2014年12月13日

才能のない話の例

時々後輩に、おい面白い話をしろ、
と無茶ぶりをすることにしている。

そもそも持ちネタがない奴は詰まらない奴だし、
ちょいちょい面白いことに遭遇している魅力的な人間になるべきだし、
ちょっとしたことを膨らませて面白おかしく語る練習にもなるからだ。
面白いムービーをつくる仕事の人が、
何故面白い話が出来ないのか、俺にはさっぱり分からない。


今日、才能のない奴の話を聞いた。


「俺、外人の腹違いの弟がいるんですよ」
「で?」
「それだけです」

「俺、猫を17匹飼ってるんですよ」
「で?」
「それだけです」

それだけ?

いくらでも語れるだろう。そんな設定で。

そもそも親父が外人なのか、母親なのか、
いつ分かったのか、そのときどう思ったのか、
母親同士はどう喧嘩したのか、
その弟には会ったのか、お互いどう思ってるのか、
やっぱ似てるのか、似てないと思ったら似てたとこの話とか、
いくらでも語れるだろう。
なのにそれで終わりって。

そもそも最初から17匹を飼ったのか、
どうやって増えたのか、貰ったのか拾ったのか生まれたのか。
何故そこまで猫が好きなのか、
実は嫌いなのか、
人を呼んだらどうなったのか、
彼女はどう思ってるのか、
それを餌に女子を連れ込んでないのか、
いくらでも語れるだろう。
なのにそれで終わりって。

それらのディテールは、
聞かれなくても話せる筈だ。
聴き手の頭の中に、そのヘンテコな事情が組み上がるまで、
ディテールを埋めていける筈だ。
何故それが出来ないのか分からない。
才能としか言いようがない。

そこまでオイシイ設定があれば、
時に作り話も混ぜつつ、
30分は話せるだろう。
それが15秒でおしまい。
話の才能がない例である。


話の才能がない奴は、
基本設定を語って、
話し終えた気になっている。

話はそこからだ。
基本設定なんてただの第一幕で、
二幕からが話のはじまりだろう。


設定しか語れない奴は、
話というものが何だか分かってないか、
話の感性が著しく鈍いのだろう。
posted by おおおかとしひこ at 00:38| Comment(0) | TrackBack(0) | 脚本論 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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