予測の必ず逆をいくようにすること。
予想通りに進むのは、面白い話ではない。
予想外に進むから、ドラマチックなのだ。
しかし滅茶苦茶に話が進むのは、パラノイアだ。
たんなる精神分裂であり、きちがい話につきあっても面白くない。
「予想通り」を「覆す」のが面白い話だ。
予想外に進む面白い話は、
次々に話の流れが変わる。
話の流れ、すなわち焦点をそれぞれ、ABCとすると、
A→ターニングポイント→B→ターニングポイント→C
という構造になっている筈だ。
しっかりとターニングポイントが面白ければ、
これはまあまあ面白い話だ。
しかしターニングポイントが不自然で、
ただのバラバラな展開になってしまうことはよくある。
ここで、伏線とどんでん返しを使うのである。
面白い話は、予想通りを覆すことだ。
つまりは、予想させておいてから、
その逆のことを起こすのだ。
予想させることを、一般にミスリードという。
意外な大どんでん返しだけでなく、
小さい予想や前ふりも、ミスリードといってもよい。
「大事な話があるんだけど」という前置きを、
恋人がレストランで言えば、
誰だってプロポーズか別れ話のどちらかを予想する。
そのあとでポケットに手を入れ、指輪を出すのかと思いきや、
「さっきバナナの皮を拾ったんだ」と続けるのが、
ミスリードと、それを覆すことだ。
バナナの皮が面白いのではなく、予想させて覆すことが面白いのだ。
バナナの皮がいいのか、うんこがいいのか、はたまた何がいいかを考えることは、
ガワの面白さを考えることに過ぎない。
このように、定型の前ふりを使うのは、
ミスリードのひとつのパターンだ。
そうでなくても、話には流れというものがある。
流れとは、このまま順調にいけば、こうなるだろうという予想だ。
あまりにも予想通りに進むものは、人は退屈する。
退屈は2秒でやってくることもあるし、
15分ぐらいは耐えることもある。
それは、「予想通り」という、観客の頭のなかにある出来事だ。
平均的な観客の予想、突飛な観客の予想、
先読みの出来る人の予想、馬鹿な人の予想、
それらを全て把握したうえで、
あなたは話を語らなければならない。
それには、あなたがベテランの聴衆でなければならない。
もちろん覆しまくることも予想されるから、
そのときは覆さないタイムをつくることもある。
さて、ミスリードと覆しをするならば、
焦点Aと次の焦点Bは、真逆が一番よい。
強い逆転劇はたいていこうなっている。
有罪だと思っていたのが無罪だった、とか、
試合が敗けから大逆転、とか、
絶体絶命のピンチから、新たな思いつきが、とか、
振られたと思っていたら実は、とかだ。
逆転に逆転を重ねるとシーソーゲームになる。
(シーソーゲームのコツは、
もとに戻ったと思わせずに進行していると思わせることだ)
しかし、ABCと進む話の進行が、
まったく別の焦点になりすぎると、
混乱が起きてしまう。
予想外に振り回され過ぎるからだ。
ジェットコースタームービーは、
このへんの塩加減が上手である。
予想させ、少し予想を外し、次々に予想を修正させ、
落ち着いて考える暇を与えず、
細かく予想→予想を外すことのコースをつくってゆく。
全く関係ないABCのほうが話は面白い筈なのに、
関係無さすぎると面白くなくなる欠点がある。
対比や繰り返しを使うのもひとつの方法だ。
ACが対比的だったり、
ABCが違うのに同じ、みたいなことにしてもよい。
より物語的に関係させる方法が、伏線である。
例えば、Aの話にすでにCの伏線を張っておくのである。
Aの話をしながら、あるいはAの本題に入る前に、
Cの話を前ふりしておく。
Aが佳境に入り、ターニングポイントがあり、
(全く別の)話題Bへ話がうつる。
それが佳境に入り、ターニングポイントがあり、
(全く別の)Cに話題がうつる。
さっき伏線が張られていたため、ああっ、と思い、
AでもBでもない、新しい話題Cに夢中になっていくのだ。
伏線の上手な使い方は、
Bという間を挟むことだ。
どれぐらいで一端観客の頭の中がBで埋まり、
Cを忘れるか、
そしてCになったとき、ああっ、と思うかは、
さじ加減次第である。
あなたの感覚でやるしかない。
上手な人は上手いタイミングや、上手い伏線をすぐに考えつくし、
下手な人は勘が悪くていつまでたってもぎこちないだろう。
伏線とその解消は、
空間的意味的にだけでなく、
時間軸で関連のないものを結びつける方法である。
中盤の厚みを増やすために、活用できるテクニックだ。
勿論、それ以外にも使える。
2014年12月05日
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