中盤の最も多いパターンのひとつだ。
これがハッキリしていることを、
焦点がハッキリしている、ということの定義にしてよいくらいだ。
逆に、
これがハッキリしてないもの、
途中で忘れてしまう(分からなくなってしまう)もの、
そもそもそれだ、と思えないもの(何で?の疑問がつく)は、
焦点がハッキリしていない。
そもそも、「○○をしなければならない」ことに、
必然性と火急性が必要だ。
一幕とは、それに感情移入させることが目的である。
主人公が、
どうしても、たとえ嫌でも、
自ら積極的に○○しなければならない、
その自然な理由と踏ん切りが描かれていないと、
これ以降どんな「○○の為には△△しなければならない」を描いても面白くない。
一幕約30分を使って作られた主人公の目的を、
センタークエスチョンという。
これを成し遂げる為に、これ以降の全てが存在するといっていい。
○○は、詳細な具体を持っていないことが多い。
あの子のハートをゲットする(ただし方法は不明)、
地球を救う(まだ具体的な最終形ではない)、
旅に出る(大まかな目的地はあるが道筋は不明)、
などのパターンだ。
逆に、二幕の中盤とは、
センタークエスチョンを成し遂げる為には、具体的にこれをしなければならない、
という「詳細を詰めていくことと、その実行」だとも言える。
たとえば、
「会社を設立する」ということをセンタークエスチョンにしてみよう。
具体的に何をするのか僕には良く分からない例をわざとあげている。
法律上の申請とか税金の話とか、
仕事の回転とか、
オフィスの不動産巡りとかが、
△△の具体になるだろうことは予測される。
その予測に対して、
具体的な△△を面白おかしく用意するのが、
面白い物語である。
例えばとても良い物件があるが、実は幽霊がでる。
その為には幽霊退治をしなければならない、
となると急にファンタジー方向になるし、
法律上の申請で虚偽が認められ、社会正義を質さなければならない、
などのハードな方向になるかも知れないし、
人集めの過程で「本当にやりたかったこと」に目覚める、
ヒューマン方向になるかも知れない。
どういう△△があるか、がジャンルだ。
わざと三つバラバラのジャンルの△△をあげてみた。
しかし異なるジャンルが混ざっちゃダメだ、
ということを意味しない。
「それらが同時に起こっても構わない世界観」が、
一幕で作られていれば問題ない。
(ちょっとどんな話か思いつかないが、
霊感のある奴と法律に詳しい奴が会社を設立することになり、
本当にやりたかったことに目覚める話だろうか?)
つまり、一幕は、二幕で起こることの逆算で決まる。
もし幽霊退治がメインになるなら、霊感のことや妖怪バスターの世界を詳しく描いておくべきだし、
硬派な話なら一切不要だろう。
(ヒューマン方向は、実はどこにでもくっつけることが可能だ。
何故なら、我々は人間だからだ)
さて、
「○○の為には△△をしなければならない」ことになったとして、
「△△の為には□□をしなければならない」、
「□□の為には××をしなければならない」、
などのように、連鎖することがある。
(最終的に、××→□□→△△→○○、という連鎖的な実行シーンが来るだろう)
これを、僕は理屈の連鎖とか、一連の理屈などと呼ぶ。
ひらたく、一本のストーリーラインという言い方もある。
(ストーリーラインはいろんなものを含むので、
この限りではない)
映画では、2〜4本ぐらいのストーリーラインが必要という。
(検証していないので、一般的な説)
それぞれが関係しあったりすると、面白くなる。
上の例で言えば、
幽霊退治にはその幽霊の無念を晴らさなければならず、
無念で殺された現場にゆき、事実関係を洗うと、
弁護士の登記簿の虚偽問題と関係していた、などである。
それを辿るうちに、やりたいことに気づかされた小学校の恩師にたどり着く、
などだ。
同時進行しているストーリーラインがこのように関係すると、
話は面白くなって行く。
ストーリーラインが一本道のものもある。
短編などだ。
ストーリーラインの絡みあいで面白く出来ないため、
「○○の為には△△しなければならない」
「△△の為には、□□が必要」の、
□□を、とても意外なものにしたりするとよい。
なんで?と思わせて、その真の意図が分かったとき、
なるほど!と言うものがあることが必要だ。
たとえば、ベストキッドのペンキ塗り。
いじめっ子を倒すため、空手を教えて欲しいのに、
空手は教えて貰えずペンキ塗りばかり。
ところがこれが、地味ながら技のトレーニングになっていたのだ!
という面白さ。
○○、△△、□□が、常識的な連鎖になっていない、
意外な連鎖の面白さだ。
一本道のストーリーラインを面白くするためには、
このような、予測できない連鎖の要素を入れるとよい。
ミスター味っ子とか、そんなんだらけだったような。
なんで?なるほど!の連鎖は、
物語以外の話、たとえばスピーチや科学論文でも使える。
結婚には三つの袋が必要です、なんて定番はこの型だし、
時間がゆっくり進む、なんてのは相対性理論を理解するための、
最も不思議な前ふりのひとつだろう。
ショートショートの名手は、
この意外なものの組み合わせが上手なのではないかな、
と仮説を立てている。
Oヘンリーの「賢者の贈り物」のパターンや、
「病気の子供がいるのは、嘘だった→良かった、病気の子供はいないんだ」
のパターン、
星新一や「世にも奇妙な物語」やいくつかの怪談は、
そのようないい例だと思う。
(詳しく分析していないので、ヒントまでに)
また、ひとつのストーリーラインが分岐するのを、
スプレッドという。
「○○をするためには、ABCを集めよ」というパターンだ。
スプレッドについては過去記事でも述べているので参照されたい。
僕がノーラン映画が嫌いなのは、
それぞれのストーリーラインがスプレッド構造になっていて、
しかもストーリーラインがバラバラで混ざりあわないことだ。
たとえば「インターステラー」では、
前ふり→スプレッド→落ち(冒頭の伏線の回収)という構造で、
スプレッドが落ちに関係ないのが、詰まらなかった。
逆に、ノーランは一本道のストーリーラインを、
まともに描いたことが一度もないのではないか?
一本道だと詰まらないから、複数のカットバックで誤魔化しているのではないか?
という邪推すら成り立つ。
一番面白い「メメント」は、順逆だから面白いわけで、
順に一本道を辿ると、詰まらない話だろう。
逆に、「バタフライエフェクト」は、
同じ雛形を何度も経験して別の結末へたどり着こうとする、
スプレッドに見せかけた一本道構造の傑作だ。
(僕はラストが凄く好きだ。
「天国から来たチャンピオン」のラストも好きだけど)
「○○の為には△△の必要がある」の面白さが、
あなたの物語の中盤の骨格である。
その上に、人の気持ちやドラマがあるのだ。
2015年04月11日
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