どれくらい天気のことを意識して、
脚本を書いているだろう。
デフォルトは晴れだろう。きっと。
しかし日本の天気はそんなに晴れない。
例えばCMでは、100%といっていいぐらい、
いい天気の晴れを狙う。
明るくて、スカッとするイメージだ。
雨が降るジメジメの中で全部行われることはまずない。
(梅雨時の部屋干し、とか、
雨の日のブレーキとか、特殊な文脈がない限り)
それは、CMというものの持つ性質だ。
CMでは天候予備といって、撮影日が1日でも2日用意し、
直前に晴れる日を撮影日に決定する。
それぐらい、晴れを狙う。
ところが、映画やドラマには、
わざと曇ったり、雨を狙うことがある。
それは大抵主人公の気持ちに連動するシーンが多い。
或いはストーリー上の必然性もある。
ドラキュラもので、必死に外に出たら雨、なんて絶望シーンとか。
曇りや雨は、晴れを表とすれば、裏の関係にある。
物語は、表一辺倒ではなく裏もある。
裏表の使い分けが出来る人が、
ストーリーテリングのうまい人だ。
ところで、以前も書いたかも知れないが、
天気予報上、晴れる確率は6割しかない。
撮影が30日なら、18日しか晴れない。
30日晴れたいなら、50日間の撮影スケジュールを組まなくてはならない。
実際のところ、映画は屋外ばかりではない、
室内シーンがあるので、
雨の日は室内シーンを撮ったりして晴れの日を稼ぐことが多い。
しかしもし屋外シーンばかりの物語なら、
雨は撮影休みにするとしても、
4割は曇りシーンになることに、
あなたは妥協しなければならないことを意味している。
つまり、
あなたの物語の中で、
どうしても晴れたいシーンを決めて、
曇りの日はその妥協シーンを撮らなければならないことを意味する。
日本映画がどうもしみったれた感じが抜けないのは、
この4割の曇りのせいである。
何故なら、映画王国ハリウッドは、
元々砂漠だから、100%晴れるからだ。
僕はハリウッドで撮影したことは一回だけあるが、
天候予備がスケジュールになくて、驚いたことがある。
元々砂漠で、なんてロサンゼルスの成り立ちを解説されて、
へえ、と思ったことがある。
アメリカ映画が陽気なのは、
実は毎日ピーカン(雲ひとつない青空をさす業界用語)
だからなのだ。
トップ光(真上から来る南中前後の光。影が強いのでライティングは難しい)
の間は室内を撮り、
斜光の時間帯は外で撮る、
つまり、外→中→外、という撮影スケジュールを見たこともある。
彼らにとっては、明るすぎるぐらいだ。
一方、日本の天気でピーカンってどれくらいあるのかね。
晴れてたって雲は湧く。
体育の日とか子供の日みたいな、ピーカンって一割ないかも知れないね。
「ライティングは薄曇りで繋ぐ」という伝承が証明技師の間であるようだ。
ピーカン前提で撮影していても、途中で雲が湧いてきて、
シーンの前半と後半で色や光が変わることが多いので、
ピーカンでも、薄曇りのライティングを作るのだそうである。
ということで、日本映画はスカッとしないライティングばかりなのかも知れない。
(言い方を変えれば、しっとりしている。
例えばロンドンが舞台になる映画は同じ感覚だろう。
そういう意味でイギリス映画には我々は惹かれる。
地中海は気候がいいから、スペインやイタリアの映画はまたピーカンだ)
天気なんて21世紀には関係ないぜ、
と思ってても、地球は天気優先だ。
映画撮影には関係する。
ということで、最近タレントをグリーンバックで撮影して、
背景を晴れの日まで待って撮って合成するCMも増えてきた。
なんだか嘘っぽいのは、そういうことだ。
あなたの物語は、晴れてるのか?曇ってるのか?
どこで晴れてて、どこで曇ってるのか?
(極端な例では、「今、会いにいきます」は殆ど雨の日の話)
そういうことが、リアリティーを生むこともある。
北国の話になれば、雪の調子が物語に関係することもあるだろう。
例えば第一稿からそこまでの精度は望めないから、
改稿途中に、
そのようなリアリティーで陰影をつけていくことは、
とても良いかも知れない。
2015年04月14日
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