2014年11月10日

最良の台詞2

表情だけで語る例で、
漫画「ブラックジャック」を出してみよう。


ハッピーエンドのときの、
相手のなんとも言えない表情。
ビターエンドのときの、
ブラックジャックの苦悩の表情。

ブラックジャックは、どのエピソードも、
最後の主人公の顔が全てを物語るように、
構成されていることが多い。

大抵は無言だが、
「先生愛ちてゆ」などのようにいい台詞を伴うこともある。

僕の愛するエピソード、
師匠本間先生が死んだときのラスト、
「人間が生き死にを自由にしようなんて、
おこがましいとは思わんかね…………」
の「…………」に注目だ。
このときブラックジャックは顔を伏せ、その表情は分からない。
しかし顔を伏せる、という芝居の「間」を「…………」で表している。
(前項の、最良の台詞の指示を「…………」ですることを思いだそう)

つまり、ブラックジャックは、
優れて映画的な表現手法なのだ。

ハリウッドの格言、最良の台詞は無言である、
を、毎回毎回描いて見せたのだ。
漫画の神様がたどり着いた境地は、
ラストの顔で、何もかも語ることだったのだ。



ちなみに「てんぐ探偵」は、
心のブラックジャックだと思って、話をつくっている。
一話完結スタイル、色々な所に出張すること、
人間ドラマごと引き受けて「治療」することなど、
形式的には近い。
(元々妖怪退治譚というものは、「恨みを晴らす」ことをする人間ドラマだが)

だから、シナリオでは多分、最後の表情に何もかも込めるようにするだろう。
小説では、台詞という言葉で勝負しているが。
posted by おおおかとしひこ at 18:25| Comment(0) | TrackBack(0) | 脚本論 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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