2014年12月19日

絵で説明すること

基本中の基本。

第一に、全体のヒキを押さえること。

これがないと、今自分がどこにいるか分らなくなる為、
凄く不安になる。
ニュース映像のトップカットを見ると、たいていどこで行われたことか、
というヒキからはじまっている。
(逆に、どこにいるか不安にさせるには、決してヒキを撮らず、
全部を見せないことだ。ゴジラはそうやってなかなか全体を見せない)

ニュース映像ではよくやるが、「警視庁」の看板からズームアウトして警視庁のビル、
などのような小手先のテクニックも沢山ある。

このヒキは、「今からやること全体」が一番よく分るように撮る。
色々な例で、どこから全体を撮れば「ここ」がよくわかるか考えよう。
・学校
・部屋
・回転ベッドと鏡があるラブホテル
・ショッピングモールの中庭
・体育館の天井のバレーボールを、鉄骨沿いに取りにいくとき
・逆さまに沈没した船のシャフト(ポセイドンアドベンチャーのクライマックス)


第二に、パーツのヨリを撮ること。
ヒキで場所が分かったとしても、その中の何が重要か分らないものだ。
分るもの以外の、重要な部分に寄っておく。
上の例のみっつめ以降では、
・枕元のコンドームやティッシュ、鏡にうつった自分たち、天井の鏡
・回転ドア、店のセールのPOPやのぼり、平和に中庭で休む人々
・下を見下ろしたところ、天井に挟まったバレーボール、鉄骨と鉄骨の継ぎ目
・太いシャフト、頑張れば飛び移れそうな足場、迫る炎

などが、これから起こることへの理解の手助けをするだろう。

重要なことは、これから使うものと、
使わないけど場所の理解に必要なもののふたつがあること。

ラブホテル内のティッシュやコンドーム
(実際に使う絵を撮るとは思えない)は後者、
鏡(今後プレイ中に自分たちを見る演出があるだろう)は前者だ。
前者は最も簡単な伏線(あとで使うものを前にふっておく)とも言える。



たとえば、サーカスがどういう仕組みかを分るには、
どう撮ればよいだろう。
客席とステージが全部分るヒキ、
ステージのピエロ、観客席のそれぞれのヨリ、
空中ブランコなど空中の足場やブランコのヨリ、高い足場から見た地面、
火の輪くぐりなら火の輪や檻の中のライオンのヨリ、
バックステージで忙しく次の準備をする人々、
などだろう。
バックステージはサーカス側の話なら重要だし、
観客側の話なら不要だろう。
結局は文脈が決める。

はじめてサーカスを体験するのなら、
空き地に看板が立つ所からはじまり、
ピエロたちが街を練り歩いて宣伝し、
テントが立ったヒキや、
本日7時みたいな看板やチラシのヨリや、
入場ゲートで続々その中に入って行く人々やもぎりのヨリや、
暗いテントに足を踏み入れたらそこにワンダーランドが広がっている、
などの絵が必要だろう。


つまり、ヒキとヨリのモンタージュは、
何を説明したいかによって組み合わせが決まる。
それは、どういう絵を組み合わせれば、どういう意味になるかという、
映像センスが重要なのだ。

脚本家のあなたは、そこまでカット割をする必要はないが、
映画がどのようにヨリヒキを使って絵で説明しているかを、
研究したり勉強したりすることはたいへんよいことだ。
普通こういうカット割をするよね、を出来ることはとても重要だ。

そしてあなたは、カット割で表現出来るような、文脈を提供しなければならない。
つまりこの場面は「何狙いか」をである。
posted by おおおかとしひこ at 14:23| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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