脚本を書いていて、
調子に乗ると自動書記状態になることがある。
ある、というより、この状態を作り出すことが、
執筆という行為だ。
この時のテクニックを少し書いておく。
最も大事なことは、
勢いを殺さないことだ。
わいて出てくるものが、つかえないようにする。
わいて出てくるものが、手が追いつかないと、
ダムのように溜まってしまい、
わいて出てこなくなるのだ。
そこで速記的に書くことや、
書道のような崩し字が有効であることは既に書いた。
ICレコーダーのようなもの(ケータイのボイスメモでも)で、
とにかく台詞を思いついた時に記録する人もいる。
今日あったこと。
勢いが出てきたとき、
モブの名前を決めていないことに気づいた。
それぞれが発言する場面だ。
しかしクライマックス並の勢いだったため、
名前を決めるよりも書く勢いを重視し、
台詞だけ先に書いていくことにした。
名前なんてあとでも書ける。
台詞劇の勢い、物語の勢いを殺さないことが肝要だ。
○○、△△、□□などで良いのだ。
小説版だから、○○が言った、などの地の文も手間なので省略し、
ただ、「」「」「」と台詞を連ねた。
あとで地の文を埋めればよいと、
その勢いのままラストまで書ききることを優先したのだ。
実際、1万字ぐらいの内容を、
最初から最後まで。僕は3時間で書ききった。
ちなみに29話妖怪キックバックの話である。
ここで名前を決めたり、丁寧に地の文を書いていたら、
最後まで書ける勢いは途中で失い、
勢いを取りこぼしただろう。
一度中断した勢いを、
もう一度その勢いにすることが難しいことは、
多分経験ずみだと思う。
ちなみに、てんぐ探偵の殆どの第一稿は、
休みなしの白紙に一気書きだ。
(妖怪正解、一発逆転、横文字、俺だけは特別などの、
比較的複雑な段階の話は、数日かけている)
一気に読むものだから、一気に書く。
そのように僕は考えている。
脚本を書くときもよくあることで、
AとBの会話の時に、
わざわざA「」B「」A「」B「」と書かず、
「」「」「」「」と一気に書くことが多い。
なるべく話の勢いに手を追いつかせるための、
テクニックである。
第二稿や、清書のときに、きちんと直していけばよいだけの話だ。
今回は大阪の下町の町工場、38年締めなくても緩まない、
ハードロックナットが挿話に使われるのだが、
それすらも何となく台詞を適当に書いて最後まで書き終え、
あとから発明者の名前やハードロックナットという固有名詞を追加した。
細かいところは、とりあえずどうでもいい。
一番重要なのは、勢いだ。
最初に出る勢いを、殺さないように記録していくことを、
第一稿では重視すべきだ。
僕は手書きでこれをやり、
文字うちするのを第二稿にしている。
その時に細かいところを埋め、最初の清書とし、
その後、文字うちの文章を数稿書き直す。
(第一集はこないだ見たら9稿あった)
どの稿でも、第一稿のような、
わいてもわいてもまだわくような、勢いが出ることはない。
逆にその勢いが出そうになるまで、書き始めないことにしている。
それが出来るような、徹底的な準備をするのである。
執筆こそエチュード、というのが僕の考えだ。
2015年02月22日
この記事へのコメント
コメントを書く
この記事へのトラックバック