2015年03月29日

リライトの方法論

1. 思い入れをなくしたほどに、昔の作品をやるのがいい。
そうでないと目が曇るからである。それほど、客観性を得ることは難しい。
(書いてから発表までに恐ろしく時間がかかるのは、そのためだ)

2. まずメモを封じる。そして、一気読みをする。

出来のいい所や悪い所があるのは当然だ。
あなたのこれからやることは、これをいいものにすることだ。
この第一印象は、これからリライトする上での基準になる。
ここからは、少なくともよくすること。
メモを禁じたのは、小にとらわれ大を見落とすことを避ける為だ。

リライトも、書くこと同様、大きなことからはじめて細かくへ至るからだ。
まず大きなことから手をつける。テーマからである。



3. テーマを書き出してみる。

この話のテーマは何だろう。
このブログを読んでいる人は、以下のように書くだろう。

テーゼの形式で書く。
間接的に表現されていたことを、察して言葉にする。
主人公が学んだことなとはテーマの候補だ。
メインテーマがひとつとは限らない。
複数のテーマが絡み合っていることもある。
サブテーマもあるだろう。
それら全てを、テーゼの集合形で書いてみる。

あなたは、そのテーマを書いた物語を、
今の目の前にあるもので書けているだろうか。

第一印象のものを思いだそう。
OKなら、テーマに関するリライトは不要だ。
大抵はよくないので、テーマに関するリライトをすることになる。


4. テーマに関するリライト

テーマそのものを直すときと、直さずに進める場合がある。
テーマそのものを直すときについて。

言いたいことがテーマになっていて、
話がそれを表しきれていないなら、
話を直すか、テーマをその話が言っていることに修正すること。
それがリライトの方針決めだ。

どちらを選んでもよい。
大抵は、テーマを話の言っていることに近づけ、
その後話も直す、折衷案になる。

テーマ群が、なるべく矛盾するものになっていない方がいい。
一方で火が大事と言っておいて、
一方が水が大事と言うのはだめだ。
こういうときは、自然が大事(たとえば水や火)などのように、
包括したより大きなテーマになる。
大きすぎてぼやけることもあるので、
そういうときはどちらかを切り捨てた方がよい。
「そのことは今回は言わない」と決めることだ。

つまりは誇張と省略だ。
結局どういうことなのか、をよりまとまった形にするのだ。

テーマはより強くしてもいい。
柔らかく言っていた程度を、大袈裟に強く言ってもいい。
それがその話にとって良いかどうかも客観的に見よう。
あの第一印象を思い出し、
理想の最終形を思い描くとき、
どういう誇張と省略が、ベストかを考えよう。

メインテーマ以外のサブテーマについて。
メインテーマの方針が決まったら、
それを脇から強化しているかどうかを考える。

地球環境問題に関することがメインテーマなら、
人のエゴや優しさに関することは、
メインテーマの脇として必要なサブテーマになるだろう。

サブテーマをメインテーマにすることもありうる。
人のエゴや優しさに関することがメインテーマになるなら、
地球環境問題に関することは、サブテーマにならず、
ひとつのモチーフ程度にサイズダウンするかも知れない。

何がテーマになるかで、
サブテーマとのセットが決まるだろう。

新たにサブテーマを足すなら、サブプロットが必要だろう。
話としては面白いがサブテーマとしては必要ないものを、
切るのがとても惜しいときがある。
それをメインテーマとした別作品を書くか、
そのサブプロットのテーマを変えて、書き直すかを選ぶこと。
前者を外伝、スピンオフなどと言ったりする。

(「てんぐ探偵」では、
心の闇の名前を特定するとその倒しかたが分かる、
という初期の頃考えていた設定があり、
闇の名前を特定することが、メインプロットの前半部分を占めていた。
しかしテーマが、心の闇からの脱出に重きを置くようになり、
その人間ドラマをメインにするべきと考えたので、
シンイチには闇の名が分かる、という無理矢理設定をつけた。
30話妖怪不安のような話の構造は、
それをスピンオフとして再現して見せたものである。
このエピソードでは、より「心の闇は自分にもある」ということを強調している)


テーマ、サブテーマが確定したら、
今の話のどこをどう直せば、
それを言ったことになるか、というチェックをする。

ここからがいわゆるリライトだが、
実はリライト以前に、
テーマをリライトしなければいけないことがあることが現実だ。


人は、言いたいことすら確定できない生き物だ。
それを、よりちゃんと書き直すのだ。
書いてみて、はじめて自分の書きたいことが見えてきた、
ということは、
書く人生の上でよくあることだ。
書き続けることが、テーマを発見させるのだ。

プロはボーッとしてる時にテーマを拾わない。
書いてる最中で新しいテーマに気づく。

だからなにも書かない素人は、一生テーマを見つけることが出来ず、
書き続けるアマチュアやプロほど、
新しいテーマを見つけ続ける。
そのループが、書くという人生だ。

(手塚治虫は、アイデアだけならノート十冊はある、
と豪語した。あれほどの多作の人だ。捨てたアイデア、
採用しなかったアイデア、テーマが断片としてあったのだろう。
ブラックジャックでは、次の打ち合わせの為に、
三本プロットを書いてきて、どれが面白いか相談してきたという。
捨てられた二本は、アイデアノートゆきだ)


また、実はそれらを書き出さなくても、
我々は口にするだけでテーマを確定できるようになれる。
算盤を使わなくても算盤が出来るように。
初心者諸君は、ちゃんと手で書いてマスターすべし。

口で言うことのメリットは、
語られることが、頭のなかにきちんと出来上がるかどうかを、
文字を見ないで確認出来ることだ。
(映画は小説ではない。語られることは文字ではなく音声だから)

テーマが確定したら、具体的に話を直していこう。
つづく。
posted by おおおかとしひこ at 01:13| Comment(0) | TrackBack(0) | 脚本論 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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