前項で、カットバック技法の強力さを示した。
なんてことのない二つのストーリーライン
(ストーリーですらないが)は、
カットバックすることで、
意味ありげに、劇的に表現することができる。
これは、予告編詐欺でも使えるテクニックである。
予告で凄く面白そうだったのに、
本編でガッカリした記憶はあるだろう。
それらを検討調査はしていないが、
予告編のマジックのひとつに、
カットバックの寄与は大きいのではないか。
前記事の、俺のうんこと彼女の出社を、
単独ではなくカットバックで見せるだけで、
何が生まれただろう。
緊迫感、進行感、何やら凄いことが起こってそう感、
何か凄い謎が秘められている感、
この先に何があるのかという期待感、
一種のカタルシス、
などであった。
これは、殆ど予告編でやるべきことであることに注目されたい。
予告編では、二つのストーリーラインだけでなく、
いくつものストーリーラインをカットバックする。
例えば、
俺のうんこ、彼女の出社、バーで飲む、満員電車、 タクシーで急ぐ、
などを適宜カットバックしながら、
予告編風に繋ぐことを考えよう。
緊迫感あるタクシーやうんこが漏れそうな俺の表情をうまくインサートすれば、
何か凄い事件の予告編のように見える筈だ。
最後にそれぞれのアップにキャスト名が連打し、
タイトルが出て、一行コピーがつけば、
面白そうな予告編いっちょあがりである。
朝日の彼女が凄く綺麗に撮れていたり、
タクシーのなかの緊迫感が凄く面白そうに撮れていたり、
途中で何かの爆発ショットを挟むだけで、
凄く面白そうに見えてくる。
それぞれがいい絵で、アルマゲドンの音楽でもかければ完璧だ。
実際は、うんこと出社と酒飲むのと電車とタクシーで急ぐ、
ストーリーにもなっていない日常の場面だけなのに。
予告編詐欺は、実はこのようにしてつくれる。
もしあなたが映像業界にいるのなら、
素人ビデオをこのように編集し直して、
予告編詐欺をつくる編集の練習をするとよい。
まあ簡単に出来る。
コツは意味ありげに繋ぐこと。
複数のシチュエーションの劇的な瞬間を選び、
それを繋ぐこと。
本来繋がりのないそれらが、
カットバックによって、意味ありげに繋がるのである。
カットバックは強力な手法だ。
少なくともノーラン信者を騙したり、
予告編詐欺に使えるぐらいは。
面白い映画の予告編は、きちんと内容に触れてなお平気だったりするが、
詰まらない映画の予告編は、
カットバックで面白そうに繋いで、
売りになる要素を並べるのが常道だ。
(最近の予告が下手なので、前者の映画なのに後者の宣伝をされてしまう悲劇が多い)
2014年12月31日
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