2015年01月28日

映像のタッチ

小説の文体のようなものか。
監督によって、映像のタッチというものがある。

分かりやすいものをあげていこう。


ジョン・ウー

とにかくハイスピード(スローモーション)撮影。
そして鳩が必ず飛ぶ。
バイクアクションも大好き。カンフーも当然。
ほんとかどうか分からないが、
スタッフが監督に、まだ脚本が決まってないときに、
何を準備しますか、と聞いたら、
「ハイスピードキャメラ…&ピジョン」と答えたという逸話が。

岩井俊二(名カメラマン篠田昇存命時)

柔らかいふわりとした逆光。浮遊感あふれる繊細な映像。
(強い逆光、フォグ、プロミストフィルタ、深度浅くするための工夫、
パンサードーリー+吊りのセット)
ピアノ。細くて小さく、文字間あけた明朝体(漢字は使わない)。
少女マンガ的な世界。ふわりとして時に残酷な。

デビッド・フィンチャー

暗い。黒の面積が多い。間接照明。アンバーまたはグリーン。
ワンカットで突っ込みまたは引いていく合成ショット。
音楽はアンビエント。常にカメラがレールで動く。
ステディはあんまり使わない。

クリストファー・ノーラン

ダーク系の絵。絶望的な低音の音楽。
カットバックする複数の状況、そしてそれらは混ざりあわず、
同時に勝手に決着。
ラストは含みを持たせて断言しない。

蜷川実花

花。毒々しい色。金魚とか鳥。
赤と紫を主色、黄色オレンジグリーン水色あたりを副色。
カラコレでごりっと濃い色にする。破綻してもよし。
多分人物と背景で別の色温度のライトを当てる。

黒澤明

強いコントラストだが中間の軟調。
寄りの迫力。影を落としたり汗をかかせたり、
ノーマル状態ではあまり撮らない。
長玉好き。整理された構図好き。

中嶋哲也

ふたつある。
ワイドレンズ、ポジテレシネの世界。アンバーオレンジのライトで、
赤と黄色と緑を強調。濃くて柄物の衣装、ごちゃごちゃしたセット。
手持ちとクレーンを好む。
ただのライトでなく、ハレや差し込みなどのムラのあるライト。
カッティングは細かい。
たまに横顔をキメに使う。
タイトルに赤文字黄色文字などポップ系。

もうひとつは長玉のブルー調。静的なレール、ハイスピード多用。
(カメラマンの阿藤さんのもともと得意な世界)

マイケル・ベイ

砂漠。軍隊。マシン。クルマ。
並走撮影。カメラカー。
パツキンのデルモ。芝居は適当。
ロック。ヘビメタ。エアロスミス。

ウェス・アンダーソン

50ミリで正面から。整列して正面を見ている。
左右対称。色はごちゃごちゃして彩度あさめ。
黄色文字。

宮崎駿

浮遊感、躍動感。空飛ぶこと。
エンジンや複葉機や戦車。ロリ。

押井守

虚構世界のさらにメタ虚構世界。
ひたすらぶつぶつ言う。音楽だけおおげさ。



おれ

ハイスピードキャメラ、バンクショット、
編集のテンポ感ぐらいで、
あとはわざと毎回変えてる。
大抵衣装がかわいいのはある。
(クレラップがヒットしたとき、あれ風で、
とわんさか仕事が舞い込んだが、全部断った。
中身のないものばかりで、
本家クレラップの中身のコントを自ら否定することになるからだ)



毎回変える人と、毎回同じ人がいる。
毎回同じ人は、文体のキャラが立つ。
キムタクがキムタク芝居をすることは、
キャラが売れることと、毎回同じやんと言われることの二つがあるように。

昔のハリウッド映画で、
当時フランク・キャプラが、
キャプラタッチなるものでバカ売れした時があったそうだ。
脚本家が頭に来て、白紙を120枚つきだして、
これにキャプラタッチをつけてくれ、
と言ったとか。

実はそれに近いことは、PVや中身のないCMの映像などで見ることが出来る。
(桃太郎CMは、いくつかの映画のタッチのパクリであることは、
既に指摘した)

タッチだけで食べてる人。
中身で食べていく人。
タッチと中身と両方の人。

僕は後半ふたつになりたいものだが、
世間はタッチだけしか見ないこともある。


何を作家性と呼ぶか。
少なくとも、小説では文体だけを作家性にはしないようだが。
(爆発でふりむくのコピペは、小説を読む人にはたまらんのだろうね。
同じことをこれらの監督風につくることは出来そうだ)
posted by おおおかとしひこ at 11:51| Comment(0) | TrackBack(0) | 脚本論 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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