特に予算の少ない映画(日本映画はトップクラス以外は全て低予算)
を見るときは、頭にとめておこう。
カット割は、最も低予算で撮れるようにすることの方が、
現実には多いこと。
カット数は少ないほど予算はかからない。
カットを変えるたびに、
照明をセッティングしなければならない。
早撮りの菊地さん(風魔のカメラマン)でも1カット10分が限界、
と漏らしていた。
CMの現場では1カット撮影するのにかけるのは1時間ぐらいだ。
つまり、カットは少ないほど手間がかからない。
つまり、全体を早く撮り終えられる。
日数がかからないということは、拘束する人件費が少なくてすむ。
風魔では、1日台本8ページ(つまり8分)撮っていた。
1日8時間働くとして、1ページ(1分ぶん)を1時間で撮らなければならない。
早撮りの菊地さんですら、6カットが限界だ。
つまり、1カット10秒平均だ。
日本映画がカット数が少ないのは、
このような予算的な理由による。
また、切り返しがないと予算的に楽だ。
セットを半分(反対側)つくらなくていいからだ。
同方向しか撮らないのは、照明も切り返さなくていいから安くすむ。
つまり、
予算がない映画は、
長回しが多く、切り返しがない。
全てのシーンが監督の思い通りに撮れてると思うのは素人だ。
殆どの監督の殆どのシーンは、
全く思い通りではなく、苦渋の選択の末の工夫だ。
どうやったらぎりぎりまでカット数を減らしてストーリーを分からせ、
どうやったらぎりぎりまで切り返しを減らして会話を成立させるか、
というパズルの解を競っているのだ。
お話を豊かなカット割りで十二分にうっとりさせる、
なんてことは日本映画の予算では不可能だ。
ハリウッドのB級以上の予算
(それでも日本のトップクラスより桁が違う高い予算)
で、ようやく監督のイメージ通りのカット割が可能になるぐらい、
と思っておくと間違いない。
アマチュアは、なんとか思い通りのカット割りを考えようとする。
それは、そもそもカット割りの技術が未熟で、
お話に没頭させるベストのカット割りに、
一瞬でたどり着けないからだ。
プロは、それがわかった上で更に削る。
たぶん理想の1/5や1/10に。
「いけちゃんとぼく」でのカット割りは、
かなりの妥協の産物だ。
CMの連中からはカット割りが少ないと文句を言われ、
映画のスタッフからはカット割りが多すぎると文句を言われた。
どっちつかずになるぐらいなら、
もっと思い通りにするべきだったかも知れないと思うが。
カット割りの為に、脚本を変更することすら、
日本映画の現場ではあることだ。
カット割りは必ずしもベストではない。
ベストなのはA級のハリウッド映画だけだ。
とは言え、話のために、どこか、魂のカット割りを、
低予算映画でもするものである。
(「いけちゃん」で言えば、第三幕はほぼ理想だった。
逆にそこしか思い通りのカット割りではない)
カット割りの勉強をするときは、
そのような現場の事情も考慮に入れるべきだ。
2014年11月19日
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