2014年11月11日

4コマ漫画とイコンと映画

昔書いたことあるかも知れないが。

松本人志が言っていたのだが、
「映画を4コマ漫画にしたら」という話をしていて、
それは脚本のトレーニングになると思ったことがある。


たとえば、桃太郎を4コマにする。
ロッキーを4コマにする。
スターウォーズを4コマにする。

台詞はなしか、一言二言だろう。

それで、ストーリーが分かるように4コマを書けるだろうか。


このエクササイズは、
イコンの研究でもある。

イコンとは、場面がいい絵になっていること、
その場面がストーリーをうまく表していること、
のふたつが同時に成立していることだ。

桃太郎の4コマは、たとえばこうだ。
1桃から生まれた桃太郎
2吉備団子で犬雉猿を仲間に
3鬼ヶ島で大活躍
4宝物をぶんどって(奪還して)めでたしめでたし

あるいは、こうもかける。
1桃から生まれた桃太郎
2長じて鬼退治へ、吉備団子をばあさんからもらう
3吉備団子で犬雉猿を仲間に
4鬼退治

桃太郎の特色は、このどの場面もがイコンになることだ。
イコンになるということは、
絵本になるということである。
桃太郎の絵本を描かなければならないとして、
4枚しか描けない制限をつけるなら、このどちらかが正解だろう。

さて、イコンになるということは、
それが独自の絵になることだ。

桃太郎でいえば、
桃から生まれた桃太郎、吉備団子で犬雉猿を、
鬼ヶ島で鬼退治、
あたりが、オリジナリティーのある(他に見ない)絵だ。
だから桃太郎は絵本になりやすい。

絵で語りやすい、しかも独自の絵の物語だからだ。


4コマで物語を表現するエクササイズは、
物語から絵になる独自の場面、イコンと、
物語の重要ポイントを絞る訓練になるのだ。

ロッキーで試しにやってみて欲しい。


ロッキーには様々な独自の絵と、ストーリーの重要ポイントがある。
生卵を飲む場面、階段をかけ上がる場面、
試合の場面、エイドリアーンと叫ぶラスト、
アイススケートのデート、ドアの場所でのキス、
ポーリーとのケンカ、ポーリーの冷凍庫での肉叩き、などなど。

僕ならこうする。
1アイススケートのデートで引退を漏らす
2生卵を飲む
3試合で負けたが最後まで立ってた
4エイドリアーン

イコンになる場面と、ストーリーを語る場面とを、
うまく構成することがポイントだ。

他の名作、あなたのオールタイムベストで20本ぐらいやってみるとよい。


さて、
これをやってみると分かるのが、
「ストーリーで重要なポイントは、イコンにするべきだ」
という法則だ。
どんなに重要な場面だとしても、
絵になる場面でないと、この4コマには登場しないからだ。

ここに、「絵で物語を語る」という、映画の特徴が顔を出す。


小説では、おそらく物語の重要ポイントがイコンになるかどうかは、
重要視する必要はないと思う。
しかし少なくとも映画では、重要なポイントは、
絵にならなければならないのだ。

重要なポイントはどこか。

セットアップや渇きを描くこと、
きっかけ、
第一ターニングポイント、
ミッドポイント、
ボトムポイント(どん底)、
第二ターニングポイント、
クライマックス、
ラストシーン、
などである。

これらは脚本上の構造ポイントだ。

こればかりではなく、
独自のストーリーラインの、重要なターニングポイントも候補に入るだろう。
(例えば「サンセット大通り」の執事の告白場面は、
メインプロットと関係するサブプロットの山場で、
重大なターニングポイントだ。これはイコンになり、
4コマ漫画の候補になるだろう)


さて、なんとなく、4コマに入る場面には共通点がある。

起:きっかけ、渇き、第一ターニングポイント
承:第一ターニングポイント、中盤のターニングポイント、第二ターニングポイント
転:クライマックス、どんでん返し、第二ターニングポイント
結:ラストシーン、クライマックス

が確率が高い。

起承転結理論と三幕構成理論は、
似ているようで違うということが分かるだろう。
違うようでも似ていることも、分かるだろう。


さて、あなたの物語である。
4コマで描いてみよう。
ちゃんと絵になってるかい?
優秀な映画はサイレントで流しても大体内容が分かる、という。
それは、イコンが絵になっていて、
しかも物語を絵で示しているからだ。



ちなみに小説「てんぐ探偵」は、毎回、
この4つの場面構成を結構意識していたりする。
1心の闇に取り憑かれる場面
2シンイチが工夫する場面
3心の闇が外れる場面
4ラストシーン
だ。小説なので毎回イコンにしているわけではないが、
映像にしたときに工夫しやすいようにしてはいるつもりだ。
posted by おおおかとしひこ at 10:49| Comment(0) | TrackBack(0) | 脚本論 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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