「ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー」
の敗因はなんだったんだろう、
と思っていたら、
「最も出来のいい冒頭のシーン」だと言うことに気づいた。
あのツカミのシーンは、
「我々の心をつかむ」ということには、
最高に機能している。
もしオープニングツカミ百選なんてあったら、
確実にランクインするレベルだ。
ここ十年のベストテンに入るかもしれない。
しかし、そのツカミこそ、
最大の失敗なのだ。
何故なら、子供主人公にはつかまれるものの、
その後の大人主人公への感情移入に、
全く寄与しないからである。
ここは難しい議論だ。
子供と大人は、作者から見れば同一人物だ。
しかし我々観客から見たときには、別人なのだ。
勿論、別の役者だという見た目上の問題も大きいが、
そもそも、
「子供の頃大好きだった人を、大人になっても好きとは限らない」
という現実にある真実が、
子供の主人公と同じぐらいに、
まだなんの特徴もない大人主人公を、
無条件に好きにならせないのである。
子供の頃は分かった。
母親との辛い思い出があって、さらわれた。
しかし大人になって、
「彼はどういう大人になったか」が、描かれていないのである。
つまり、
大人主人公は、子供主人公とは別に、
我々の心をつかまなければならないのだ。
その為のいくつかの仕掛けはある。
ウォークマンで80年代音楽を聴いていること、
追っ手に生意気な口を利くこと、
仮面で変身すること、
ヨタヨタながらなかなかのアクションぶり、
宇宙船に女を待たせていて忘れてること、
などである。
しかし、この沢山の金もかかったキャラ立て要素は、
何一つ我々の心に、
子供主人公のエピソード並に響かない。
子供主人公のファーストシーンの感情移入ほどに、
大人主人公に注目できないのだ。
何故か。
大人主人公のそれよりも、
子供主人公のそれのほうが、出来がいいからである。
つまり、本来ならばあるはずの、
本編中ずっと出張る大人主人公の感情移入エピソードを、
欠いてしまったのだ。
子供主人公のパートの出来が良すぎて。
これは、冒頭のツカミにありがちな、
中級者でも犯す誤りである。
心をつかむことが出来て安心して、
「本当につかまなければいけないこと」をつかんでないことに、
気づけないのだ。
本当につかまなければいけないこととは、
勿論、「主人公への感情移入」である。
大人主人公には、ずっと感情移入出来ない。
人間らしさを描いた、
ウォークマンで曲を聞かせ、キスしそうになるシーンまでは。
これはミッドポイント近くだったと思う。
つまり、開始から一時間、
大人主人公には、なんの感情移入も出来ないのだ。
だから面白くないのだ。
もっとも、ここの人間的エピソードで、
大人主人公が好きになるかどうかは微妙だ。
ただ、単なる進行役から、
人間らしくなっただけだ。
それが再び人間らしくなるのはどこか。
クライマックス、ダンスで気をそらせるシーンまで、
ないのだ。
つまり。
この映画は、
冒頭:子供主人公への感情移入
中盤:音楽を聞かせ、キスしそうに
クライマックス:ダンスで気をそらせる
ラスト:母のプレゼントを開ける
の、たった4つしか、主人公に関するエピソードがないのだ。
しかもそのうち、子供主人公と関係する冒頭とラストをのぞけば、
たった二つしかないのである。
前半一時間、感情移入の対象を見失い、
ミッドポイントで人間らしくなるころには、
既にアライグマや木の人のほうに魅力を感じ、
(感情移入まではいっていない)
クライマックスまでまた暇なのである。
これを面白いという人は、
感情移入という言葉を、間違って使っている人だと思う。
戦犯は何か。
映画中、最も出来のいい、ツカミシーンだ。
これがなければ、主人公への感情移入がうまくいっていないことに、
気づけたはずだ。
仮に、子供の頃のエピソードを、伏線にするために、
カットはせず、中盤あたりに差し込み、
冒頭はオーブを発見する所から始めるとしよう。
そうすれば、大人主人公が、何らかのエピソードで、
我々が感情移入に値する何かをしなければならないことが分かるだろう。
ツカミは、危険だ。
つかめたように誤解させる力がある。
僕のワースト映画の中に、「鈍獣」があるが、
これもオープニングのツカミは最高なのだが、
何一つ結局つかめていない、大失敗作だ。
ツカミは何をすることか。
映画の本質、つまり、
テーマやモチーフや、主人公や事件などの、
「中心的なこと」で、つかむのである。
「ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー」で言えば、
世界を破滅させるオーブや、はみ出しものという要素や、
ルーツ探しということで、つかませるべきなのだ。
そこに魅力的な何かが無かったから、
この映画は、元々詰まらない映画だったのだ。
「違うもの」でつかむな。
必ずそれが癌になる。
2015年02月22日
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