2014年12月31日

5次元のご都合主義

「インターステラー」ようやく見てきたので。
映像と音楽と芝居は素晴らしい。
ゼログラビティ体験をした我々を、
更に唸らせる宇宙描写の数々。

しかし、脚本の不出来によって、
僕は6点止まりの評価しかしないと思う。

最大の問題は、この映画のテーマは何か?
が曖昧なことに尽きる。
(以下ネタバレ。なお、アニメ「四畳半神話大系」のネタバレもあり)



この映画のテーマは何だろう。
「親子の愛」ではない。
テーマは体現止めにしてはならない。
親子の愛は描かれたモチーフであり、
それを使って何を現したかがテーマだ。

主人公の最初の境遇を見よう。
冒険者であることを否定されている。
アポロは捏造だったと言われ、
科学的探求心や人類の進歩への寄与こそが、
彼のなし得たいことであるように描かれている。
逆境は明快で、冒険より農業だろ、という圧力だ。

これをひっくり返して何をなすか、
がテーマである。

僕は、主人公の最後の選択や行動がテーマを示す、
とよく言う。

何をしたか。
娘に五次元世界から信号を送り、
偶然ご都合主義で助かり、
アンハサウェイ救出に向かった。

ラストで一瞬僕は疑問に思った。
何故主人公以外の者が彼女を救出に向かわないのか。

彼の帰還するまでの何十年間、
ワームホールが安定していたとすると、
(そうでなければ説明なしに彼は旅立てないだろう)
人類は手をこまねいていたのだろうか。
NASAの人達は、12人の冒険者のあとに、続かなかったのだろうか。
プランAが無理だと分かったとしても、
人道的救助任務はあるだろうし、
第一他の可能性の探索もするだろう。
博士の死によって、移住計画(地球脱出計画)が全て停止する道理はない。

彼女は孤独で待っているだろうが、
そもそも主人公が目覚めた時点で、
次の探検隊がたどり着くほうが早いのではないか。

一見新世界のアダムとイブを暗示しておきながら、
何だか穴だらけだ。
(まさか、これも「愛」のテーマの一部と言うつもり?)

さて、とするならば、
娘に信号を送ったところが、
一番彼のテーマなのだろうか。
最初からの伏線の解消のどんでんや、あの空間を見て、
「四畳半神話大系」を思い出したのは僕だけではあるまい。
(主人公の住む四畳半が、CUBEのように、
ちょっとずつ違う四畳半が無限に並ぶのだ。
しかもそれは主人公があり得た可能性すべてなのだ。
この映画は多世界解釈ではないが、四畳半の場合、
どれを選んでも俺の人生は最高だった、と青春の迷いからの脱却をテーマにしているぶん、
ビジュアルとテーマが連動しているのである)

肝心のそこが、とても既視感のあるものだったため、
僕はついでに「アザース」も思い出していた。

あれ?じゃこの映画のテーマって何?
親子の絆は強い?
帰るって約束したらそれは叶うってこと?

SFアドベンチャーのモチーフで、
親子の情愛を描いたの?
親子の情愛を描くような第一幕ではなかったよ?
一幕は、科学的冒険心こそが大事である、
というテーマに落とそうとしてて、
親子の情愛の否定的状況はなかったよ?
テーマが親子の情愛だとしたら、
それに直接対応するのは、理不尽な別れのシーンである。

「理不尽な親子の別れを、取り戻す話」と、
ログラインが書けることになってしまう。
なんか小さい話じゃね?

そのへんがフワッとしてるのが、
この脚本の一番駄目な所だと思う。


ノーランは僕はずっと嫌いだ。
何だか面白げなシチュエーションを描くのは天才的だが、
落ちからテーマの部分が、いつもぬるいのだ。
メメントのテーマは?
インソムニアのテーマは?
プレステージのテーマは?
インセプションのテーマは?
何か一行書いてみると、
そのテーマに帰着するには無駄ばかり、
という話を延々作っている。



さて、ご都合主義が沢山あった。
ワームホールは誰が何のために?五次元の住人は何のために?
(まさかコスモクリーナー上げますよ、な、親切?
それとも未来人?となると、タイムパラドックスが生まれるが?)
何故主人公は事象の地平面で助かるのか?
何故主人公は偶然土星付近で拾われるのか?

ノーラン演出は、複数の場所で同時進行する危機をカットバックする、
ものがとても多い。
今回もそれに漏れずそんなオンパレードだった。
カットバックするのは、一個だけだと弱いからである。
その強い一個を作るのが下手なのである。

2001年宇宙の旅を越えたって?
寝ぼけてんじゃないよ。
posted by おおおかとしひこ at 01:15| Comment(0) | TrackBack(0) | 脚本論 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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