前の前の記事からの続き。
ABCと話題や流れ(焦点)を変えることが、
話を厚くしていく。
しかしただ変えていくだけでは、ただのパラノイア。
AにCの伏線を仕込んでおき、
全然違うBの話をして揺さぶり、
突然Cに転換して、あ、と思わせる。
このシステムは、序盤にも使える。
登場したとき、Cを既に仕込みながらAを始めるやり方だ。
このため、「バックストーリーを仕込め」などと、
脚本の教科書ではよく言われる。
ある登場人物(主役、他の人物すべて)が登場したとき、
「ただそこにいる」人は一人もいない。
例えば電車からはじまるとしよう。
乗客100人いるとしたら、
100人全員とも、何かの用事でどこかへ行く途中だ、
ということを分かっているだろうか。
(どこかへ行くのではなく、帰る途中かも知れないが)
つまり、全員に動機(目的地)がある。
最初にベクトルを持っていることで、
ただそこにいるだけでない、
動く人物をつくりやすくなる。
ただそこにいるだけでは、その人は何もしない。
全員が何かをしてる途中で、物語ははじまるのだ。
その何かをCに関連することにしておくのだ。
何かをしてる途中、Aに話が進む。
次に一端Bに話がツイストする。
更にツイストするとき、さっきのCが関係してくる。
こうしてバックストーリーが生かされながら、
伏線が生き、話は生き生きと始まっていくのである。
逆に、バックストーリーとは、
Cに生きるためのものをつくっておくのだ。
何となくバックストーリーを作るのではない。
その人が最初の場所にいる理由が不自然でなければ、
何をやっている途中でもよいのだ。
その中で、最も面白いCに関連しておくことを、
決めておくのだ。
僕はことあるごとに、このように逆算して仕込む話をしている。
電車からはじまるとして、
会社へ行く途中であるとか、デートへ向かうとか、
トイレを我慢して急行に乗っているかとかは、
実は何でもいいはずだ。
それなのに、バックストーリーを書けと言われたら、
電車の前のストーリーをただ書くだけに終わってしまう。
点ではじまるより線ではじまるから、
何もしないよりは勢いがつきやすいはじまり方にはなるだろうが、
それはすぐに勢いを失うだろう。
ABと上手く目先を変えられたとしても、
次のCで失速すると思う。
それは伏線を仕込んでいないからだと思う。
頭から脚本は書くものではない。
バックストーリーは、あなたが今後世界をよりリアルに構築するための、
ツールではない。
あなたがより世界を把握するための裏設定でもない。
Cに使うものの事前の仕込みの役割を持っているのだ。
頭から脚本を書くことを初心者に薦めないのは、
そうした理由がある。
まずプロットを組み立てろとか、
テーマを考えておけとか、
色々なことは、全て事前にこれだけ仕込んでおけ、
という話なのかも知れない。
それはつまり、頭から順番に書いていった場合、
99%以上の確率で挫折する(途中で書けなくなってしまう)のを経験する、
という、我々先人の経験則なのである。
山に手ぶらで登って降りてくる天才もいるだろう。
重装備過ぎて却って登れない人もいるだろう。
適切な山と装備量の関係は、経験して慣れていくしかない。
(日帰り登山の初心者向けの山は、何度も書いているが、
5分のシナリオだ)
的確に序盤をはじめるには、
このようなABC伏線方式が役に立つかも知れない。
(何となく無意識でやってることを自覚的に眺めてみた。
出来る人は出来るし、出来ない人は気づきもしないことを、
なんとか言葉で捉えようとしている)
2014年12月06日
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