2015年04月14日

同調すること3:同調、共感、感情移入

同調、共感、感情移入を分けて考えよう。


同調は、その人の感情や、行動に、自分がシンクロしていること。

これは条件反射を含む。
例えば大きな演劇場などで、
多くの観客が拍手をする場面を考えよう。
最初バラバラの音だった拍手が、
段々手拍子が揃っていく瞬間に立ち会ったことはあるだろうか。

これはなぜ起こるかというと、
我々の反射だと思う。
群れとして生きる動物の、DNAかどこかに入っている機能だ。
祭りの一体感や高揚感は、この全員が同調する気持ちよさにある。
全体主義はこうやって起こる。

全体主義は気持ちいい。それは我々は群れとして生きる動物だからだ。
渋谷で日本サッカー戦後大騒ぎが起こるのも、全体主義だ。
頑張れニッポンも全体主義だ。
全体主義は気持ちいい。
それは高揚感を伴う。理由はない。DNAといったのはそういうことだ。

全体主義は個が消える。
個々の憂いや心配事はとりあえず忘れる。
全体の喜びが個々の喜びになる。

全体主義は、
上手く使えば個々の幸せに還元される共同体をつくれるし、
(原始共同体や、ある種の新興宗教)
悪く利用すればナチズムにもなる。
自分個人の為に全体主義を利用する者を支配者といい、
それは普通悪のことである。

僕は幼稚園の頃、お遊戯を絶対しない子供だった。
音楽に合わせて動きを強制されることに、恐怖を感じた。
もっというと、それが楽しいから、という全体主義に恐怖を感じた。
もっというと、それで個々の個性を消していることに、恐怖を感じた。
その思考停止に誰も気づいてないことに、恐怖を感じた。
(実はこのへんは心の闇のネタだと思っているのだが、
まだ上手く話に結び付かない。妖怪「同調圧力」?)
同調のメリットより、デメリットを感じ取っていた子供だったのだろう。

同じ理由で、僕は全社忘年会に一度も出たことがない。
同調の拒否を排斥するのが、いじめである。
(妖怪「なかまはずれ」ではそこまで描けなかったが、
このテーマは八集、妖怪「スケープゴート」で書くつもりだ)


大分脱線してしまったが、
同調は、反射で起こる。
特に理由がなくても起こすことができる。

前記事で挙げたように、
動物的なことは、同調を促しやすい。
リズム的なもの(例えば拍手。ラッスンゴレライもそう)、
音楽的なもの、
食べ物を食べる、
セックスなどだ。
(三大欲のひとつ、睡眠欲は映画では描かれない。
寝ちゃうからね!「ツリーオブライフ」は人類初の睡眠欲を描いた映画だ、
という高度な批評でもしてみるか)

何故AVを見るとき、男優の射精の瞬間に我々の射精の瞬間を合わせるのか。
そうすると気持ちいいからである。
(そうしないと気持ち悪いからでもある)
それは、同調である。手拍子と同じだ。

音楽PVでは、リズムに合わせたカット割は基本だ。
それは、リズムに同調することが気持ちいいからだ。


同調のうち、
感情に同調することを、感情移入と言うのだろうか。
まだ足りない。
感情移入は、更に深い感情だ。

泣いてる人を見て悲しくなったり、
嬉しそうな人を見て嬉しい気分になったりするのは、
単発の感情の同調であり、感情移入ではない。
(多くのダメCMはこの段階で止まっている)

感情移入とは、点でなく線である。
むしろ線以上の全体だ。
その人に感情移入すると、
その人の全てと自分の全てが同一になるのだ。
点の同調以上の、
完全シンクロが、感情移入だ。


共感と同調は似ている。

共感は、相手に、自分の中と似たものを見つけると起こる。
あるあるの感情だ。
逆に、共感は自分の狭い範囲の知識でしか起こらない。
相手に起こる様々なことに入るのではなく、
自分にもそういう部分がある、という、
自分側の感情のことである。
原因が違うが、
結果的に、自分と相手が同調しているように見える。

同調や感情移入は、自分を相手に合わせることだが、
共感は自分を変形させない。
(勿論、共感することで心がひらき、
自分の変形の警戒を解くことは、よくある)


感情移入は高度な同調だ。
それを成し遂げることが、物語の理想であり愉しみだ。
これについて、次回もう少し詳しく掘ってゆく。



初心者向けの話をしようと思ってたら、
ものすごく深いところに来てしまいました。
感情移入について、さらに深みへいきます。
posted by おおおかとしひこ at 14:23| Comment(0) | TrackBack(0) | 脚本論 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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