2015年03月05日

テーマとはなにか11:主題歌

僕はタイアップ主題歌が大嫌いだ。
主題を歌っていないからだ。

タイアップとは、楽曲の制作費を音楽事務所が負担することで、
音楽制作費を浮かせることである。
製作側にはコストダウンになるし、
音楽事務所側には露出の機会が増える、WINWINの関係だ。
その代わり犠牲者が出る。

主題である。


そもそも、どうしてテレビドラマや映画に、
主題歌があるのだろう。

それは、芸能の古い部分を考えればわかる。

音楽はもっとも古い芸能のひとつだ。
歌とインストだと、歌のほうが多分あとに生まれたのだろうか。
僕は、同時だと考えている。

言葉を音にのせる、歌こそが、
インストやダンスに先駆けて生まれたと考えている。


何故なら、歌とは、歌詞が示す内容を、
内側から絞り出すことだと考えるからだ。

歌は、言葉の表現だと僕は考える。
そこに意味が最初からついてまわる。
歌詞内容のさすことこそ、
歌の主題である。

最も古く、今でも生まれ続ける歌は、
「あなたがすきです」を主題とする歌、ラブソングだと思う。


(上のテーマは一人称形であることに、
これまでの読者は敏感に気づくべきだ)



人が集まるところに、
なんだか音楽が欲しいのはわかる。
人間の本能かも知れない。
しかし奏でるべき音楽は、主題をそれぞれ持っている。

その原始的な形態は、
神の偉大さを主題とした宗教の集まりだと思う。
アニミズムでもキリスト教でも神道でも、
音楽と神と人々の集まりは一体だ。
時代が下り現代では、
みんな(小集団)がすごいと思うものを、
みんなで集まってカラオケで歌う。
すごいもの(神)のことを歌う古代の人々と、
おおむね同じことをしているのだ。


日本には、歌物語という伝統がある。

ある歌(和歌)の成立した背景や、
細かい設定や思いなどを物語形式で述べ、
その思いを歌った(詠める)歌、
として五七五七七の和歌を最後に添えるやり方だ。

物語形式で書かれたことを、
ひとつの歌に凝縮するやり方である。

このとき、この歌はこの物語の主題歌になる。
歌が歌う主題は、物語の主題と一致する。

キャッチコピーと物語の関係と似ている。
どちらも、それぞれの形式で、
同じことを表現しようとしている。
その同じことを、主題、すなわちテーマという。



僕がタイアップ主題歌を毛嫌いするのは、
音楽事務所がアーティストを売りたいが為に、
主題を歌っていなくても、主題歌になってしまうためだ。

驚くべきことに、
主題歌を、監督または脚本家がチェックする段階はない。
それは、口を出すなら金も出せという暗黙の前提が、
タイアップの関係にあるからだ。

物語の主題のことなのに口を挟めず、
アーティストが書いてきた内容を、
(たとえ全然ぼんくらだったとしても)拒否権もなしに使うしかないのである。

勿論、歌詞という、物語とは別の才能を必要とするものだから、
下手くそな口出しが無粋なのはある。
しかし、歌側から主題にたどり着いているかどうかについても、
ノーチェックなのである。


かつては作詞者という、詩人の職業があった。
しかしシンガーソングライターの台頭によって、
主題を詩で表現する人は、職を失っている。
メロ先でつくられる昨今のやり方で、
主題を歌に乗せる、本来の主題歌がつくれる訳がない。

またまた某映画社の話になるが、
僕が仮ミックスと歌詞をはじめて聞いたのは、
編集が終わってからだ。
主題とややずれてるし、映画がやりきれなかったところを補完してほしいとも思った。
映画の内容と同じモチーフを歌う(夏草とか自転車とか)のは
頭痛が痛いような、バカな表現だと思ったからだ。

残念ながら変更することは一切できず、
受け取ったものをそのまま使うしかなかった。
ちなみに僕は一度も渡辺美里と、メールでも手紙でも、
ひとつも言葉を交わしていない。


風魔のときは、僕が先に主題歌をつくった。

それに合わせてオープニングの絵を撮り、
タイアップバンドの似たアップテンポロックにのせかえ、
先方に渡してそれから作ってもらった。
音楽事務所はメロウなバラードを、次のこのバンドの販売戦略にしていた。
それを僕が主題の為にねじ曲げたのだ。
かのバンドの戦略に幸福だったかどうかは分からないが、
それが成功だったと、風魔のオープニングを見れば見るほど分かるだろう。
(残念ながら歌詞にタッチは出来なかったので、
曲調と絵のイメージをコントロール出来たに留まる)

エンディングはもっと自由権があって、
スローバラードであること、ハモリを活かしたもの、
絆に関する内容を指定できた。
(姫子から小次郎への片思いの歌詞も仮に僕が書いた。
内容は大きくは同じだ。残念ながら現存しない)

風魔のOPとEDはいまだに神扱いされるが、
それは、「ただしい主題歌」だったからだと言えるだろう。



あなたは脚本家であり、
言葉を使う達人でなければならない。

出来るなら、主題歌の歌詞ぐらい書けなければならない。
(ラピュタのエンディングを見よ!)
歌詞は書けなくてもいい。
大体このようなことを、歌詞にしてくださいという、
テーマを書けなければならない。

何故なら、テーマはあなたのもので、
皆のものだからだ。


ももクロとかに歌わせてんじゃねえぞ、水落!
(同期の監督なので、悪口勘弁!)



(ということで、
てんぐ探偵30話の特別主題歌が出来上がりました。
そのうち発表します)
posted by おおおかとしひこ at 15:07| Comment(0) | TrackBack(0) | 脚本論 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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