アイデアはどうやって出せばいいか、
なんて初心者のころは質問したりする。
その質問は間違っている。
アイデアというのは、
場面場面で形が変わるものであり、
それら全部の共通する出しかたはない。
たとえば、「宝くじのCM」をつくるとしよう。
まずコンセプトだ。
「他人のラッキーを喜ぶ男」というアイデアはどうだろう。
何故なら、相手がラッキーなことがあるたびに運を使ってしまい、
自分の宝くじが当たる運気がそのぶん上がると思ってるからだ。
これがコンセプトの階層のアイデアだ。
このアイデアは転がすことが出来る。
「他人の不幸を、工作してラッキーに変える変な男」にしてもよいし、
「自分のラッキーを台無しにしてわざと不幸になりたい男」にしてもよい。
根本となる考え方は同じで、
場面の切り取り方の違いだ。
さらに進めば、「日本ラッキー同盟」という集団をつくることも出来るし、
「不幸になる会」という集団をつくることも出来るだろう。
さて、これらのうち、面白いコントになるのは、
どのようなシチュエーションコントだろう。
犬の尾を踏む、階段で滑って転ぶ、
好きな子にタイミングよく彼氏がいた、
などのアンラッキーシチュエーションを考えて、
ビジュアル的に面白そうなものを選ぶのがよいだろう。
鷹にさらわれる、銃弾を受けたら左胸に形見のブローチ、
雪山で遭難してセントバーナードがウイスキー持ってきたが酒飲めない体質、
などの極端なものを混ぜていってもいい。
あとは、
極端なコントなのか、現実にあるある系の共感ネタに持っていくかだ。
最終的にたとえばこんなコントにしたとする。
雪山で遭難。
A: 大丈夫か!救助犬がきたぞ!
このウイスキーで暖まるんだ!
B: しかし!俺ウイスキー苦手なんすよ!
A: なんたるアンラッキー!
B: アンラッキー?やっほうううう!
A: ?
宝くじ買いに行く。
B: 今なら当たる気がするううう!
「不幸のときが最大のチャンス」
さて、
ここで既にアイデアの出しかたに二階層ある。
このふたつは、出しかたが異なることは分かるだろう。
宝くじを面白おかしく表現するときに、
ヘンテコだがわかるわーという「コンセプトを新しく思いつくこと」と、
それに従って、
日常やそれまで見てきた面白シチュエーションを、
「思い出して組み合わせ、ベストチョイスを考える」ことは、
脳の使っているところが明らかに違う。
また、アイデアから実際のセリフやキャッチを書くことも、
別のアイデアがいるだろう。
少なくとも、これだけの最終形に、
三階層のアイデアの形があるのだ。
それを知らない初心者は、
アイデアはどうやったら出ますか、とぼんやりと聞いてくるのである。
こういう感じのアイデアは、どうやったら出ますか、とか、
こういう感じのアイデアはあるのだが、
この次のアイデアはどのような形が理想形なのか、
などの質問をするべきだ。
しかし、そのような質問が出来るようになれば、
自分で調べたり研究したり出来るようになるから、わざわざ聞かない。
で、結局、アイデアはどうやったら出ますか、
という初心者の質問だけが世の中に繰り返される羽目となる。
自分の中だけでアイデアを出していると、
自分のやり方しか分からなくなる。
他人のアイデアの出しかたを盗むことだ。
一番簡単なのは、皆でフィニッシュまでつくる企画会議をすることである。
若いのもベテランも混じるといい。
昔はそれを延々とやっていたが、
みんなそれが怖いのか、最近やらなくなった。
絶好の他人のやり方を盗む場だったのになあ。
僕は自分のやり方を、なるべく公開して後進に寄与したいが、
僕のやり方がベストではない。
アイデアだけは、万人に開かれたものである。
いつ誰がどんなアイデアを出してもよい。
それが、必要とされるその文脈で、劇的に面白い場合。
どうやったら出ますか、の問いへは、
空気を読み、その先を行け、としか言いようがない。
2015年01月27日
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