2014年12月17日

shootは銃殺か、狙撃か

今日は撮影だったので、思ったこと。
「撮影する」を英語でshootという。
「撮影されたもの、単位」がshotだ。

撮影はよく狩りに例えられる。
狩猟民族的行為だ。
ヨーイスタートはshootingと指示を出したりするし、
(流石にfireとは言わないね)
撮影場所を探しにいくロケハンとは、
location huntingの略だ。

撮影は、狩りである。


カメラマンは、だから銃口を構える人だ。
捧げ筒、撃て、の代わりにヨーイスタートを言うのだ。

さて、この銃の撃ち方には、
大きく分けて二種類ある。

真正面からの銃殺刑と、
盗み撮りの狙撃だ。


正面から撮られ慣れているベテランや、
ニュースキャスターなどは、
真正面からの方がやりやすい。
逆に素人はカメラを構えたらカチコチになってしまい、
自然な反応が出来なくなる。

真正面からカメラを構えるのは銃殺刑だ。
並の神経なら耐えられないが、
プロなら真正面からの方がリアクションしやすい。

逆にプロとは、真正面からカメラを向けても自然に振る舞える人のこと。
よくドキュメントチックに自然な表情、とか言うけど、
ほんとのプロならすぐにそれは作れる。
作れないプロを盗み撮りするのである。


盗み撮りはその逆で、
狙撃のように、こちらは待つだけだ。
ずっと構えてオイシイものが出てくるまで待つ。
いいのが来たら撃つ。
(正確に言えば回しっぱなしにしておいて、
編集で切り出す)
真正面からの銃殺刑で自然な表情を作れない人は、
大抵こちらである。


さて、どうも僕の演出法は、
銃殺刑寄りの、ちょいちょい狙撃型なのだなと思った。
盗み撮りは、ほんとにはずっと待つのかも知れないが、
僕は自然な表情を出させるようなトークが上手いっぽい。
自然な表情が無意識に出るようなシチュエーション作りをするのが仕事、
みたいな。
本人は無意識の表情だったのだろうが、
そうなるように僕が誘導するかのような。
狙撃型の中でも、罠をかけて狙撃するタイプだと思う。
(行定勲や是枝良和は、ワンシーンで一時間回しっぱなしにすると聞く。
それは待ちすぎだろうと、
誘導するタイプの僕はいつも思う)


だから僕の役者との接し方は、
その役者が正面から行った方が光るのか、
狙撃したほうがよいタイプかをまず見る。
後者ならなるべく自然にそこに無意識に誘導されるような、
シチュエーションづくりからやる。
(無名の役者をまともなドラマに仕上げて行く、
例えば風魔の小次郎がうまく行ったのも、
この采配が尽力していると思ってるが、
俺しか分からないことかも知れない。
ただ、僕の演出法は、大抵役者に評判はいいみたいだ)


現場がこうなのだから、
脚本に書かれるべきお芝居も、
大きく二通りあるのだ。

真正面から真っ向勝負している芝居か、
誘導されるようにポロリと自然が漏れる芝居かだ。


真正面からガチガチに緊張するような台詞を書いてやしないか。
決めてほしい時にヤワヤワのふわっとした台詞を書いてやしないか。
全ては文脈と役者に依存する。
引いてはそれがリアリティーになるものだ。
posted by おおおかとしひこ at 00:38| Comment(0) | TrackBack(0) | 脚本論 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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