手だと、リアリティーのないニュース番組になってしまう。
劇中劇としてのテレビの中のバラエティー、歌番組などを、
パッと書ける人はいないだろう。
よく観察し、その本質を抽出するように凝縮して書く筈だ。
それは、普段からそのようにして脚本を書いていなければ出来ないだろう。
テレビの中の漫才を見て笑う、なんてシーンも典型的だ。
劇中劇としての漫才ネタが、
世間の爆笑ネタばりに、よく出来ていなければならないのだ。
劇中歌は、作曲家や作詞家がつくってくれる。
劇中アクションは、殺陣師がつくってくれる。
劇中「劇」は、劇を作る、脚本家がつくるしかない。
そもそも劇を作る能力が低いのなら、
劇中劇は輪をかけて下手になるだろう。
劇中劇のレベルを見れば、その作家のレベルがわかるというものだ。
(とかなんとか言いながら、
てんぐ探偵第13話にはオーディションのシーンがあったりして、
俺のレベルが知れるかも知れない。
ちょっとした工夫で楽しませてやるぜ)
2014年11月08日
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