2015年04月17日

同調すること11:広い同調

なるべく広い人の同調を誘えるものが、
広く人に伝わるものである。


例えば先日爆死したと噂の、
まゆゆの主演ドラマを例に。(タイトルすら忘れた)

上司に黙って、
店のためにという美名の元に、
取り返しのつかない混乱を起こしたイベントを開催した、
店員に皆が同調出来るのだろうか。
(このあらすじはネットから拾ったもので、
僕は見てないので正しくないかも知れない。
そもそもオリジナルがどうであれ、
こう伝わることに問題があるのだが)

書店員という地味な職業に、
皆が皆、同調出来る訳がない。
僕は本屋は好きだが本があまり好きじゃない。
プラモ屋は好きだ。
だから、本屋そのものに同調出来ない。

これは、本屋という題材がダメなことを意味しない。

どんな人にも本屋と同調出来るように描け、
ということを意味している。

たとえば、働く女すべてが同調出来るような話に書き換えるとよい。
もっと言うと、働く人すべてが同調出来るような話に書き換えるとよい。

働く苦しみ、喜び、
なんのためにやっているのかという意味への葛藤、
理解の浅い上司、深い上司、間違ってる上司。
若い自分の間違い。学び。
こういう、働くことに共通のことを、
書店を例に描けばいいはずである。

(たとえば、「踊る大捜査線」は、警察を描いたのではなく、
組織に共通のことを書いて、働く人全員に同調された。
警察の人に同調されたかどうかはどうでもよく、
より広いことに同調されたことが重要)

描く力点は、本屋特有のディテールではなく、
本屋特有のディテールを通して、
働く人が同調出来ることを描くことだ。



ところがあらすじを見る限り、
上司に無断で自分の正しさを示し、
ケツを誰かに拭かせる、
ただの子供が主人公だ。
これに同調出来るのは子供だけではないだろうか。


反対を押しきって秘密裏に進めたのだが、
その上司にばれて妨害され、
計画がズタズタになるが、書店員ならではの機転で乗り切る、とか、
予想外の失敗で混乱するのだが、
本を売るとはどういうことかに関する、
先輩の指示で混乱はおさまり、
本を売るとはなんと素晴らしいことか、
と彼女が発見するなどの、
「働く人なら同調出来そうなこと」なら話は分かる。


さらに。
働く人以外にも同調出来るようにする。
本の素晴らしさについてだ。

どうして本は素晴らしいのか、
どうして本を売るのは素晴らしいのか、
そのことについて、
演説ではなく、プロットとして、描くことが大事だ。
そうすると、
本に触れたことのある、
全ての人々が同調出来るだろう。

本を紙媒体ではなく、「知識」として捉えれば、
マチはもっと広くなるはずだ。


伝わってきたあらすじを見る限り、
これらのことは達成出来ていない。

つまり、働く人や本に触れた人が同調出来る話ではなく、
子供が同調出来る話になっている。

だから爆死したのだ。



勿論、プロデューサーはそこまで深く考えていない。
AKBの次期センターのまゆゆに、
ドラマのキャリアを積んで欲しいことが目的で、
その単独主演は話題性があり、
書店員コスプレもピッタリだと思っただろう。
あとはそれに相応しい原作を探し、
ドラマ向けに改変すればよいと考えた筈だ。
本人の似合う役柄で、
単独主演の話題性で、同調する人を掴めると思ったのだ。
そこに同調した人は、6%という結果だ。

そしてこのプロデューサーは、
同じ愚を次に犯すだろう。
まゆゆは思ったほど数字を持ってなかった。
もっと数字を持っている主演を奪って来ようと。

犠牲者は誰か。まゆゆとスタッフだ。


数字は結果であり、原因ではない。

ドラマとは、
なるべく多くの人が同調したい物語のことで、
同調したい人が増えたとき、
それが数字に表れるだけのことである。

勿論、同調出来るだけの面白い出来が、
重要なのだけど。
(昨今その同調が出来上がる前にドラマが終わるぐらい、
予算が切り詰められて話数が減っている。
1クールって13話ですよね?8話とかあるけど、どういうこと?
昔は2クール4クールかけて同調を作ったんですけど?
つまり、テレビドラマの同調の仕組みが、
今作れないということもある)


マチを広く取ろう。
バッグとかの間口の広さも意味するし、
麻雀の当り牌の可能性の広さも意味する。

第一回は、かように難しい。

一見さんお断りなのか、
俺でも入っていける?なのか、
みんな慎重に見極める。
俺でも入っていけそう、ってなったら、
(それが面白い限り)次も見る。

マチの広さを、主演の持ってる数字で測定するから、
間違うのだ。

主演の持ってる数字が6%だとしても、
働く人や知識に触れたことのある人は、
もっともっと多い筈だ。

どうせ、知識とか働くことに本気で向き合ったドラマじゃなくて、
書店の眼鏡美人はエロいよね、それで働く女ドラマをやろうぜ、
ぐらいしか考えてないんでしょ?
だから爆死するんじゃない?
そんなのみんなもう分かってて、ばれてるよね?
爆死こみがプロレス、という高度な戦略でもないよね?


もし、本気で知識とか働くことに向き合ったドラマで、
それがこの末端に伝わってないのなら、
広報に問題があると思います。
posted by おおおかとしひこ at 12:58| Comment(0) | TrackBack(0) | 脚本論 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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