僕は、PR会社の存在が、
正確に言うと「PR会社に頼ること」が、
ドラマや映画の質を下げたと思っている。
業界の構造の話。
PR会社とは、小さな広告代理店の種類で、
巨大産業であるテレビCMやポスターを手がける電通や博報堂とは、
ちょっと違うメディアを扱う。
彼らが扱うのは「ニュース」である。
こういうものを、見たことがあるだろう。
「人気俳優の○○が、△△のCMに出演! 発表会&現場密着取材!」
「○○が出る映画、ポイントは医者のコスプレと役作り」
「ドラマ出演中の○○が、インタビューに答えた!」
などの、ニュース形式で、
スポーツ新聞や、ワイドショーや、各種雑誌や、
ネットニュースや、まとめニュースなどに出るものである。
実はこれは、新聞記者や週刊誌記者やテレビ会社が、独自に取材したものではない。
PR会社がつくり、その原稿やビデオ映像を、彼らに提供する仕組みなのだ。
勿論、記者会見のように記者たちを集めることもある。
各社に取材時間を割り振るのも彼らの仕事だ。
そのときは記事にしやすいよう、
「記者発表会で○○が大胆発言!」などのテンプレをつくった上で、
それを記者発表会でやるような、イベントを仕込むのである。
洋画の公開時に、なぜか芸能人が「PR大使」として選ばれているだろう。
あれもPR会社の仕掛けである。
その映像を撮った上でバラエティに売るか、
その場にテレビ局のカメラが来るように段取るのである。
CMや映画公開者にとってのメリットは、媒体費の安さだ。
CMを一回ゴールデンタイムに流すのは200万かかる。深夜なら数十万かな。全国の場合。
何十回も流せば数千万や億単位だ。
それよりも、ニュースは安いのである。
価格帯は知らないが、まあ1/100から1/10だろう。
電波代を出すことなく、露出を電波に乗せられるのである。
(CM広告費換算、なんてPR会社はよく言う。
同時間帯にCMを打つよりも安いからだ。
つまり、CMは高くて効果がないですよ、
というのが彼らの言い分である)
芸能人にとってのメリットも大きい。露出できるからだ。
雑誌や、バラエティやワイドショーにもメリットは大きい。
ニュースネタになるからだ。
(しかも巧妙なPR会社なら、ニュースとして取り上げてくれ、
と逆に金を出してニュース時間を買うことすらある。ステマである。
容易に想像できる通り、テレビ局の副収入になる)
このような、広告主、メディア、出演者、そして間を取り持つPR会社、
すべてにとってメリットのあるような仕組みに、一見思われる。
しかし僕は、これが結局「安物買いの銭失い」になっていると思うのである。
何故か。
本編の面白さをアピール出来ず、別の要素でアピールが行われるからである。
最初の具体例をもう一度見てみよう。
「人気俳優の○○が、△△のCMに出演! 発表会&現場密着取材!」
これ、CMの内容に全然触れていない。
CMが映画になっても同じである。
「○○が出る映画、ポイントは医者のコスプレと役作り」
医者のコスプレや役作りは、本編の面白さと関係がない。
本編が、「命の重さと政治を天秤にかける、現代を鋭くえぐる問題作」
だとしても、その面白さを分かりやすく伝えるのではなく、
取り上げられる内容はコスプレなのである。
これでは、作る人間はまるで浮かばれない。
マスコミが料理しやすいような、ニュースネタを提供しなければ、
ニュースに取り上げられないからである。
○○が脱ぐ、○○と△△のキスシーン、○○初体験、○○が大好きな、
すべて主語は「人気芸能人○○が」である。
J事務所ばかりが主演を出来る理由はこれだ。
金をかけて宣伝しなくても、ニュースで取り上げられて、
PR出来ると、製作者が「勘違いしている」からだ。
仮にどんなに出来の良い
「命の重さと政治を天秤にかける、現代を鋭くえぐる問題作」
だったとしても、
それは人気芸能人○○が出ていない限り、
ニュースに取り上げられないのである。
そんなバカな、良いものは口コミで広まるだろうって?
じゃあそろそろ最高傑作、実写「風魔の小次郎」は日本人全員が見てるはずだぜ?
何故そうじゃないんだい?マスコミが、取り上げないからだ。
取り上げないのは、人気芸能人○○が、出てないからだ。
(ちなみに、「風魔」の制作発表会が、
新聞やネットニュースで流れた記憶がある方もいるだろう。
あれは、制作委員会が金を払って、呼ぶのである。
勿論、PR会社が仕切って、紙面やニュースに金を払うのである。
つまり発表会とは、ニュースの形を借りた、安目の広告である)
コストを安く。それでいて効果的に。
その発想自体は間違っていない。
しかし、効果的か?
それらのニュースで、
劇的動機やきっかけとなるポイントや第一ターニングポイントを紹介した?
モチーフとテーマや、二幕のお楽しみポイントについて、
紹介した?
ネタバレ?いやいや、これがネタバレごときにならないことは、
ストーリーとは何かを分かっていれば、
「ただの触り」だということぐらい分かるだろう。
つまり、PR会社を通して出来ることは、
本編とは関係ない、出演者に関する広告である。
内容に関する広告は、
これまで通り、予告編やテレビCMやポスターなどで、
きちんと広告していかないと、ダメなのだ。
ところが、前者は安く後者は高い。
値段の桁が違う。
前者はアホでも分かる内容で、
後者は捌くのに知性を要する。
つまり、貧すれば鈍する。
ドラマや映画の質が落ちたのは、
「PR会社に流して客を寄せること」と、
「PR会社に流せる内容をウリにすること」が、
卵と鶏の関係のようにぐるぐる回った結果、
「PR会社が取り上げる、学芸会的な内容しかない内容」
になってしまったことが原因だ。
勿論、志ある人たちが、そうじゃないことをやろうとするが、
そういうときは「○○賞受賞原作の凄い深さ!」
しか言えない。
そうすると、内容が伝わらず、ますます意味のないアピールになる。
この負の連鎖が回っている。
宣伝費は、制作費の2倍とかつて言われた。
それを少しでも減らしていったら、
内容までスカスカになったよ、というのが現状だ。
ほんとに内容のあるものを、
正しく面白そうと伝えることが、
もはや、殆どの人が出来なくなってしまったのではないか?
いや、最初から出来てなくて、
かつては物量と勢いで誤魔化していたのだろうか?
映画やドラマは、
このまま内容のないスカスカになることと、
物量で誤魔化す(これには色んな会社がぶら下がる)ことと、
内容はあるが誰も知らないものだったがそれが予算が下がっていくことと、
三極化していくのではないだろうか。
上二つは、PR会社が今後もがっちり入るだろう。
映画配給に、賢い人材が入ってほしいものである。
そんな人に届くように、今日もストーリーとは何かを、
うまく言葉にしようとしている。
そろそろ「てんぐ探偵」もミッドポイントだ。
その魅力の伝え方について、考える頃かも知れない。
(ファンの方、来月上旬までお待ちください)
2015年02月26日
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