2015年04月27日

ビート4:プロットの具体化にビートを利用する

色々な段取りを、そのまま描いていても退屈だ。
知らない人が電車で切符を買う段取りを見ても、
外国の珍しい光景でない限り価値がない。

だがこれがヒロインとの出会いになった前の例では、
急にそのビートが面白くなった。
これはどういうことだろう。

プロットの進行に、ビートを利用しているのである。



プロットの状態では、
具体的な段取りを明記せずに話を進めることがある。
「大騒ぎになる」「人気者になる」「復讐を計画する」
などだ。
ひとつの動詞で記述されてはいるものの、
具体的にシナリオにしづらい部分があることが多い。

これにビートを利用するのである。

例えば「人気者になる」だと、
よくあるのは「メディアの拡散」のビートを利用すればいい。

誰かがツイッターで呟く→リツイでバズる→まとめにのる
→週刊誌→テレビ取材→ブーム→新聞や週刊誌で特集
→街頭インタビューで女子高生が「○○ヤバイ」→どこ行ってもファンがついてくる

などのモンタージュは容易に想像できるだろう。
細かい段取りを書いたが、どれかは省略できる。

コメディにも使える。
ツイッターで炎上→ホテルに「抱いて」という女が殺到し、
一列に並ばせる
などだ。
よくあるビートを利用し、コントに出来る。

また、「各ビートで面白いことがある」
ということを利用すれば、
様々なメディアの段階でひと騒動起こして、
ブームが加熱していく様を描ける。
マスコミの囲み取材で女インタビュアーにキスするとか、
空港で待ち構えた人々が将棋倒しになるとかだ。

(ハリウッドでよくあるのは、TIME誌の表紙になるとか、
有名なトークショーに出演するとか)

もっとも、これらはよく見るテンプレのようなものだから、
いくらでもみんなが使っているもので、
新鮮味を見いだすことは難しい。

だから、各ビートを丁寧に描くより、
面白いことを途中で起こさないのなら、一気に省略するといい。
たとえば「トッツィー」では彼女が人気俳優になる様が、
とても省略が効いて上手く描かれる。


「転校生が人気者に」「新入社員が人気者に」などでは、
学校でよくあるビート、会社でよくあるビートなどを利用できる。
下駄箱、朝礼、給食、体育の時間、
出勤、電話番、昼休み、社内ネットを使う、御中や御社などでの失敗、飲み会、
などでだ。

あるプロットを具体化するときに、
これらのビートを書き出し、
スプレッド的に考える。
どれが面白くなるだろうかと。

どれかひとつぐらいは面白く書けるから、
それを中心に、ビートを整理していくとよいだろう。
例えば給食で面白いエピソードを思いついたら、
下駄箱や体育の時間は棄てて(省略して)、
転校生が来た→(朝礼で大騒ぎ)→給食の時間で○○が起きて…
などのように具体を書くと良い。


日常生活には、
細かく見れば何万ものビートがある。
それを全部描いてもしょうがない。
面白いエピソードになるビートだけを抽出して、
話のビートにするのである。

話の進行のビート、
人物の魅力を見せるビート、
面白いエピソードのビート、
色々なビートがあり得るが、
理想は全部が同じビートで起こり、
次のビートでも全部が起こり、
それらが繋がって面白くなっていくことである。


下手くそな人は、
何も起こらないままビートを淡々と書いたり、
人物がただお喋りしてるだけのビートを書いたり、
エピソードとしては面白いがストーリー進行と関係ないビートを書いたりしている。
面白い話は、
それだけの為のビートなんてなくて、
全てが複合的に存在する。

プロットの具体化にビートを利用する。
各ビートで面白いエピソードをつくる。
全体の進行にそれがなっている。
そのように、抽象的なプロットから、
具体的な原稿にブレイクダウンするとよい。
posted by おおおかとしひこ at 08:13| Comment(0) | TrackBack(0) | 脚本論 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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