2015年04月11日

ジャケ買いしたくなるタイトル

キャッチーでジャケ買いしたくなるタイトルは、
それだけで魅力的なものである。

「限りなく透明に近いブルー」
「いつかギラギラする日」
「太陽を盗んだ男」
「欲望という名の電車」
「永遠も半ばを過ぎて」

など、タイトルだけでおっ、となるものは引きが強い。
(中身がどうかまでは、この際問わない。
真ん中の三本の映画は見たけど、太陽を盗んだ男しか良くないです)

こういうタイトルは、どうやって考え出すのだろう。


これらに共通するのは、
言葉と言葉の組み合わせだ。

しかも、通りのいい、
定番の言い方をまず考え、
その定番を裏切った、全然違うものを持ってくるとよい。

例えば上のものの例は、
このようにして思いついたかも知れない。


「限りなく透明に近いブルー」:

憂鬱:ブルー。これを主題に。
しかし「存在の耐えられない軽さ」のような、
曖昧で吹き飛びそうな感覚があったほうがいい。

摩周湖の記事:限りなく透明に近い、透明度の高い湖。

これだ。静かな水みたいなことから、静かなるブルーみたいなことを発想し、
色に対して全然違う修飾語をくっつけるべきと思い、
組み合わせてみた。


「いつかギラギラする日」:

たとえば、「いつか殺してやる日」みたいな、
「復活の日」「復讐の日」みたいな、
定番の表現があるとして、
そこに来る全然違う単語を考える。
ダンス、はしゃぐ、曇り空、トレーラー、旅、
などなどやってるときに、名詞じゃなくて、
何か形容詞的なものが来ると面白いと思い、
赤い、わくわくする、
キラキラするみたいなことから、ギラギラするにたどり着いたか。


「太陽を盗んだ男」:

「私のハートを盗んだ男」なんてのは、
当時の歌謡曲にはよくあった。
通り雨や待ちぼうけなんてのもあったね。
何を盗むと面白いか?と全然違うものを考えれば、
財布、家、国家、信条、土地、主役、などと考えてるうちに、
太陽にたどり着く可能性はある。


「欲望という名の電車」:

「○○という名の△△」の二つを全然違うものにするゲーム。
たとえば「幸福行きの電車」のような定番の表現があるから、
電車の行き先が人生の行き先になるのはありそうだ。
ということで、犯罪や浮気を意味しそうな言葉がいい。
裏通り、日陰、ギラギラ、なんてやってるうちに、
欲望という言葉は出てきそうだ。


「永遠も半ばを過ぎて」:

野球中継やゴルフやマラソンなどでの定番の表現、
後半に入りましたとか、
相撲でも「中入りを過ぎて」なんて言い方をする。
その真逆の概念、永遠という言葉にたどり着くのは、
そう難しくなさそうだ。




これらに共通するのは、
言葉の組み合わせが新しいことだ。
それだけでなく、
「定番の表現で来るもの」を予想させてからのずらし、
をわざと使っていることになる。

「AとB」だけではただの組み合わせなので、
「Aを予測させる定番表現」+「AじゃなくB」という組み合わせを使って、
意外性のコントラストを、
フラットに組み合わせを作るよりも強調しているのである。


勿論、このようにして作られたかどうかは分からない。
しかし、レシピはなんとなく再現できそうだ。


「これをどのようにして作ったのだろう」と考えることは、
いつか、「同じものを作れる」ことをマスターすることになる。
エンジニア的な発想かも知れないけど。



これらのタイトルの言葉の魅力は、
それが新しい概念を提出していることだ。

それが新しい物語、新しいテーマを予感させるからこそ、
魅力的に響くのである。

たとえばこれらがカクテルの名前だとしたら、
たかが酒に大袈裟、と思うかも知れない。
しかしこれが小説や映画の名前になっていることで、
「新しいタイプの物語を想像させること」が、
面白いのである。

「限りなく透明に近いブルー」「永遠も半ばを過ぎて」は読んでないので知らない。
「いつかギラギラする日」「欲望という名の電車」はタイトル倒れ。
「太陽を盗んだ男」はなかなかの面白さ。
(邦画では異色作)

結局物語の中身やテーマが、タイトルに負けがちだ。
平凡な物語やテーマを、気になるタイトルで買わせるための、
編集者の手腕だったりしてね。




実際のところ、
小説や映画は、中身が全く駄目でも、
買ってしまえば商売成立なので、
(本屋はその為に内容確認して買うか買わないかを決めていい、
という建前で、立ち読みをしてよいのだ。映画は無理だが)
いくらでも、タイトル詐欺は可能かも知れない。

ラノベの長いタイトルは、
「新しいタイプの物語」をそのタイトルで表現しているという段階では、
正統派のタイトルの付け方なのだ。
文法が独特なだけでね。


あと、これらのタイトルは、
「私はこういう新しいタイプの概念をいいと思う」という、
オシャレの満足感を刺激する。
「恋する惑星」なんてのもあったよね。
(原題:「重慶マンション」、つまり「ブダペストホテル」みたいな、
ある一定の場所で起こる複数の劇、みたいなことを意味するタイトル。
それにこの邦題をつけた人は、天才だ)

最近の映画の引きが弱いのは、
タイトルのせいかも知れないぜ。
(たいしたことない物語やテーマでも、
タイトルでちょっと良く出来る訳だから。
最近の配給のダメさは、そこだと思う。
逆にミニシアターブームは、その上手な人が何人かいたのだろう)



タイトルにはいくつかの付け方があると思う。
言葉と言葉の組み合わせのやり方だけでも、
もっと細かくあると思うが、
僕はそこまで研究出来ていない。

(「てんぐ探偵」のマヌケさ、
「炎の巨人と黒い闇」のテーマ性は、中々気に入っている。
オシャレ系ではないけれど)
posted by おおおかとしひこ at 09:54| Comment(0) | TrackBack(0) | 脚本論 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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