最も原始的で強力なのは、
その流れを再現してみせること。
例えば「ロッキー」がどう面白いかについて、
あなたは分析してみせる必要はない。
真似をすればいいのだ。
ネタバレを避けて、おっと思うところまででよい。
例えばこうだ。
品のいい女性客でも罵詈雑言を浴びせるような、
公式戦ではない地下ボクシング試合。
イタリア人のロッキーは相手の反則で今日も負ける。
ファイトマネーの半分以上をプロモーターが取っていく。
約束と違うと文句を言うと、勝たないからだと言われる。
肘打ちでやられた顔は腫れている。氷で冷やせば治る筈だが、
心の傷は癒えそうにない。
ある日ジムへ行くと、長年使っていたロッカーに鍵が。
文句を言いに行くと、今日から若手の黒人ホープに使わせることにしたと。
お前は共同のロッカーを使えと言われる。
「引退を考えたことはあるか?」「ねえ」「考えろ」
ロッキーは負け犬の逆転劇である。
負け犬の状況に感情移入することが、
まず面白くなくてはならない。
感情移入している流れだからこそ、
ふってわいた世界戦のチャンスに懸ける気持ちが分かるからだ。
上で再現して見せたことを、
「主人公の逆境」と点にまとめることは簡単だ。
だがそれでは他人に伝えられない。
「主人公の逆境が面白いんだよ」と言っても、
「何が?」と聞かれるだけだろう。
この時点で、点の罠にはまっている。
地下ボクシングの肘打ちが、とか、
ロッカーの鍵が、とか、
エイドリアンが亀を売ってて、とかの、
点で答えることになってしまう。
そうではなく、ロッキーの逆境という一連の流れに我々はぐっと来た筈なのに。
ネタバレを避けるなら、
最初にぐっと来た、面白いと思った流れを再現して見せるのがよい。
そうすれば、点にまとめる愚を避けられる。
ドラマ風魔の小次郎はどう面白いの?
学園の危機を救うためにやって来た風魔の忍者が、
とにかくハチャメチャ。暴言吐くし姫に惚れちゃうし、
忍べと言ってるのに目立つし、女装は下手だし。
でも決める所は決めて、カッコイイんだこれが。
しかもさ、敵が八将軍召集したら、
こっちも風魔衆が終結してさ、集団の戦いになっていくんだよ。
勿論、ガワの面白さをこれに乗っけてもよい。
フィラデルフィアのロケーションとか、イタリア人のセクシーさとか、
サブキャラの濃さとか、音楽とか、生卵飲んで朝走るトレーニングとか。
イケメン大集合とか、安いけど頑張ってるアクションとか、
紫の長衣が翻るかっこよさとか、姫子蘭子カワイイとか、
音楽がいいとか、原作アレンジが効いてるとか。
しかしガワは点であり線ではない。
線の面白さを表現するのに、点で纏めてしまってはダメなのだ。
点の羅列ではなく、
流れの面白さを、流れのまま再現して見せるのが、
一番原始的で、それゆえ強い、脚本の面白さを表現する方法だ。
それを名詞にまとめたり、分析するのはあとでやればよい。
まず、どういう流れが面白かったのか、
再現して見せることだ。
(逆に、それ以外の流れのいい表現方法は、ないかも知れない)
2015年03月16日
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