第一ターニングポイントのおさらいを、
「てんぐ探偵」を例に解説してみよう。
第三集15話が、第一ターニングポイントである。
(ややネタバレにつき、楽しみにしてる方は本編を読んでからどうぞ)
第一ターニングポイントとは、
世界設定、問題設定が終わり、
主人公が本格的に冒険世界に繰り出す決意を固めるところだ。
これより以前を第一幕(設定部)、これより以後が第二幕(展開部)である。
(言い出しっぺになる、とも書いた。
つまり責任を持って以後行動するということだ)
てんぐ探偵第15話「サッカーのにいちゃん」は、
全シリーズ(50話目標)の第一ターニングポイントとなる位置づけの、
重要なエピソードだ。
この話を経て、シンイチは、
「冒険世界に繰り出す、本格的な決意」を固めたからだ。
これまでは妖怪退治とサッカー選手の間で揺れ動いていたことが、
ラストシーンのシンイチの告白で明らかになる。
(開始早々は、「才能」への迷いを大天狗と話す問答だ。その帰結部でもある。
つまりこの第15話は、深町の心を救うだけでなく、
シンイチ自身の心を救う話でもある)
にいちゃんの「安易な」アドバイスで、
そこで迷うことはない、と、一本の道が示されたのだ。
(「人生はなんでもありだ」という深町の言葉が、
同時に彼自身の人生を変えることになる、という二重の仕掛け)
これでシンイチは、後ろ向きに迷うことはない。
今後どんな心の闇が来たとしても、断固たる決意を持って闘えるはずだ。
小さな変化であるが、シンイチの心境の中では大きな変化だ。
彼にとっての、第一幕の「序盤の闘い」編が終わり、
第二幕の「激闘」編の幕が上がったのである。
このエピソードは全体の流れの中で、
第一ターニングポイントという役割を果たすことがわかるだろう。
第一ターニングポイントのコツは、
事件の大きな流れだけでなく、
必ず主人公の個人的事情や内面に立ち入ることだ。
今までどこか他人事だった目の前の事件が、
本格的に、彼自身の物語として内面化されるのだ。
実際、シンイチは自分の夢(サッカー選手)と、
自分の才能について悩み、それを統合することで方向性を得た。
(ちなみに風魔の第一ターニングポイントは難しい。
戦況の第一ターニングポイントは風魔兄弟集結の二話ラストだが、
小次郎の個人的心境の第一ターニングポイントは、
5話のラスト「本当に人が死んで行くんだ」だ。
ここまで全体、といいたいところだが)
さてここからどんな二幕があがるか、お楽しみである。
第二幕前半(ミッドポイントまで)とは何だった?
「作品のコンセプト」を示す、お楽しみポイントであった。
つまりこれから、「色んな心の闇とその退治」が本格的にはじまるのである。
現代批評だとも思っている、
この作品の心臓部「心の闇退治」、おたのしみに。
2014年11月11日
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