2015年04月24日

企画書は、脚本の先に書くかあとに書くか

理想は、面白い脚本を書き終え、
それが素晴らしいテーマであることを確認し、
新しく、面白いストーリーであり、
魅力的なガワを備えていることも確認してから、
それを劇的に売り込める作戦を、
作品とは別に練り込むことだ。

良いCMは、本体と別の良さを持つ。
本体のCMでありながら、本体と別の良さを主張して、
はじめてCMの中で目立ち、本体に手を伸ばさせる効果がある。

従って、本体があっての、売り込み戦略としての企画書を、
別に考えるのが理想だ。
本体に対して、数種類売り込み方があって、
使い分けてもいいぐらいだ。


だが、現実にはそうではない。


脚本を書く前に企画書があり、
稟議を通ってから、
はじめて書くことになるパターンが殆どだ。

これで、「稟議を通るための企画書を書く」という本末転倒が起こる。

画期的なものを作るための許可証を得るために、
画期的で売れることを、先に証明しなければならないジレンマだ。


今日本が抱えている問題だと思う。

それは売れるのか?という問いに、企画書は晒される。
そんなの作ってみないと分かんないじゃん、が本音だ。
出来上がりが全てなのに。
なのに、これは確実にヒットするのですよ、
と出来る前に言わなければならず、
複数の企画書がある場合、
「最も売れると、稟議する側が思う」企画書か通る。

従って、稟議を通すことがゴールになり、
本当に画期的なものを作ることがゴールではなくなる。

つまり、企画書で稟議を通すシステムは、
「稟議で認められる価値観に一番沿ったもの」を一番にし、
「誰もが思いつかなかった画期的なもの」を一番にしない。
そして、
「稟議に反対されそうな画期的なものを作るのは悪であり、
稟議に通る無難なものの中の競争」を産み出すことになる。
(僕はそのことを、ブナンザグレートと呼ぶ)

それは、
例えば、原作つきの横行や、
キャスティング先行で内容を吟味してないものの横行に結び付く。
フィニッシュより、稟議を通ることが勝負だからだ。

だから、○○を抑えました、がキラーコンテンツ扱いされる。
中身の良さが本当は勝負にも関わらず、だ。

ショウビジネスだけでなく、
例えばメーカーでもそれは起こっているだろう。

画期的なものを作りたければ、
大手の稟議ビジネスではなく、
ベンチャーの投資を待たなければならない時代になったのかも知れない。

トイプロブレムで結果を出し、
大きなビジネスモデルに投資して下さいと。


ということで、
企画書なんていくら書いても無駄だ。
先に作品を書いた方がいい。

どうせ脚本を書く際には、
ビジネス上様々な制約があるから、
直しが前提になる。

そこで、先に小説を書いて、
それを映画化する、というスタンスに立ったほうがいいかも知れない。

小説を書くことで、
もう売り込むべき画期的な中身は出来ている筈だからだ。

それから企画書を書き、
どこかのビジネス団体と噛み合うまでチャンスを待ち、
それに合わせて企画書を書き直したほうが早いかもだ。
どうせその時の時流で、脚本アレンジの方向は変わる。



本来なら、
ざっくりした企画書を書く→脚本へ開発する→制作稟議
→制作→ヒットすれば回収、損しても何回かやって打率がそこそこあれば成長、
というループが良いのだが、
今、1ループでヒットしないとダメだ、
という流れが、
本来の「打率で読むこと」を機能させていない。
打率100%を企画書稟議は求めるからだ。

映画の打率はかつて10%と言われた。
CMの打率はかつて30%と言われた。

それを恐ろしく100%に近づけるから、無理があるような気がしている。

クリエイティブには失敗がある前提で、
我々は企画書を書く。
しかし稟議する側は、これが100%成功する根拠を要求する。

そんなの作ってみなきゃわからんよ。ぶっちゃけ。



ということで、
もう先に作ってしまおう。

脚本形式でもよい。
小説形式なら、広い読者層がいる。
(小説として受けることと、映画脚本として良いことは別)

企画書を先に書くのはナンセンスだ。
通る企画書なんて、クリエイティブではない。
現に今、イミテイティブな作品ばかりではないか。


先に書け。まず画期的に面白い話を書け。

それから企画書を別にしたためろ。
どう売り込むかというサラリーマンと、面白いことを考える脳は別だ。
あなたは作家に徹し、売り込むビジネスをするスポークスマンを見つけてもよい。

そうでない限り、
もう日本で、時代を変える画期的に面白い作品は生まれないと思う。


ということで、
先に書いてるつもりなのだが、
さてどうなるやら。
posted by おおおかとしひこ at 15:20| Comment(0) | TrackBack(0) | 脚本論 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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