僕はタイアップ主題歌が大嫌いだ。
主題を歌っていないからだ。
タイアップとは、楽曲の制作費を音楽事務所が負担することで、
音楽制作費を浮かせることである。
製作側にはコストダウンになるし、
音楽事務所側には露出の機会が増える、WINWINの関係だ。
その代わり犠牲者が出る。
主題である。
そもそも、どうしてテレビドラマや映画に、
主題歌があるのだろう。
それは、芸能の古い部分を考えればわかる。
音楽はもっとも古い芸能のひとつだ。
歌とインストだと、歌のほうが多分あとに生まれたのだろうか。
僕は、同時だと考えている。
言葉を音にのせる、歌こそが、
インストやダンスに先駆けて生まれたと考えている。
何故なら、歌とは、歌詞が示す内容を、
内側から絞り出すことだと考えるからだ。
歌は、言葉の表現だと僕は考える。
そこに意味が最初からついてまわる。
歌詞内容のさすことこそ、
歌の主題である。
最も古く、今でも生まれ続ける歌は、
「あなたがすきです」を主題とする歌、ラブソングだと思う。
(上のテーマは一人称形であることに、
これまでの読者は敏感に気づくべきだ)
人が集まるところに、
なんだか音楽が欲しいのはわかる。
人間の本能かも知れない。
しかし奏でるべき音楽は、主題をそれぞれ持っている。
その原始的な形態は、
神の偉大さを主題とした宗教の集まりだと思う。
アニミズムでもキリスト教でも神道でも、
音楽と神と人々の集まりは一体だ。
時代が下り現代では、
みんな(小集団)がすごいと思うものを、
みんなで集まってカラオケで歌う。
すごいもの(神)のことを歌う古代の人々と、
おおむね同じことをしているのだ。
日本には、歌物語という伝統がある。
ある歌(和歌)の成立した背景や、
細かい設定や思いなどを物語形式で述べ、
その思いを歌った(詠める)歌、
として五七五七七の和歌を最後に添えるやり方だ。
物語形式で書かれたことを、
ひとつの歌に凝縮するやり方である。
このとき、この歌はこの物語の主題歌になる。
歌が歌う主題は、物語の主題と一致する。
キャッチコピーと物語の関係と似ている。
どちらも、それぞれの形式で、
同じことを表現しようとしている。
その同じことを、主題、すなわちテーマという。
僕がタイアップ主題歌を毛嫌いするのは、
音楽事務所がアーティストを売りたいが為に、
主題を歌っていなくても、主題歌になってしまうためだ。
驚くべきことに、
主題歌を、監督または脚本家がチェックする段階はない。
それは、口を出すなら金も出せという暗黙の前提が、
タイアップの関係にあるからだ。
物語の主題のことなのに口を挟めず、
アーティストが書いてきた内容を、
(たとえ全然ぼんくらだったとしても)拒否権もなしに使うしかないのである。
勿論、歌詞という、物語とは別の才能を必要とするものだから、
下手くそな口出しが無粋なのはある。
しかし、歌側から主題にたどり着いているかどうかについても、
ノーチェックなのである。
かつては作詞者という、詩人の職業があった。
しかしシンガーソングライターの台頭によって、
主題を詩で表現する人は、職を失っている。
メロ先でつくられる昨今のやり方で、
主題を歌に乗せる、本来の主題歌がつくれる訳がない。
またまた某映画社の話になるが、
僕が仮ミックスと歌詞をはじめて聞いたのは、
編集が終わってからだ。
主題とややずれてるし、映画がやりきれなかったところを補完してほしいとも思った。
映画の内容と同じモチーフを歌う(夏草とか自転車とか)のは
頭痛が痛いような、バカな表現だと思ったからだ。
残念ながら変更することは一切できず、
受け取ったものをそのまま使うしかなかった。
ちなみに僕は一度も渡辺美里と、メールでも手紙でも、
ひとつも言葉を交わしていない。
風魔のときは、僕が先に主題歌をつくった。
それに合わせてオープニングの絵を撮り、
タイアップバンドの似たアップテンポロックにのせかえ、
先方に渡してそれから作ってもらった。
音楽事務所はメロウなバラードを、次のこのバンドの販売戦略にしていた。
それを僕が主題の為にねじ曲げたのだ。
かのバンドの戦略に幸福だったかどうかは分からないが、
それが成功だったと、風魔のオープニングを見れば見るほど分かるだろう。
(残念ながら歌詞にタッチは出来なかったので、
曲調と絵のイメージをコントロール出来たに留まる)
エンディングはもっと自由権があって、
スローバラードであること、ハモリを活かしたもの、
絆に関する内容を指定できた。
(姫子から小次郎への片思いの歌詞も仮に僕が書いた。
内容は大きくは同じだ。残念ながら現存しない)
風魔のOPとEDはいまだに神扱いされるが、
それは、「ただしい主題歌」だったからだと言えるだろう。
あなたは脚本家であり、
言葉を使う達人でなければならない。
出来るなら、主題歌の歌詞ぐらい書けなければならない。
(ラピュタのエンディングを見よ!)
歌詞は書けなくてもいい。
大体このようなことを、歌詞にしてくださいという、
テーマを書けなければならない。
何故なら、テーマはあなたのもので、
皆のものだからだ。
ももクロとかに歌わせてんじゃねえぞ、水落!
(同期の監督なので、悪口勘弁!)
(ということで、
てんぐ探偵30話の特別主題歌が出来上がりました。
そのうち発表します)
2015年03月05日
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