2015年03月11日

構成とは何をすることか

構成とはなにか。

何の次に何を持ってくるかを決めて、
それを一本の線にすることだ。

だから、アウトプットとしては、一本の線でしかない。
つまり構成とは、
あらゆる色々を、どう順番に並べたか、だ。


具体的資料を使って、議論する。


今僕は、小説「てんぐ探偵」の最初のほうのリライト構想に入っている。
(これを優先するか、七集を優先するかでちょっと迷っているが、
それはとりあえず置いておこう)

主に考えることは、エピソードの入れ替えである。
これは、前半部全体の構成を考えていることである。


このとき、「並べ替える要素が過不足ないこと」が、
構成を考える上での必要条件であることに気をつけたい。


多くの構想段階では、
これが全部揃っていないこと(つまり駒が足りないこと)、
これが多すぎること(複雑でややこしくて無駄があること)、
の二点に陥りやすい。

つまり、構成を練る前に、
構成に必要な駒が必要十分でないことになる。

「必要十分」を見極めることはきわめて難しく、
そこに理論的なものがあるかどうかも分からない。
僕はカンで決めている。


詳しくはブレイクシュナイダーの「save the cat!の法則」の、
ボードの項を見てもらうとして、
必要十分な駒が出そろったと仮定して、
構成を練るということは、以下のようなことだ。


例1: 構成の例1.pdf
(相変わらず汚い字でスイマセン)


これは、第一集から第三集までの15話ぶんの順番を入れ替えるために、
僕が考えるためにつくったボードである。

道具立てはたいしてことなくて、
付箋をテーブルに貼ってははがし、入れ替えを試すのである。
テーブルに貼ったままだと迷惑なので、
A3の紙に一次保存してスキャナでA4に縮小したものだ。
どこにでもある、オフィス用具しか使っていないことに注意されたい。


実は、このボードに書いてある「要素」が重要で、
僕は以下のことを考えるために、
付箋にこれらの情報を書いている。


タイトル:その集で最も出来のいいエピソードが、集のタイトルになるべきだ。
第一集は第一話のタイトルがそのまま集のタイトルになるだろう。
原則的には5話めが最も出来が良く、それが集のタイトルになりたい。
第一話と、第15話の第一ターニングポイントは固定で考える。

心の闇:分かりやすい心の闇からはじまって、心の闇とはこういうこと、
という基本的理解に達し、それから徐々に応用的な心の闇へすすむべきである。

宿主:取り憑かれるのは誰か。○で囲んだのは身内。
シンイチの身近にいる人からはじめ、世界を拡大していくべきだ。

主な重要エピソード:妖怪退治以外に、特筆すべきもの。
これも、身近な世界から応用的な世界へ拡大して行くべきである。
また、大天狗が各集に一回は、登場していたい。

宿主の性別や年齢:かぶりや繰り返しがないように。

ハッピーエンドかビターエンドか:バランスや流れを考える。
この流れが基本的には基調になる流れになる筈。

老人の死「さみしい」と犬の死「アンドゥ」をハッピーエンドの中にどう混ぜるか。
ネムカケの失恋「ゴリ押し」と現実の厳しさを知る「上から目線」をどう配置するか。


その集内でのバランス:一本目の話で重すぎないような入り方で。
各集を読むときは、前の集から時間が空いていることを想像して、
基本的な設定が分かる話からはじめるべき。などなど。

あることがあることを前提としている:
大天狗のねじる力で過去へ→大天狗再びねじる力で架空のファイト
→シンイチのねじる力で過去の空き地へ
ミヨの引きこもりの理由のひとつに、ピアノの少女のことがあること
ミヨの引きこもり→兄の引きこもり
ネムカケの失恋→ミヨの話、などなどが、順番が入れ替わってしまうと前提が崩れる。


これらの絡み合った要素を、デジタルでは整理しきれないと思って、
アナログ的(一覧性、一望性の強み)な整理をしたほうがよいと思って、
カードで並び替えを試したのである。

ちなみに、ナンバリングだけでいうと、
旧:1 2 3 4 5 / 6 7 8 9 10 / 11 12 13 14 15話の話を、
新:1 2 4 6 3 / 5 9 12 13 8 / 14 7 11 10 15になるように並び替えてある。
最初と最後以外、原型を留めていない並び替えである。

(もし暇なら並び替えを試してみて、どのような流れに変わるかを実感するといいだろう)


書いているときは、
各エピソードのこれらの要素の構成的順番までは完璧に考えられていない。
なんとなくこうかな、という思いはあるけど、
最初から計画され、読みやすいように整理されていた訳ではない。
書きながら分かったこともあるし。


なので、書き終えたあとにこのように整理し直すのだ。

これが構成を練ることだ。


その為には、各要素がどのようなものがあるのか、
それらの要素をどう並び替えるのがよいのか、その基準はなにか、
について、
いくつかの知見(方針)がないとだめだ。

今回の場合は、
「シンイチの身近な所から、見知らぬ人の事件に、徐々に移行して行く」
「心の闇が、基本的なものから応用的なものへ」
「各集のなかでのエピソードの強弱やハッピー/ビターの流れをつくる」
ことが、主な構成方針である。

それを実現するベストの「順番決め」が、構成である。


さらにこれらに要素が加味されると思い、書き込みを増やす。

例2: 構成の例2.pdf

こんどは、天狗の力がどうやって使われたかの順番もだ。
ねじる力を先に見せておいて、かくれみのを出し、葉団扇はキメのほうにする、
などである。
(「天狗と言えば葉団扇またはかくれみの」の常識と照らし合わせるためだ)

身内から外の人への関わり方のバランスも、書き込んでいる。




これらの条件を満たすように考えるということは、
つまり、「読んでて面白い順番」にすることである。
それが構成を決めるということに他ならない。

(今の所のベストがこれだけど、変わるかもしれない。
また、六集までの全話を、並び替える可能性も0ではない)


構成の要素が足りないとか、多いとか、言ってる場合ではないのだ。

必要十分な要素の並び替えでも、
これだけのパズルの正解を引かなければならないのだ。
勿論、基準が変われば並び替えの基準も変わる。

ちなみにこれまでの方針は、
インパクト重視のため、ビターものを早めに出し、シンイチの周囲のことはあとでもいい、
と考えていた。

ところが、「天狗の力の象徴=炎/反対の力=闇」という、
イコン的な図式が書いている途中で分かりやすく出来たため、
より王道的な順番にしたほうが良いと考えたのである。



すべては、
どの順番で読んだら、どういう面白さがあって、
どういう面白さがベストであるべきか、
という「方針」である。

つまり、それが流れだ。
感情がどのように流れるかは、構成、すなわち、
何のあとに何があって、という「順番」が決めるのである。


構成とは、したがって、
どういう感情の方針で、どういう順番で並べるかを決めることだ。
posted by おおおかとしひこ at 22:11| Comment(0) | TrackBack(0) | 脚本論 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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