2015年04月19日

ただのトリック撮影。(「バードマン」評)

単なるびっくりワンカットショーやん。
単なるびっくりドラムソロやん。
単なるびっくり小道具の銃が本物で、やん。

他人の評は関係ないって言っといて、
ニューヨークタイムズに誉められたことが、
その落ちでいいのか?
ナプキンへのサインは捨ててよかったのか?
(これが「他人の評に右往左往することはバカらしい」という象徴の筈だが)

アンチハリウッド作品として、の受賞だろこれ?


ワンカット、全然すごくない。
そのへんのCMやPVのワンカット撮影のほうがちゃんとやってるよ。

ワンシーンの終わりと次のシーンの継ぎ目がバレバレ。
技術的にバレてる。

一番気になるのは、技術的にバレてることより、
前のシーンと後のシーンで、役者のテンションが変わってしまっていること。
モンタージュの単位のシーンではなく、
次のショットへの繋ぎの筈だから、
激しい感情のあとには、
その感情を引きずっているはずだ。
それが繋がっていないことが、
絵の繋ぎよりも気になった。

同じ問題は、ヒッチコックのワンカット映画「ロープ」でもあった。
イリニャトゥは、ロープを見てこの欠点に気づかなかったのか。
(観客のストーリーへの乗りを、カメラの移動するまで待つことで、
ダメにしているのもある)

今の技術ならプレイバックしてから、撮影をはじめることだって可能だ。
それをしていない。
或いは、数テイク撮って、編集で選ぼうとしている。
それがダメだ。
ワンカットは、あくまで一回限りの体験にしなければならない。
気持ちが繋がっていないのは、
ハサミが入っているのと同じである。

例を挙げれば、
シーンとシーンの間を、「移動」で繋いでいる。
階段での上下、ドアのあけしめ、外に出たり、
その前後で、まるで前のシーンを忘れてしまったかのように、
役者のテンションがなっている所が散見された。
おいおい、ちゃんと振り付けろよ、と文句を言いたくなった。


ということで、
この映画はハサミの入った作品として扱う。

とするとだ。
あの生意気な俳優は、何故最後勃起してないの?
何故ジンを飲まないの?
俺の舞台だ、に従ったの?
娘とセックスしたあと、どうなったの?
何のために出てきたん?
日焼けマシンは役のために本当にいるの?
専門的に言うと、サブプロットが、
テーマのサブ問題になってないんすわ。

さて、テーマの話をしよう。
他人の評は気にするな?
下らない映画へのアンチテーゼが、スーパーリアリズムで、
それが鼻を銃で打つこと?
子供っぽ過ぎないか?
娘と一緒にいれなかったことへの昇華は、
作品の批評的成功で良かったの?

モヤモヤが作品の批評的成功で報われ、
心が自由になった、という表面的な話過ぎないか?
つまり、演劇もなめてるし、映画もなめてる作品に思えた。

僕は見ている途中、
あの超能力は、主人公の妄想だというミスリードにみせかけ、
ラストの弾丸を止めるという落ちかと思っていた。
それ以降超能力を失う話なのかと。
処女を失うと魔法が使えなくなる、
その代わり人間になる、という話なのかと、
ラストシーンに期待した。

ラスト、死のうが生きようが空を飛ぼうがどうでもいい。
彼の中で何も解決していないことが、脚本的問題だと思う。

CG全盛の今のハリウッドにカウンターを打つことが、
銃で鼻を打つこと?
馬鹿馬鹿しすぎね?




先程コメント返しにも書いたけど、
アンチハリウッド作品は、時々こうして賞を取る。
それは、この作品が素晴らしいからではなく、
アンチハリウッドを主張するのに、御輿に担ぎ上げやすいからだ。
みんなハリウッドに嫌気がさしているが、
どうやって倒したらいいか分からず、
こうやってゲリラの新しいヘッドを探すだけしか出来ないのだ。
「桐島、部活やめるってよ」の受賞も、
アンチ東宝の結果だと思う。

作品として優れていることを期待しても、
アンチムーブメントは無駄だ。
ロックやパンクは作品として優れているのか、
という問いと同じである。
破壊衝動はいいけど、
破壊し尽くした先はどうするの?
ということは、妖怪「いい子」(リライト版)でも少し書いたことだ。

バードマンは、アンチハリウッド作品だ。
変わったトリック撮影、
実在の映画界への揶揄、
変わった音楽(アンチオーケストレーション)、
何もかもが、反抗こそ正義の様相である。

これを抜けた先には、何もないことが、
良く良くこの脚本を抽出してみると分かる。


何故妊娠がなかったのか?
あのサブプロットは、テーマに寄与した?
ネットを拒否することは、なんだったん?
ツイッター8万フォローがなんなん?
結局他人の評があればそれでいいの?

ワンカットのドキドキを優先して、
話が詰まらなくなってるよ。
posted by おおおかとしひこ at 01:40| Comment(0) | TrackBack(0) | 脚本論 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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