2014年12月07日

登場人物を好きになるエピソードを考えよう

どんな些細なことでもいい。
主人公や主要人物を、ちょっといいなと思う瞬間を、
いくつもつくろう。


一人にひとつは最低欲しい。
それはキャラを立てる為だ。
プロットを表現するロボットではなく、
生きた人間だと感じさせる為だ。
プロットや行動や動機は理屈だが、
そこに感情が入ってくるようにするのだ。

凄い正義の味方だったり、
優等生でなくてもいい。
むしろ欠点があったり、失敗するところを、
人は好きになったりする。
憧れから入り、等身大の魅力を発見したり、
大したことないとなめてたら、
内に物凄いものを秘めてて見直すときもある。
いわゆるギャップだ。
人間の細やかな感情を観察する、作家的な目が必要だ。

特に重要な人物は、いくつそんなことがあっても構わない。
人の魅力はひとつだけでなく、
様々な角度があるものである。
ちょいちょいそれらを拾ってエピソード化してゆき、
その人の魅力を描いていく。
それらは創作でもいいし、
実体験でも取材でもいいし、
リアリティーのある妄想でも構わない。

この人がこんなシチュエーションにいたら、
と妄想することが、それらのエピソードの栄養である。

恋愛少女マンガはその宝庫だ。
何だかんだ言って、私この人好きー!
というエピソードが大半である。
むしろ少女マンガは、ストーリーよりも、
その好きー!のバリエーションを楽しむジャンルかも知れない。
特に女子は、それだけで一生発電出来る生き物かも知れない。
(男子はそこまで人とか、好きに興味がない)

女性作家のほうが、僕は人物描写が上手いと思う。
それは、やはりその人の好きな所を観察したり、
見つけたり、執着するのが上手いからだと思う。
少女マンガはそれを全面的にやるジャンルだ。
(似たジャンルにジャニーズヲタや、
キャラ萌えの二次創作があると思う。彼女たちの発電力たるや。
男作家はそこまで人を好きということに執着しない。
どちらかというと性欲の方が勝る)


人物を好きになるエピソードに、得意不得意はあるだろうが、
それが豊富であることに越したことはない。
人物が生き生きとし、感情移入しやすくなるからだ。
この人が好き、と観客に思わせたら、そんな幸せなことはない。
(下手なやり方は、そのキャラクターを好きになるべきなのに、
それを演じる役者を好きにならせてしまうことだ。
ジャニーズ映画はまさにそれで、役ではなく中の人を好きになってるだけだ)


注意すべきことは、
人物を好きになるエピソードが、単独で存在しないことだ。
映画はストーリーである。
ストーリーの進行が一大事であり、
その焦点こそが観客を椅子に縛り付ける力である。
それを止めてまでそんなエピソードを挿入してはいけない。
そして、そのエピソードは、
ストーリー進行に関わる形でのエピソードであることが重要だ。

つまり、ストーリー解決の一過程で、
その人物なりの進め方で、その人の魅力を出していくのが最適である。
魅力のエピソードはエピソード、ストーリー進行は進行、
ではなく、
同時に存在することが理想である。
(なかなか上手くいかないけどね)

ストーリー進行と関係ない、その人物の魅力を描くエピソードを
挿入できるチャンスが、一回だけある。
初登場時である。
初登場はインパクトを持っていることも重要だが、
そのインパクトでその人を好きになることができるかも重要だ。
(ブレイクシュナイダーのいう、save the catの法則。
ピンチの猫を救うような、と表現されている)
逆に初登場以外では、必ずストーリー進行と魅力は、同時に描くべきである。



ストーリー進行をしながらも、
隙あらばその人物の魅力を些細でも感じさせるエピソードに化けさせよう。
人は人を一発で0から100に好きにはならない。
(一目惚れ以外は)
少しずつ色々な角度や間で、好きになっていくものだ。

また、感情移入と好きは、別の感情であるが、
好きだと感情移入がとてもしやすいことは、忘れない方がいい。

また、悪役は逆に、隙あらば嫌いな面を見せていこう。
どんな瞬間にも嫌いになるようにしていこう。
ちょっとでも好かれる面を見せてはだめだ。
同情の余地のない人物像へ仕立てあげていくのが、いい悪役のコツだ。


もしいまいちな登場人物がいたら、
その人の魅力を描こう。
ないなら、発見できるまで、
その人の過去や現在に至るまでなどを創作したりしてみよう。
作者も好きじゃない人物を、皆も好きだと共有出来る訳がない。
posted by おおおかとしひこ at 23:19| Comment(0) | TrackBack(0) | 脚本論 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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