打ちきりで話題の、ルミネCMを見ることが出来た。
抗議されるも宜なるかな。
ストーリーそのものは普通だが、
CMとして最も大事なこと、
落ちが甘いことが最大の欠点だ。
落ちが甘いから、その前提に噛みつかれるのだ。
それは、クリエイターとしての未熟が原因である。
もう少し言うと、「自分好き」を客観的に見れていない。
明らかに、実体験の反映だろう。
どうでもいいと思っている(むしろむかつく)先輩に、
女として批評され、
女としてのプライドを傷つけられた、
という小エピソードが発想の原点だろう。
「最近ムカついた話」というタイトルならなかなかの及第点だ。
需要が違うし、というリアリティーある言葉は切れてると思う。
(そのあとの辞書的解説は不要だ。
需要、が分かりにくいと言われて急遽修正した傷痕が見える)
主人公とムカつく男のキャスティングもいい線だと思う。
問題はどこか。
「ムカついた」で終わってるところだ。
ムカついたから「変わらなくちゃ」に落ちるところがおかしい。
正確に言うと、
女が変わらなくちゃと思うことと、
ルミネがリニューアルする「変わる」をかけている。
しかしそれは伝わらず、
「女が変わらなくちゃと思ってルミネでおしゃれ服を買う」
という落ちだと誤解されている。
だから、落ちの割に頭が重くて、
その部分だけが残り、不快だと言われるのだ。
原因に戻ろう。
「あんな下らない男にバカにされるような、
女としてプライドが傷ついたこと」
によって、「今の生活を改善しよう」と思うことは、
順接である。
その延長線上に、「あなたも変わりたいでしょ?ルミネも変わるのよ!」
がないから問題なのだ。
それよりも、その延長線上に「ルミネで買い物」があるように見えるのだ。
問題はどこか。
ストーリーの行く末が落ちに向かってないことだ。
平たくいえば、ストーリーから無理矢理落ちに曲げているのである。
この曲げが、未熟の現れだ。
どうすればいいのか。
リニューアルオープンなら、
「私をリニューアルする」という話に、逆算して落とすべきである。
はい、復習。
物語の骨格は?動詞と目的。
リニューアルする、という動詞だ。
その目的は?
それが、ムカついたから、という、
目的を持たない感情だから駄目なのだ。
ここが曖昧なため、
「男に言われたから、男に認められるため、或いは見返すため」
という動機のほうが自然に思えて、
物語が誤解されているのである。
つまり、リニューアルすることの、
自然な動機をもってくればいい。
・世間が春みたいだから、私も春になりたい。
・新入社員は初々しい。私が初々しくなって、新鮮さを保ってもいいじゃないか。
・冬がいなくなったから、リニューアルしたくなった。
みたいな、ポジティブな動機にすればよいのである。
女としてのプライドが傷ついたとか、
ムカつく男に言われたからとか、
バカ女のほうがモテてるとか、
いちいち動機がネガティブなのだ。
だから不快だと言われるのだ。
勿論、ネガティブスタートハッピーエンドに持っていってもよい。
私の需要は、どこにあるのだろう。
必死で働いてる。徹夜だってしてる。
でもそれって、私を認めてほしいと、どこかで思っているのかも知れない。
バカ男「でもさ、需要が違うしさ」
(バカ男はアーパーバカ女と空騒ぎ)
私は変わる。
自分の需要ばかり気にしてる、詰まらない女にならないために。
ルミネも変わる。○月○日リニューアルオープン。
「需要」という新しいことばを使うならば、
ここまでセンターに持ってくるべきだ。
理想は、リニューアルオープンのコピーのなかにも需要を使うことだけど。
最初の問題に戻ろう。
結局は、この体験談を生かそうとした、
クリエイターの未熟が問題だ。
それは噛み砕くとどういうことか、
リニューアルオープンとどう関係するかを、
ストーリーの骨格として、考えきれていないのが問題だ。
だから、骨格が誤読されてしまうのだ。
CMとは、
テーマ縛り、結論縛り、落ち縛りのストーリーテリングだ。
特殊な才能が必要だ。
逆に、諸君のトレーニングになるかも知れないよ。
2015年03月21日
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