2015年04月10日

初心者むけの話:問題と解決と三幕構成

物語を、神の視点から眺めてみよう。

あるストーリーを、その登場人物の視点で眺めたり、
時々神の視点から見てみたりすることは、
あなたの中の物語的な感性を育てる。
結局それはどういうことなのか、という客観的な視点を持ったり、
その人の気持ちにガンはまりすることの、
両方の視座を同時に持っていることが、
書き手には重要だ。

ということで、物凄く遠くから見てみる。



物語とは何か。
最も遠い視点から見ると、
僕は問題と解決のペアのことだと考える。

何かの問題が起こり、色々あって、それが解決し、
二度とその問題に触れなくてもすむまでが、物語だ。

二度と触れなくてすむ、
という要素は大事だ。
まだ介入出来る余地のある状態のものは、
終わったとは言えない。
もう手を下しても変わらない、手を下す必要もない、
ことが、物語が終わったことを意味する。
(下手くそな人は、うまく終わらせられない。
種火を残してしまう)

最もポピュラーな問題とその解決は、
「人々に争いが起こったが、平定された」である。
「好きな人が出来て、結婚した」もある。
「犯罪が起こり、犯人がつかまった」もある。
「死にそうになったが、生き延びた」もある。
「悪に誘惑されたが、断ち切った」もある。
「悪に誘惑され、ひどい目にあった」もある。
他にも原型は沢山あるだろう。
結末には二種類ある。
ハッピーエンドとバッドエンドだ。

必ずしも死んで終わるのがバッドとは限らない。
マトリックス3は、ネオが死んで世界は平和になる。
必ずしもキスがハッピーエンドとは限らない。
ゴーンガールは嫁を助けた美談が地獄の始まりというバッドエンドだ。
ハッピーエンドとバッドエンドは、
形式ではなく、意味だ。
その物語がどういう意味で終わったかに関係がある。


さて。
問題の解決が、一人によって行われるとき、
それは物語になる。

なんとなく解決してしまうのは、物語ではない。

必ず、一人の人が解決する。
(その人が率いるチームでもよいが、
その人がキーマンであること)
その人を主人公と定義する。

物語は、一人によって解決される問題のことである。

複数の人や、様々な人の複合的なことや、
偶然で、問題が解決することは、世の中にはよくある。
たとえば第二次世界大戦の終結だ。
解決した主人公はいない。
(いないけど、我々は事件を物語的に納得したくなる性質があるため、
擬人化してものごとを見ようとする。
日本人にとって第二次大戦を終わらせたのは原爆とマッカーサーと、
擬人化されたアメリカだ)

たとえば糞映画「ハプニング」は、
謎の疫病が突然偶然によって解決する。
この糞ぶりは、主人公が解決していないことが原因だ。


物語は、
様々な「問題と解決」のうち、
「主人公によって解決されるもの」という、
部分集合だ。



さて。

主人公が、その問題解決のストーリーの中で、
「本格的に事件に介入してくる」ポイントはどこだろう。
三幕構成理論では、これを第一ターニングポイントと呼ぶ。
また、
主人公が、
「あとひとつ何かを解決すれば全てが解決する」ポイントはどこだろう。
これを、第二ターニングポイントという。

三幕構成理論は、
最初から第一ターニングポイントまでを第一幕、
第一ターニングポイントのあとから第二ターニングポイントまでを第二幕、
第二ターニングポイントのあとから最後までを第三幕と呼び、
2時間の映画を、
30分、60分、30分で構成するべきだ、
と考える理論だ。

これは西洋の伝統的な物語論と、
近代の映画の経験則から導かれた、
シド・フィールドが提唱した構成法だ。
それ以降、これは標準理論となった。
現在のハリウッド映画で、三幕構成をもっていないものは殆どない。

また、日本の映画は別の理論を持つ。
僕は詳しく研究していないのでなんとも言えないが、
古くは序破急や起承転結、近代はハコガキであろう。
しかし、物語の理論はきっと、才能だとして構築されなかった。
あるいは、似たような型の使い回しやパクりが、
普通に横行していたかも知れない。


僕はシド・フィールドの脚本論で最初に勉強したので、
僕自身その理論で脚本を書こうとするし、
このブログでもそれがベースになっている。


三幕構成は、神の視点から物語を見る方法論だ。
それは、脚本内の文脈、
その人のビビッドな気持ちや伏線や台詞の緊張や間などは、
全く違う視点である。

二つを同時に持つことが、
ストーリーテラーの基本だ。


砂かぶりの目の前から、地球を外から見る視点まで。
あなたは、いつも(執筆中でも、映画を見ている途中でも)、
移動できなければならない。

問題と解決と主人公。
第一ターニングポイントと第二ターニングポイントと、
三幕構成の尺。

多分一番引いた目線は、これらを見ることである。


殆どの初心者は、
ある映画を見てこれらのリストを作ることが出来ない。
DVDなどで、繰り返して見ることで、まず一番引いた目線で見ることをしてみよう。

名作を10本、20本見て、
問題は何か。
解決は何か。
主人公は誰で、何をしたか。
第一ターニングポイントで起こったこと。
第二ターニングポイントで起こったこと。
三幕構成の尺(これだけはDVDがないと分からないね。
でも僕は映画館にストップウォッチを持ち込んで勉強したこともあるぜ?)。
を、
リストにしてみることをオススメする。
そのようにして、
初心者は映画の構造を見る目を養うのだ。
posted by おおおかとしひこ at 14:24| Comment(0) | TrackBack(0) | 脚本論 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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