2014年11月11日

てんぐ探偵の第一ターニングポイント

第一ターニングポイントのおさらいを、
「てんぐ探偵」を例に解説してみよう。

第三集15話が、第一ターニングポイントである。
(ややネタバレにつき、楽しみにしてる方は本編を読んでからどうぞ)



第一ターニングポイントとは、
世界設定、問題設定が終わり、
主人公が本格的に冒険世界に繰り出す決意を固めるところだ。

これより以前を第一幕(設定部)、これより以後が第二幕(展開部)である。
(言い出しっぺになる、とも書いた。
つまり責任を持って以後行動するということだ)


てんぐ探偵第15話「サッカーのにいちゃん」は、
全シリーズ(50話目標)の第一ターニングポイントとなる位置づけの、
重要なエピソードだ。

この話を経て、シンイチは、
「冒険世界に繰り出す、本格的な決意」を固めたからだ。

これまでは妖怪退治とサッカー選手の間で揺れ動いていたことが、
ラストシーンのシンイチの告白で明らかになる。
(開始早々は、「才能」への迷いを大天狗と話す問答だ。その帰結部でもある。
つまりこの第15話は、深町の心を救うだけでなく、
シンイチ自身の心を救う話でもある)

にいちゃんの「安易な」アドバイスで、
そこで迷うことはない、と、一本の道が示されたのだ。
(「人生はなんでもありだ」という深町の言葉が、
同時に彼自身の人生を変えることになる、という二重の仕掛け)

これでシンイチは、後ろ向きに迷うことはない。
今後どんな心の闇が来たとしても、断固たる決意を持って闘えるはずだ。

小さな変化であるが、シンイチの心境の中では大きな変化だ。
彼にとっての、第一幕の「序盤の闘い」編が終わり、
第二幕の「激闘」編の幕が上がったのである。


このエピソードは全体の流れの中で、
第一ターニングポイントという役割を果たすことがわかるだろう。



第一ターニングポイントのコツは、
事件の大きな流れだけでなく、
必ず主人公の個人的事情や内面に立ち入ることだ。

今までどこか他人事だった目の前の事件が、
本格的に、彼自身の物語として内面化されるのだ。

実際、シンイチは自分の夢(サッカー選手)と、
自分の才能について悩み、それを統合することで方向性を得た。


(ちなみに風魔の第一ターニングポイントは難しい。
戦況の第一ターニングポイントは風魔兄弟集結の二話ラストだが、
小次郎の個人的心境の第一ターニングポイントは、
5話のラスト「本当に人が死んで行くんだ」だ。
ここまで全体、といいたいところだが)



さてここからどんな二幕があがるか、お楽しみである。

第二幕前半(ミッドポイントまで)とは何だった?
「作品のコンセプト」を示す、お楽しみポイントであった。
つまりこれから、「色んな心の闇とその退治」が本格的にはじまるのである。

現代批評だとも思っている、
この作品の心臓部「心の闇退治」、おたのしみに。
posted by おおおかとしひこ at 22:26| Comment(0) | TrackBack(0) | 脚本論 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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