2014年12月06日

ABC伏線方式は、序盤でも使える

前の前の記事からの続き。

ABCと話題や流れ(焦点)を変えることが、
話を厚くしていく。
しかしただ変えていくだけでは、ただのパラノイア。
AにCの伏線を仕込んでおき、
全然違うBの話をして揺さぶり、
突然Cに転換して、あ、と思わせる。


このシステムは、序盤にも使える。
登場したとき、Cを既に仕込みながらAを始めるやり方だ。

このため、「バックストーリーを仕込め」などと、
脚本の教科書ではよく言われる。

ある登場人物(主役、他の人物すべて)が登場したとき、
「ただそこにいる」人は一人もいない。

例えば電車からはじまるとしよう。
乗客100人いるとしたら、
100人全員とも、何かの用事でどこかへ行く途中だ、
ということを分かっているだろうか。
(どこかへ行くのではなく、帰る途中かも知れないが)
つまり、全員に動機(目的地)がある。

最初にベクトルを持っていることで、
ただそこにいるだけでない、
動く人物をつくりやすくなる。

ただそこにいるだけでは、その人は何もしない。
全員が何かをしてる途中で、物語ははじまるのだ。

その何かをCに関連することにしておくのだ。
何かをしてる途中、Aに話が進む。
次に一端Bに話がツイストする。
更にツイストするとき、さっきのCが関係してくる。

こうしてバックストーリーが生かされながら、
伏線が生き、話は生き生きと始まっていくのである。

逆に、バックストーリーとは、
Cに生きるためのものをつくっておくのだ。
何となくバックストーリーを作るのではない。
その人が最初の場所にいる理由が不自然でなければ、
何をやっている途中でもよいのだ。
その中で、最も面白いCに関連しておくことを、
決めておくのだ。


僕はことあるごとに、このように逆算して仕込む話をしている。

電車からはじまるとして、
会社へ行く途中であるとか、デートへ向かうとか、
トイレを我慢して急行に乗っているかとかは、
実は何でもいいはずだ。
それなのに、バックストーリーを書けと言われたら、
電車の前のストーリーをただ書くだけに終わってしまう。

点ではじまるより線ではじまるから、
何もしないよりは勢いがつきやすいはじまり方にはなるだろうが、
それはすぐに勢いを失うだろう。
ABと上手く目先を変えられたとしても、
次のCで失速すると思う。
それは伏線を仕込んでいないからだと思う。

頭から脚本は書くものではない。
バックストーリーは、あなたが今後世界をよりリアルに構築するための、
ツールではない。
あなたがより世界を把握するための裏設定でもない。
Cに使うものの事前の仕込みの役割を持っているのだ。

頭から脚本を書くことを初心者に薦めないのは、
そうした理由がある。

まずプロットを組み立てろとか、
テーマを考えておけとか、
色々なことは、全て事前にこれだけ仕込んでおけ、
という話なのかも知れない。

それはつまり、頭から順番に書いていった場合、
99%以上の確率で挫折する(途中で書けなくなってしまう)のを経験する、
という、我々先人の経験則なのである。

山に手ぶらで登って降りてくる天才もいるだろう。
重装備過ぎて却って登れない人もいるだろう。
適切な山と装備量の関係は、経験して慣れていくしかない。
(日帰り登山の初心者向けの山は、何度も書いているが、
5分のシナリオだ)


的確に序盤をはじめるには、
このようなABC伏線方式が役に立つかも知れない。
(何となく無意識でやってることを自覚的に眺めてみた。
出来る人は出来るし、出来ない人は気づきもしないことを、
なんとか言葉で捉えようとしている)
posted by おおおかとしひこ at 00:19| Comment(0) | TrackBack(0) | 脚本論 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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