2015年04月07日

構成の話:カードの並び替えから立ち上がってくるもの

先日の第一集〜三集の15話ぶんのリライトで、
構成ごと変えるために、
久しぶりにカードの並び替えをやった。

カードは慣れると頭の中で出来てしまうので、
最近あまり使ってなかったけど、
複雑なもののベストの並び替えを試すには優れた道具だ。

これをやったので思い出したことがある。
「カードに書かれていない要素を見つけることが、
並び替えの真の意義だ」ということだ。


以前にも書いたが、
今回の15話ぶんの並び替えの(当初の)目的は、
・妖怪「心の闇」を、基本的なものから応用的なものへ
・主人公シンイチの身近な(学校、家)ものから遠くへ
・取り憑かれる宿主の年齢や性別に偏りがないように
・一集あたりの大天狗の出現頻度の調整
・その集の五話目が、その集の代表作(集のタイトル)になる
 (つまり5、10、15話が、全体の流れになる)
が主な目的だった。
途中で、
・天狗の力が基本的な力から応用的な力に
という条件が加わった。

何だかんだで、バージョンは19になった。
(ちなみに以前ブログに貼り付けたのは、バージョン1だ)

その並び替えは、本当には何を試しているのだろう。



勿論、当初立てた目的のベストの解を探す、
という単純目的もある。(計算上62億通り)

ところが、並び替えをしているうちに、
「カードに書いていない要素」に気づくようになる。

このケースでは、
「シンイチへの感情移入の流れ」である。

妖怪の順番、エピソードの順番、内外や宿主のバランス、天狗の力の順番、
それ以外の、
言外の要素に、気づいたのだ。

元と比較すれば、
シンイチへの感情移入がスムーズになっている。
これは書き手からの目線で、
読み手からすれば、
より自然に世界に入れ、
シンイチと共にこの世界に入っているような気になっている。



カードの並び替えは、
当初の目的を果たすことは勿論だが、
「最初に気づいていなかった問題を炙り出す」
ことに有効なのだ。
これが問題の全てか?
と、解決しそうになる頃に、気づくようになるからだ。

当初の物理的要素の並び替えから、
それだけではない、感情移入の流れに気づき、
リライトの際には、
そのエピソードだけのリライトではなく、
「シリーズを通したシンイチへの感情移入の流れ」にも気を使って、
筆を入れ直している。

例えば第二話は、妖怪あとまわしに変更になった。
シンイチと母の関係よりも、
シンイチと内村先生の関係のほうが、
今後何回も使われるからである。
第一集は学校中心のエピソードが多いが、
一話だけ都会に出張する「誰か」を挟んでいる。
それは今後学校や町だけではなく、
あらゆる所にシンイチが出没するからだ。
町という狭い世界ではなく、都会全体のことを描くからである。

このような「具体的な、カードに書いていないこと」に
自分に気づかせるために、
カードの並び替えをするのだ、
ということは覚えていていいことだ。



カードの並び替えを試すとき、
当初並び替えをしようと思っていたことが、
並び替えられて解にたどり着き、
よかったよかったと思っていたとしたら、
あなたは、真の並び替えを経験していない。

カードに書いていなかった要素の流れに気づくことが、
カードの並び替えの効用だ。
posted by おおおかとしひこ at 13:08| Comment(0) | TrackBack(0) | 脚本論 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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