ひとつだけコツを教えてあげよう。
「ヌケに注意すること」。
専門用語抜きで言うと、
「被写体の後ろに何が写っているか注意すること」だ。
人とか猫とか、写真を撮るときは、
その被写体に注意するのは勿論、
そのヌケ(被写体の後ろにある背景)に、
何が写っているかも気にしよう。
ヘンテコな看板が入ってたら、
せっかくの美女も台無しだ。
後ろにへんなおじさんが写っていたら、
被写体である猫より気になる。
記念写真で誰かの頭の上に、
後ろからちょんまげみたいに何かを出すイタズラは定番だ。
笑える一発ネタ写真のパターンで、
被写体より、そのヌケにあるものが面白い、
のがある。
つまり、素人は、被写体ばかり見ていて、
ヌケなんて見ずにシャッターを切っているのだ。
多くの心霊写真は、このために起こることが多い。
被写体の後ろの窓に変なものがうつっている、とか、
被写体の後ろの何かに人っぽいものがうつっている、とかは、
ヌケまで見ていない素人写真家の仕業である。
(たいてい心霊ではなく、その場にあったものなのだが、
注意が向けられていなくて、その場にあった筈がない、
などと記憶違いすることも多い)
逆に、プロの写真家は、ヌケまで見てからシャッターを切る。
変な看板が入ってたらアングルを変えるし、
後ろの家からこっちを見てる人がいたら「すいません」と謝りにいくし、
後ろに汚いゴミ箱があれば、そこまで歩いていってのけるものだ。
勿論、ボケの中に入ってしまえば、何があっても問題はないのだが。
さて、
映画とは、写真芸術でもある。
被写体とヌケの話は、他人事ではない。
フレームに何を写し、ヌケに何を写すかは、
カメラマンと監督が決めることだが、
それは、脚本から暗示されていることが理想だ。
どういうことかと言うと、
現在の人物の状態と、
その人のバックストーリーの関係と同じだからだ。
ヌケに何を写すかは、
背景を決めることだ。
背景にしょうもない看板や汚いゴミ箱を入れるのは、
バックストーリーに、
いらない恋話や幼少期のエピソードが入っていることと同じなのだ。
専門用語で、撮影中にヌケを整理する、と言う。
逆に、ヌケにもう少しディテールが欲しい、と、
フレームの外のゴミ箱をアングル内に入れたり、
背景のエキストラを増やすこともある。
ヌケを決めることは、バックストーリーの多寡を決めることと、
殆ど同じ行為だ。
ヌケがごちゃごちゃしてれば、被写体に目がいかないし、
ヌケが真っ白では、どこに立っているか分からない。
脚本と同じだ。
昔と違い、今は誰でも高画質の写真が撮れる。
高画質というのはあくまでピクセル数であり、
ハイクオリティを意味しない。
次写真を撮るときは、ヌケを気にしてみて欲しい。
2015年01月11日
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