2015年02月23日

「アーム・ジョー」における三幕構造と序破急構造

傑作「アーム・ジョー」は全7Pだ。
よく見てみると、そこに三幕構造と序破急構造を見ることが出来る。

冒頭とラストのブックエンドがそれぞれ1Pずつ、
中のアーム・ジョーの挿話が5P。
まずは、アーム・ジョーの挿話の三幕構造を分析しよう。



一幕、二幕、三幕は、
それぞれ、2P、2P、1Pの綺麗な構造だ。
第一ターニングポイントはジョーの家出、
第二ターニングポイントは斧対決を受けたところだ。

一幕は、ジョーの生い立ち(基本設定)
二幕は、ジョーの自立、
三幕は、クライマックス
と劇的文脈を書くことが出来る。

更に見ていくと、各Pごとに、きっちりとシーンを割っている。

一幕の1Pでは、ジョーの生い立ちという基本設定。
2Pでは、三つ子が生まれたことをカタリスト(きっかけ。
僕的には日常を変える異物との出会い)として、
ジョーの脱走(第一ターニングポイント)が描かれる。
ページごとに、文脈がしっかりと別れている。

二幕の1Pでは、ジョーがひとかどの者になることが描かれる。
ハーモニカは印象的な場面で、ミッドポイント(かりそめの成功)だ。
2Pは屋敷の主ジョージとの対決の経緯である。
チェーンソーvs斧の舞台が整う。(第二ターニングポイント)

おそるべき、教科書的な美しい三幕構造だ。
しかも短編の法則、2:2:1の序破急にもなっている。
序は、ストーリーで壊される前の世界、
破は、序の世界を壊すことで対比的にする、
急は一気に、
の原則をきっちり守っているではないか。


そして、ブックエンドを含んだ全7Pの、
全体が序破急構造になっている。

1:冒頭
2:アーム・ジョーの生い立ち
3:アーム・ジョー脱走
4:アーム・ジョーの一人立ち
5:斧対決が決まる
6:斧対決
7:ラストの落ち

だが、序破急を、
3:3:1と考えることも出来るし、
4:2:1と考えることも出来る。

3:3:1なら、設定→展開→大落ちというリズム感、
4:2:1なら、世界設定→対決→大落ちというリズム感だ。
前者ならハリウッド的なリズム感、
後者なら日本人的なリズム感だろう。

どちらで解釈してもいいが、
区切りの場面に注目してみると理解できる。
前者なら、脱走とアーム・ジョーの死、
後者なら、ハーモニカとアーム・ジョーの死だ。

前者なら、ストーリー構造の急所が区切りに来ていることがわかる。
後者なら、感情の震える場面が区切りに来ていることがわかる。
ハリウッド的と日本人的、と言ったのはその違いである。



「かっこいいスキヤキ」「孤独のグルメ」で知られる、
泉昌之氏の作品だ。
彼は脚本理論を知ってるかどうかまでは分からないが、
少なくとも直感で、それらのリズムを感じていることは確かだ。

さらに素晴らしいのは、
これだけのしっかりした構造の上に、
完璧なキャラ描写が乗っていることだ。

ジョーも、父母も、悪役ジョージも、
トンプソンさんも、そして小学生も、
みんなキャラが立っていて、素晴らしい。
典型的なキャラだから良いのである。短編で機能する。
その典型描写が、パロディスレスレのラインで、
小気味良い。


このような、構成の見事さと、キャラ立ちと、感情移入の、
バランスの作品を目指すべきだ。
(ギャグかどうかは置いといて)

「ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー」が、いかに糞バランスか、
これで理解できたかと思う。
世界でこの二作品を比較批評してる人も、
おれ以外いなさそうだけど。(笑)
posted by おおおかとしひこ at 12:50| Comment(0) | TrackBack(0) | 脚本論 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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