僕は、ルーチンでないこと、だと思う。
何故ベタが嫌われるのか。
ルーチンだからだ。
ありふれていて、またこのパターンか、というのが嫌なのだ。
意外な大どんでん返し、ももはや食傷気味である。
主人公一人だけ狂っていた、なんてパターンがいっとき流行ったが、
それすら怖いジャンルではベタなパターンに堕した感がある。
一方、王道というものがある。
なんだかんだ言って、野球の九回裏の逆転ホームランは気持ちいいし、
ハッピーエンドに飽き飽きってことはないし、
バッドエンドはすぐ嫌になるし、
主人公がピンチになることはいつ見てもハラハラする。
やっぱりヒロインとは結ばれてほしい。
誰かのピンチにトマホークがキリキリ飛んできて壁にスターンとうちつけられ、
誰だ!と振り替えったらヒーローが、のパターンはいつ見ても楽しい。
人にはいくつかの物語の王道があって、
飽きられた王道の表現パターンを、
たぶんベタと言うのだ。
ベタと王道を分けるのは、期待だ。
期待出来れば王道だし、期待外れや失望はベタである。
法則はない。感覚の問題だ。
何故なら、法則こそがルーチンだからだ。
僕は、「王道を更新する」という言い方をする。
王道はベタによって古くなり、
その衣を脱ぎ捨てて、
常に最新でなくてはならない。
「組織によって作られた男が脱走し、
追われながらその組織壊滅を目論む」
物語は、ベタだろうか、王道だろうか。
サスケなどの抜け忍もの、仮面ライダー、ボーンアイデンティティーと、
形を変えて、綿々と作られているパターンだ。
(「雷鳴のザジ」もね)
それぞれは外見や外の設定を変えることで、
違うようなものに見せかけているが、
中身は同じである。
そのことで、ベタでないように王道を更新するのである。
さらに元を辿ると、
天皇の落とし子を狙って、貴族たちが殺しに来るような、
中世の話に遡ることが出来るだろう。
逆に、王道は、外見を変えれば更新することは可能だ。
良くこういう話の時に出る、
ギリシャ神話のピグマリオンと、
映画「マイフェアレディ」と、「プリティウーマン」は同じ話だ、
という説は、ほぼこのことを言っている。
王道が何パターンあるか、とか、物語研究には、
僕はあまり興味がなくて、
僕は、面白い王道は何か、に興味がある。
新しい王道を作ることが出来るか、にも興味がある。
それは僕がクリエイターだからだと思う。
同じキャストの組み合わせはルーチンである。
同じ事務所とズブズブなのもルーチンである。
マーケティングで上がりが読める商売はルーチンである。
同じ宣伝方法で同じ測定方法で、
同じ儲けを計算できるものは、ルーチンである。
それは、クリエイティブではない。
クリエイティブは、それまでの基準で測定できないもののことである。
今、日本では(ハリウッドですら)、
儲けを計算してから作るという、
最もルーチンワークをするようになりつつある。
クリエイティブとは、ルーチンを破壊する。
それまでの価値で測定できて、読める範囲ではないことを、
することだ。
時代がルーチンの破壊を望まない限り、
クリエイティブなブームは来ないかも知れない。
悲観的に見るか、チャンスと見るかは、
「コップの半分の水を、半分なくなったと見るか、
半分あると見るか」の違いだ。
僕が原作つき映画に殆ど否定的なのは、
クリエイティブでないからだ。
原作をクリエイティブに解釈し直した、
原作ごえを果たしたものだけは、認めることにしている。
僕が桃太郎CMを鼻で笑い続けているのは、
中身がない丸パクリだからだ。
今まである映画の劣化コラージュをしているだけだからだ。
(コラージュは、オリジナル素材を使うことで、
オリジナル素材の第二の意味を作ることである。
MADのほうが本来のコラージュであるぶん、
桃太郎よりも志が高い)
丸パクリは、ルーチンである。
下手なクリエイティブが沢山失敗したのもある。
ただルーチンを破壊するのはクリエイティブではない。
デストラクティブだ。
デストラクティブ&コンストラクティブ&リクリエイティブが、
クリエイティブということだ。(再帰的定義)
下手なクリエイティブは、ただ破壊するだけや、
ただノールールの我が儘をする、幼稚なものが多い。
本当のクリエイティブは、
ルーチンでない、王道の更新のことを言うと、
僕は思っている。
作る前に予測することは、
クリエイティブビジネスにとって重要だろう。
大金のリスクが常にある。
その予測がお前ら下手だ、
という範囲に悪口を留めることにする。
予測そのものがルーチンでは話になんないぜ。
ひょっとすると、
今のクリエイティブビジネスは、
クリエイティブを売り物にしてないのではないかい?
折角、世界を面白くしたり、良くする方法のひとつなのにさ。
2015年02月18日
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