ここを読んでいる人は、今、一日250人。
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他の人はまとめ読みか拾い読みをしているだろう。
脚本家そのものに興味はない、小説家漫画家志望もいるだろう。
いずれにせよ、ストーリーというものの謎にぶち当たり、
それをどうにかして解明し、自分のものにしたいと、
願う人たちだと思う。
僕は過去の自分に向けてこれを書いている。
十年前の俺が知っていれば、なんとか出来たかも知れないことだ。
逆に言えば、
僕が書いていることをマスターするには、十年かかるのだ。
なるべく即効性があるようなことも書いている。
身につくのに時間がかかるかも知れないが、
本質的なことについても書いている。
でもすぐにマスターは出来ないだろうとも思っている。
分かることと身につくことは違うからだ。
身につくのは、膨大な失敗体験と、ひとつの成功体験が必要だ。
ストーリーテリングは、
単に頭で理解することではなく、体で実行することだ。
例えば武術。
最初に習うだろう「構え」をマスターするのに、
どれくらいかかるだろう。5分?3日?
ちゃんとやった人ほど、「まあ十年だな」と言う筈だ。
中国武術では、立ち方十年という標語すらある。
構えには、体の使い方の基本が大体含まれている。
注意は10や20ではなく、50ぐらいの注意を守る必要がある。
脇に卵を挟むように、目は真っ直ぐ、遠くを見ながら近くを見る、
足は紙一枚床から浮くつもりで、とっさに金的をガード出来るように膝は開かない、
頭、肩、膝の向きを合わせる、などなどなど。
一々チェックして、鏡を見たりして、
無意識にスッと構えたときに、その注意が全て守られていなければならない。
構えは構えだけで完成ではない。
そこから状況に応じた体の動きが滞りなく無意識に出て、
はじめて構えは意味をなす。
その技の体系が体に入っていて、どれもが使える状態、
中間状態が構えだ。
つまり、構えの完成とは、一通り動けるようになることだ。
「身につける」とは、おおむねこういうことだと思う。
立ち姿だけ真似できてもしょうがないのだ。
何かの技やそこからの展開が出来ないと、
構えにも現れる。そこが弱点になるからだ。
満遍なく技を対応できるようにし、
なおかつ得意技が磨かれるまでには、
十年かかるというのは大袈裟ではないと思う。
ストーリーテリングも、大体同じである。
何かは出来るかも知れないけど、
どこかが上手くいかないことが、
中級者や初心者のときには死ぬほどある。
それを、どうなってでもなんとか落ちをつけられるようになるまでが、
十年の鍛練だ。
頭で理解することは重要だ。
分かっていないことでも出来ることはあるが、
理解することでそれがマスターに近づく。応用も効くようになる。
出来ないことはまず頭で理解し、
体で理解し、いつの間にか無意識に出るまで練習する必要がある。
武術の場合は、相手がいる。
痛かったか痛くなかったかを聞くことが出来る。
相手のすごい技を見て、それを身に受けることが出来る。
そうやって(保護つきの)実戦を積める。
ストーリーテリングの場合は、
自分一人なのが道に迷いやすい。
ついつい友達に聞くことで客観的な意見を求めるのだが、
その友達が客観性の基準になる、観客の平均像である保証はない。
(むしろ偏った意見だ)
複数の人の意見を聞いて平均像を得ようとしても、
本当に鋭かった指摘を、
一度しか言われなかったこととして流してしまう間違いを犯すことがある。
武術の技のように、相手に実効性があったかどうか、
とても分かりにくい。
僕の勧める方法は、たき火だ。
たき火を焚かなくても勿論いい。
あなたの考えた話を、観客(一人のほうが観察出来ていい)
に向かって最初から落ちまで「話す」のだ。
それが、多分一番自分の技が効いているかどうかを試す方法だと思う。
相手の反応がリアルタイムで分かるからだ。
文章では相手の空気感まで分からないだろう。
その相手の空気感こそが、
あなたの技が効いたかどうかの、目安になる。
「ちょっと面白い話を思いついたんだけどさ」
と誰かに言えば、「なになに?」と聞いてくるだろう。
五分でも十分でも三十分でも、その話をラストまで語って見せるとよい。
面白い話なら、最後まで聞いてくれる。
そうでもなければ、途中でメールが届けば見たりするだろう。
相手をどっぷりと巻き込む面白い話。
途中でメールが来てもそれを無視して、
どっぷりと世界に入り込む話。
その場を乱す何かがあったら、イライラしてそっちを排除したくなるくらい、
その先を知りたくなること。
それがあなたの技が完成した証拠だ。
そうなるためには、十年かかると思う。
最初から天才もいるかも知れないが、
武術と同じで、
全てに対応できる基本の構えに至るまでには、
その天才も十年かかると思う。
ちなみに、太極拳が何故ゆっくり動くか知ってる?
今でこそスポーツで、
ある動きをスローでやったりして理解を深めたりするでしょ。
それの、人類初の発明なんだぜ?
スロー再生のない時代に、
スローで再現して体に覚え込ませることを、
中国人は遥か昔に発明してたのだ。
実戦では普通のスピードで戦うけど、
その戦闘理論が独特で、それを体に染み込ませるためにスロー再生し続けているのだ。
ここで書いていることは、そんな感じ。
毎回毎回部分的なことを取り上げて、ゆっくりと解説して、
少しずつ体に染み込ませる感じだ。
勿論、読んでるだけでは耳年増だ。
(防具つきの)実戦と効果を試し、
時々防具なしの実戦経験を積むといいだろう。
ということで、十年書けるかどうかは、わかりません。
もうすぐ二周年なので、
添削スペシャルやろうと思います。
2015年03月17日
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