これは女同士しか共感できないとか、
モテナイ男にしか分からないとか、
関西人にしかわからんやろこれとか、
日本人しか分からない感覚とか、
沖縄人しか分からない感覚とか、
極論すれば俺しか分からないものとか、
そういうものが沢山世の中にはある。
しかし、それをなるべくわかろうとする話と、
分からない人は見なくていいです、と拒否する話がある。
僕は、前者を書くべきだと思う。
どうして少女漫画を少年は読まないのか。
どうして少年漫画を読む少女がいるのか。
これを上手く解明している人はいるのか。
男と女は違うのだという話は沢山ある。
星占いは、性格の差を12に分類したものだ。
地方によってあまりにも習慣や考え方や、哲学すら違う、
というのは「県民ショー」が、
上手くバラエティー化している。
人と人は違う。
集団と集団も違う。
ある集団の中の人も、人によって違う。
その違いが、そもそも人間ドラマの原動力である。
人間ドラマとは、要するに、
違いを認める過程と、
その違いから和解に至るまでか、
否定しあう(殺しあう)までを、
描くことなのだ。
これを物語論の言葉でコンフリクトと呼ぶことは、
既に知っているだろう。
だとすると、
その違いや、その和解に至る痛みや、
和解の良さや、人の思いや、
殺したいほどの気持ちに、
我々は感情移入しなければならない。
女特有のことが描かれているなら、我々男も共感したい。
逆も真だろう。
関西人が東京に来て苦労する話なら、
関西人以外もその孤独感や文化の差に戸惑うさまを、理解したいだろう。
それを、分からないならいいです、
と切り捨ててはいけない。
なるべく分かるようにする。
それは感情移入の為である。
好きではない人に感情移入は可能である。
その人の事情を理解し、その人の本当の気持ちが分かったときだ。
(それが好ましい感情ならば同情に、
忌まわしい感情なら恐怖や憎しみになるだろう)
関西人が嫌いな人が、
自分の大事にしているもの、
例えば友人からの笑いを大事にせよという意味のプレゼントを、
東京の人にダサいと馬鹿にされ、
それを人前で見せなくなるシーンを見れば、
例え関西人が嫌いでも、「その人」には感情移入する。
そのプレゼントを堂々と人前に出すラストの為に、
笑いは凄いんだ、と周囲を変えていく話なら、
その先も惹き付けられていくだろう。
そして、笑いというものの素晴らしさを知るだろう。
あるいは、女特有の生理は、男は嫌いだ。
多分女も嫌いだろう。
しかし男が嫌いなのは、気分に法則性がないことなのだ。
女が生理なんだからしょうがないと逃げを打つのが嫌なのだ。
例えばそれを、
生理前の日の不安定を描き、
その不安定は生理のせいだったことを描き、
安定した日から反省するが一ヶ月後似たような失敗をして、
「それは私のせいではないが、私のせいである」
と認める女がいれば、
それに我々は感情移入出来るだろう。
我々に似たようなことはないが、
精神的に不安定なことで、安定から見たら失敗することは、
あるからだ。
感情移入は、自分と同じものを見つけたときに起こりやすい。
そして、人と人の分かり合いとは、
相手に分かるものを差し出すことからはじまる。
プレゼントはそれを形にしたもので、
理解はその最大のプレゼントだ。
つまり、「分からないならいいです」は、
コミュニケーション拒否なのである。
なるべく分かるように書くことは、
感情移入を促すことだ。
その時、拒否するよりも、多くの味方を作れるだろう。
一々説明しなければ分からないようなら、
説明が下手なのだ。
上手く一発で分かる説明を、つくるべきだ。
「スパイダーマン2」の冒頭部、
ピザのバイトをするシークエンスは完璧だ。
我々はピザ屋でバイトしたこともないし、
ヒーローをやったこともないが、
我々はピーターの気持ちを理解し、グッと感情移入出来る。
このような説明を出来ない、下手な人が、
それは○○にしか分からないから、
と観客を減らしているのである。
マーケティングは市場を縮小する。
マスコミュニケーションは、市場を拡大しなければならない。
物凄く上手く説明して、グッとこさせられればよいのだ。
説明上手は、
「理解しなければいけないたったひとつのこと」に、
絞る。
「それを認める限り、この話は成立する」に絞る。
これは何かに似ていないか。
物語における嘘のつきかたと、同じ構造をしている。
「ファンタジー世界には不思議な魔法がある」ことと、
構造的に同じなのだ。
物語のこのような構造に、
うまく「その人しか理解できないこと」を当てはめればいい、
ということが分かるだろう。
「これは女性しか分からない話かもねえ」と言う女が嫌いだ。
表現者として下手だからだ。
あなたは、上手くなろう。
2015年03月29日
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