以前にも書いたような気がするが、
登場人物の男女を逆転してみる方法。
これで炙り出されるのは、自分の欠点だ。
例えば、男の作者は、
女を理想的な人形のように描く。
いつもニコニコして、
主人公を全面的に認めてくれて、
不満ひとつ言わなくて、
何故だか惚れてくれる、
都合のいい女であるように。
男女を逆転すれば分かる。
我々男は、
何故だかその不細工で不器用な女に、
いつもニコニコして、全面的に認めてあげて、
不満も批判も忠告もせず、
惚れ、
都合のいい男であるだろうか。
あるいは、女の作者なら、
男を理想的に描きがちだ。
たとえばキメの場面では必ず甘い言葉を言うように。
男女を逆転すれば分かる。
どんな事態でも動じず、キメの場面で男に甘い言葉を言えるだろうか。
主人公とヒロインの関係だけでなく、
これはあらゆる人間関係でチェック出来ることだ。
男女を入れ換えるだけで、
自然だったものが不自然になるのなら、
そもそもそこは歪みのあるポイントだったりするものだ。
女の嫌らしい部分を描くとか、
男の情けない部分を描くとか、
性別特有のトピックスでない限り、
すべては男女を入れ換えても成立しなくてはならない。
しかもだ。
性別特有のトピックスですら、
男女を入れ換えても成立するものが理想だ。
生理のイライラを例えば風邪の頭痛のように入れ換えて、
男のイライラとしても理解できるのなら、
それは、「女にしか理解できない話」ではなく、
「女にも男にも理解できる話」だからだ。
女同士が喋っているとき、
誰かが席をたった瞬間その人の悪口を言う現象は、
男では理解できないことのほうが多い。
しかし、普段からその人のことをあまり好きではなく、
表面上仲のいい振りをしてるだけで、
そもそもそのお喋りに参加しなければいいのだが、
参加しないといけない状態であるのなら、
その気持ちは分かる。
そのように描けばよいだけだ。
つまり、前提さえ上手く描ければ、女特有の現象も、
男にも分かるようになる。
男女逆転のエクササイズが我々に教えてくれることは、
何かを無前提で語ることで、
その狭い領域のことを知っている人にしか分からないことを、
つい書いてしまっている、
ことの自己発見である。
自分がいかに矮小な男女観しか持っていないことの自己確認だ。
あるいは、関西人と関東人を逆転させるエクササイズは、
関西人にとっては有効かも知れない。
何を無前提にしてしまっているか、
何を当然と思い込んでいるかに気づくだろう。
人生経験を積めば積むほど、この想像力は発達する。
しかし、何も想像せず生きていた大人は、
何も気づいていないだろう。
意図的に長年考えて観察した者だけがたどり着けることかも知れない。
男女逆転のエクササイズは、
異性を書くときにも同性を書くときにも使える。
例えば実写「風魔の小次郎」の絵里奈だ。
原作版の単なるお人形さんから、
僕は大胆に改変した。
(この改変については、意外とみんなあまり触れない。
まさかあの子役がそういう台詞を自分で言ってるとでも思っているのだろうか。
俺が言わせているのだが)
その際に、女の子というキャラにせずに、
男の子だとしても面白いキャラにしようとした。
女の子を意識すればするほど、
お人形遊びが好きとか、寂しいの、という女の子女の子になってしまい、
彼女のパーソナリティーが見えなくなってくるからだ。
(余談だが、市野さんパートでの絵里奈は、残念ながらこちらの女の子女の子の側である。
原作同様の、武蔵の悲劇のための道具に成り下がっている。
唯一心に来る台詞「十年という時間」は、僕が11話に対して、
伏線として出してほしいと要求した唯一の台詞だ)
哲学者であるようなあのキャラクターは、
ずっと孤独で考え続けるしか暇のなかった、
彼女の境遇を想像してこしらえた。
ベッドに寝たまま、大人たちの会話をずっと観察するしかなかった人の人生は、
何を考えるのだろうと想像してこしらえた。
勿論、小次郎との対比なども計算に入れてある。
ヒーローと守られるべき少女のよくある組み合わせではなく、
陽気なアホと小さな哲学者の組み合わせのほうが、
動的になり面白いと思ったからだ。
これだけの生きたキャラクター、女の子に頼らないものがあったからこそ、
13話の死ぬときの「一緒にお茶をしたかった」という、
普通の女の子の願望が胸に刺さるのだ。
これは偶然ではない。全て脚本家すなわち僕の計算である。
女の子だからといって、
人間でない訳ではない。
女の子である前に、人間である筈だ。
そんな簡単なことを、人は簡単に忘れてしまうものだ。
何故なら、無意識に楽をしたいからだ。
ご都合主義は楽だからだ。
そしてその楽したことは、必ずばれる。
不自然、という違和感によって。
どこかで見たことある詰まらないもの、という感覚によって。
男女逆転のエクササイズは、そのようなことをチェックするのに最適だ。
時々試してみるとよい。
2014年11月26日
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