2014年12月26日

5分シナリオの研究6: 変化

変化について。


人は5分で変化するだろうか。
しないと考えるのは人生について詳しくなさすぎだ。

人生を変える試合などは、5分だったりするし、
告白の成功(失敗)は一言で決まる。
それで人生が一変し、アドレナリンが出て、
成功体験になり(またはトラウマになり)、
一生影響を及ぼす、不可逆な変化になることはある。

変化と言うと、成長を描かなくてはならない訳ではない。
何かしらの変化を描くだけでよい。
それがよい方向へ変化すれば成長といい、
出来ればそんなものを見たいだけの話だ。

何故変化するかと言えば、
なにかすごい経験をするからだ。
それが凄ければ凄いほど、影響を受けるのである。
映画は大抵危険への挑戦や問題の解決を描くので、
そこから得た経験が、
自分を変えてしまったことを描く。
むしろ、凄い経験をしたので、
自然と(よい方向へ)変わったことを描く。

長編では長編なりの人生の変化を描き、
短編では短編なりの人生の変化を描く。
たった一晩のことを描くでも、
2時間あれば劇的変化を描けるが、
5分では少しの変化だろう。
5分作品で劇的変化は嘘臭い。
つまり、作品の尺は、変化の大きさに比例する。
変化の説得力であるとも言える。


「深夜のチェイス」では、
わずかな変化だろう。
個別に見れば、タクシーの運転手にも警官にも変化はないように見える。
しかしラストにおいて、
運転手と警官には一種の友情が芽生えた筈だ。
ここが変化である。
今後二人は東京という広い都会で二度と会うことはないだろうが、
それでも再会すれば会釈ぐらいするだろうし、
運転手はまたルールを破って人を助けるだろうし、
警官はまた見逃すかも知れない。
それは、同僚の誰かに影響を与えるかも知れない。
その少しの世界の変化が、5分で描かれたのだ。
妊婦はラストは描かれないが、
名も名乗らぬ親切な男に、あとあと感謝するだろう。
見返りを求めない目的で、誰かに親切にすることがあるかもしれない。
人は、そういった親切があると分かると、
誰かにしたくなるものだ。
そうやって世の中に親切が増えていくといい。
そこまで5分で語れている訳ではないが、
一応そのような変化を描いている。

変化とは、あることを知ることでももたらされる。
知るだけではなく、体験して本当にそうだと分かることだ。
この場合、世の中に無私の親切があること、である。



理想は、三幕の逆を一幕で描くことだ。

変化を描くなら、変化前は逆であるといい。
つまり、世の中はギスギスしていて、
ルールでガチガチであり、
無私の親切がない様子をだ。

タクシーの運転手は客や上の融通のきかなさに憤慨していたり、
警官はルールを厳密に適用する四角四面の男かも知れない。
わざわざそれを描く手もあったけど、
それは無前提に現代のことだ、
というのは誰もが分かるだろう、と省略した。

しかし、書いても良かったかも知れない。
タクシーは「そこで止めて」と言われた直後に料金が上がり、
厳密にお金を払ってくださいという男だったり、
警官は上司に書類をきっちり書いてないことで怒られていてもいい。

5分尺に、まだ少し残っているから、
チェイスをひとつ削って、
2シーン足すのも悪くないと思う。



このように、変化すらも逆算でつくってゆく。
大体のストーリーが出来たら、
何度も何度も重ね塗りをするように、
ストーリーを上書きして、どんどん良くしてゆくのである。
文字うちも手書きもいらない。
頭の中で色々やるといい。
頭の中が最も可塑性のある場所だ。

こういう風にしたら面白くなるだろうか、
というアイデアは、頭の中で最初から上映してみるとよい。
前のよりよくなったら、採用。
時々前のバージョンのほうが良かった、
と元に戻すこともあるが、
そのような可塑性は、文字による原稿では無理で、
頭の中で組み換えるのがよい。
あくまで紙のものはメモに過ぎない。
ホワイトボードやA4ペラで全体のおおまかなストーリーを見るのは、
これをやるためだ。

何度も何度も頭の中で練り込むことが、
良いストーリーをつくるコツだ。
まだプロットですらないこの段階で、
どれだけ練り込めたかが、ストーリーの出来を決める。
多分ペテランほどここに時間をかける。
料理人が、実際の調理より材料の仕入れや仕込みに時間をかけるように。



次回は、テーマ、モチーフ、コンセプトについて、
更に詳しく見ていこう。
posted by おおおかとしひこ at 13:17| Comment(0) | TrackBack(0) | 脚本論 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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