2015年01月27日

アイデアの出しかた

アイデアはどうやって出せばいいか、
なんて初心者のころは質問したりする。

その質問は間違っている。
アイデアというのは、
場面場面で形が変わるものであり、
それら全部の共通する出しかたはない。



たとえば、「宝くじのCM」をつくるとしよう。


まずコンセプトだ。
「他人のラッキーを喜ぶ男」というアイデアはどうだろう。
何故なら、相手がラッキーなことがあるたびに運を使ってしまい、
自分の宝くじが当たる運気がそのぶん上がると思ってるからだ。

これがコンセプトの階層のアイデアだ。

このアイデアは転がすことが出来る。
「他人の不幸を、工作してラッキーに変える変な男」にしてもよいし、
「自分のラッキーを台無しにしてわざと不幸になりたい男」にしてもよい。
根本となる考え方は同じで、
場面の切り取り方の違いだ。
さらに進めば、「日本ラッキー同盟」という集団をつくることも出来るし、
「不幸になる会」という集団をつくることも出来るだろう。


さて、これらのうち、面白いコントになるのは、
どのようなシチュエーションコントだろう。

犬の尾を踏む、階段で滑って転ぶ、
好きな子にタイミングよく彼氏がいた、
などのアンラッキーシチュエーションを考えて、
ビジュアル的に面白そうなものを選ぶのがよいだろう。
鷹にさらわれる、銃弾を受けたら左胸に形見のブローチ、
雪山で遭難してセントバーナードがウイスキー持ってきたが酒飲めない体質、
などの極端なものを混ぜていってもいい。
あとは、
極端なコントなのか、現実にあるある系の共感ネタに持っていくかだ。


最終的にたとえばこんなコントにしたとする。

雪山で遭難。
A: 大丈夫か!救助犬がきたぞ!
このウイスキーで暖まるんだ!
B: しかし!俺ウイスキー苦手なんすよ!
A: なんたるアンラッキー!
B: アンラッキー?やっほうううう!
A: ?
宝くじ買いに行く。
B: 今なら当たる気がするううう!
「不幸のときが最大のチャンス」


さて、
ここで既にアイデアの出しかたに二階層ある。
このふたつは、出しかたが異なることは分かるだろう。

宝くじを面白おかしく表現するときに、
ヘンテコだがわかるわーという「コンセプトを新しく思いつくこと」と、
それに従って、
日常やそれまで見てきた面白シチュエーションを、
「思い出して組み合わせ、ベストチョイスを考える」ことは、
脳の使っているところが明らかに違う。

また、アイデアから実際のセリフやキャッチを書くことも、
別のアイデアがいるだろう。

少なくとも、これだけの最終形に、
三階層のアイデアの形があるのだ。



それを知らない初心者は、
アイデアはどうやったら出ますか、とぼんやりと聞いてくるのである。

こういう感じのアイデアは、どうやったら出ますか、とか、
こういう感じのアイデアはあるのだが、
この次のアイデアはどのような形が理想形なのか、
などの質問をするべきだ。

しかし、そのような質問が出来るようになれば、
自分で調べたり研究したり出来るようになるから、わざわざ聞かない。
で、結局、アイデアはどうやったら出ますか、
という初心者の質問だけが世の中に繰り返される羽目となる。


自分の中だけでアイデアを出していると、
自分のやり方しか分からなくなる。
他人のアイデアの出しかたを盗むことだ。
一番簡単なのは、皆でフィニッシュまでつくる企画会議をすることである。
若いのもベテランも混じるといい。
昔はそれを延々とやっていたが、
みんなそれが怖いのか、最近やらなくなった。
絶好の他人のやり方を盗む場だったのになあ。

僕は自分のやり方を、なるべく公開して後進に寄与したいが、
僕のやり方がベストではない。


アイデアだけは、万人に開かれたものである。
いつ誰がどんなアイデアを出してもよい。
それが、必要とされるその文脈で、劇的に面白い場合。

どうやったら出ますか、の問いへは、
空気を読み、その先を行け、としか言いようがない。
posted by おおおかとしひこ at 13:35| Comment(0) | TrackBack(0) | 脚本論 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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