2015年03月16日

線の面白さの表現の仕方

最も原始的で強力なのは、
その流れを再現してみせること。


例えば「ロッキー」がどう面白いかについて、
あなたは分析してみせる必要はない。
真似をすればいいのだ。

ネタバレを避けて、おっと思うところまででよい。
例えばこうだ。

品のいい女性客でも罵詈雑言を浴びせるような、
公式戦ではない地下ボクシング試合。
イタリア人のロッキーは相手の反則で今日も負ける。
ファイトマネーの半分以上をプロモーターが取っていく。
約束と違うと文句を言うと、勝たないからだと言われる。
肘打ちでやられた顔は腫れている。氷で冷やせば治る筈だが、
心の傷は癒えそうにない。
ある日ジムへ行くと、長年使っていたロッカーに鍵が。
文句を言いに行くと、今日から若手の黒人ホープに使わせることにしたと。
お前は共同のロッカーを使えと言われる。
「引退を考えたことはあるか?」「ねえ」「考えろ」


ロッキーは負け犬の逆転劇である。
負け犬の状況に感情移入することが、
まず面白くなくてはならない。

感情移入している流れだからこそ、
ふってわいた世界戦のチャンスに懸ける気持ちが分かるからだ。

上で再現して見せたことを、
「主人公の逆境」と点にまとめることは簡単だ。
だがそれでは他人に伝えられない。
「主人公の逆境が面白いんだよ」と言っても、
「何が?」と聞かれるだけだろう。
この時点で、点の罠にはまっている。
地下ボクシングの肘打ちが、とか、
ロッカーの鍵が、とか、
エイドリアンが亀を売ってて、とかの、
点で答えることになってしまう。
そうではなく、ロッキーの逆境という一連の流れに我々はぐっと来た筈なのに。

ネタバレを避けるなら、
最初にぐっと来た、面白いと思った流れを再現して見せるのがよい。
そうすれば、点にまとめる愚を避けられる。

ドラマ風魔の小次郎はどう面白いの?
学園の危機を救うためにやって来た風魔の忍者が、
とにかくハチャメチャ。暴言吐くし姫に惚れちゃうし、
忍べと言ってるのに目立つし、女装は下手だし。
でも決める所は決めて、カッコイイんだこれが。
しかもさ、敵が八将軍召集したら、
こっちも風魔衆が終結してさ、集団の戦いになっていくんだよ。


勿論、ガワの面白さをこれに乗っけてもよい。
フィラデルフィアのロケーションとか、イタリア人のセクシーさとか、
サブキャラの濃さとか、音楽とか、生卵飲んで朝走るトレーニングとか。

イケメン大集合とか、安いけど頑張ってるアクションとか、
紫の長衣が翻るかっこよさとか、姫子蘭子カワイイとか、
音楽がいいとか、原作アレンジが効いてるとか。


しかしガワは点であり線ではない。
線の面白さを表現するのに、点で纏めてしまってはダメなのだ。
点の羅列ではなく、
流れの面白さを、流れのまま再現して見せるのが、
一番原始的で、それゆえ強い、脚本の面白さを表現する方法だ。

それを名詞にまとめたり、分析するのはあとでやればよい。
まず、どういう流れが面白かったのか、
再現して見せることだ。

(逆に、それ以外の流れのいい表現方法は、ないかも知れない)
posted by おおおかとしひこ at 14:50| Comment(0) | TrackBack(0) | 脚本論 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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