2015年01月07日

シナリオの文字数の考え方

この話題で検索する人が毎日何人かいて、
このブログにたどり着くようなので。

標準的なフォーマットは他の記事を見てもらうとして、
それ以前の基本的な考え方を。

脚本は楽譜だ、と僕はよくたとえるのだが、
厳密には楽譜の条件を満たしていない。
台本は、時間に対する記法を持たないからだ。


例えばフェードアウトと言っても、
何秒でフェードアウトするかは台本に書いていない。
それは編集時に決める。
10秒なのか5秒なのか2秒半なのかは、
芝居で決まるからだ。


例えば歌舞伎の芝居における「間」は口伝である。
何秒、と客観的な指標はない。
(そもそも秒が輸入される前から、歌舞伎の台本はある)

そもそも日本の芸事は、
芝居の文脈で間を読み取るものだ。

芝居は生き物だから、
前までの間が変わっていたら、
今回も同じ間で答えるわけにはいかない。
そのときの最高の、遅すぎず早すぎない間で答えるのがベストだ。

その間が下手な奴は、勘が悪いという。

勘が悪い奴は、分からないから数字に頼る。
数字に頼ると生き物としての間ではないから、
益々勘が悪いと言われて首になる。
そして勘のいい奴だけが生き残る。
そのような淘汰が行われてきたのが、
日本の芸能の世界だ。

それを元々の下敷きにする、映画台本では、
間が何秒などと書かれることはない。
皆が文脈を読み込み、勘でやる。
それはあてずっぽうの勘ではなく、
その芝居の最も適切な間が、分かるようになっていくのだ。

照明のタイミング、カメラのタイミング、
音楽のタイミングなど、全て考え方は同じだと思う。
その間はないだろ、と監督が思えば調整はするけど。


第一、早口で喋れば、同じ原稿でも短くなるし、
(マシンガントークや、焦りを意味する芝居や、
テンポのいいラリー)
ゆっくり間を取れば長くなる。
(日本映画の間が長い原因は、貧乏でカットを割らないからだ。
長い台詞の間は、カットを割っていれば鋏を入れられるが、
ワンカットでは切れないからである)

ただ、いい間というのはある。
これは、厳密には編集で決めるのである。
その基準は簡単だ。
文脈を最も楽しめる間にすることだ。


全ては文脈が決める。
多少の解釈の個性はあるにせよ。


あなたがとても芝居が上手いなら、
ストップウォッチを片手に全部を演じてみるといい。
実は、何回やっても同じにならないことが分かると思う。
それぐらい、芝居の間は毎回変わるものである。
一人でやっても不安定なのだから、
複数の間でやると尚更だ。
稽古しまくった芝居でさえ、公演時間が10分ずれるなんてよくあることだ。



だとしても、例えばニュース原稿では、
読むスピードが一定だから、
文字数はおおむね時間に比例するだろう。

脚本の経験上のフォーマット、
400字詰め原稿用紙一枚が1分に相当、
というのはそうやって生まれてきた。

だが簡単に分かるように、
ト書きの書き方で、文字数は全然変わってくる。
細かく書くのか、簡潔に書くのかでだ。

「AはしばらくしてBを見る」と書くのか、
「Aは歩きながら辺りを見回し、Bを見ようとしない。
しかしその後Bを見る」と書くのか。
或いは台詞の中で、「…(間)…」と書くのか。

これらのスタイルが違うだけで、
文字数差の蓄積は物凄い違いになるだろう。

なるべく簡潔に書く、という作法なら、
第三の書き方が標準的だ。
しかし初心者は上二つのように書いてしまうだろう。

つまり、初心者が書く脚本程度では、
文字数と尺の一致なんて測れないのである。



熟練した脚本家の脚本なら、
1枚1分だ。間のことも分かっている。
(例えば我々CMディレクターは、
原稿を目で見て、15秒に適切に入るかどうか分かる)

初心者諸君は、文字数なんて気にせず好きなように書くことだ。

(たとえばビデオを回して実際に演じてみて、
三回やった平均でも出すことだ)

何百枚以上もの原稿用紙を埋めて、
スタイルが固定するまで試行錯誤してから、
はじめて文字数を気にすればいい。


コンテストに出すのならある程度気にするべきかも知れないが、
それよりも面白い話を書けることのほうが、
実は優先事項であることは、知っておいたほうがいい。
(小説の世界では厳密らしいが、
映像のシナリオでは、規定枚数は厳密でないと思う。
それは、やはりシナリオは中間生成物という、
ファイナル原稿の意識が希薄だからだと思う)
posted by おおおかとしひこ at 00:15| Comment(0) | TrackBack(0) | 脚本論 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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