2015年04月27日

タイトルのつけかた

まだこれだ、という結論には達していない。
しかし、客観的になるひとつの方法がある。

山ほど並べたときに、タイトルを見ただけで、
それをパッと分類できるかどうか。


レンタルビデオの棚に行ってみよう。
見た映画がどれくらいあるか、人によるだろうけど、
ざっと棚を見たときに、
見たことのある名作は、
タイトルを見ただけで、ああ大体こういう話だったな、
とすっと思い出せる。

見たことがあっても、駄作だったり、
なんだかよく分からなかった作品は、
タイトルがごちゃごちゃしていたり、
内容を思い出せないタイトルだ。


未見の作品のタイトルを見たとき、
なんだか面白そう、と思うものと、
なんだかどうでも良さそう、というものは何が違うのか。

前者は、内容やジャンルがある程度想像できて、
しかもテーマもある程度想像できるものだと思う。

人は全く未知のものを見る気がしない。
ある程度道が見えていないと不安だ。
しかし人は勝手なもので、
全部見えていても興醒めだ。
見えているのだが、全部見えていないものが好きなのだ。

だから、タイトルが、
内容(テーマやジャンルやお楽しみポイント)が
ある程度想像できて、しかも想像の楽しみの余地が残っているものが、
恐らくいいタイトルなのだ。

「ルパン三世カリオストロの城」はいいタイトルだ。
「ロッキー」はよくない。
「バック・トゥ・ザ・フューチャー」はいまいちだ。
「未知との遭遇」はいいタイトルだ。(内容は微妙)
「E.T.」はよくない。(内容はよい)
「スターウォーズ」「スーパーマン」はいいタイトルだ。
「キックアス」はよくない。

ビリーワイルダーの映画はどれも傑作なのだが、
邦題に恵まれていない。
「アパートの鍵、貸します」「お熱いのがお好き」はいいが、
「サンセット大通り」「情婦」は全くよくない。

宮崎駿はどうだろう。
「風の谷のナウシカ」「天空の城ラピュタ」「魔女の宅急便」
「ハウルの動く城」はとてもよい。(ハウルは内容が詰まらないが)
「となりのトトロ」「もののけ姫」「千と千尋の神隠し」は当落線上。
「崖の上のポニョ」「紅の豚」「風立ちぬ」は、
想像できない分量が多いので、良くないタイトルだ。

勿論、一人の作家で一気通貫してみれば、
一気に知られたあとはわざと謎めいたタイトルの作品にしたくなったり、
などの変動がある程度あるだろうから、
あまりフェアな見方ではないのかも知れないが。


映画は、同時代性が高い文学でもあるから、
当時の文脈に左右される要素は沢山あるだろう。
だが時代を越えて残る作品は、
タイトルからある程度内容を想像できて、
しかも最後まで想像できないものがいいのではないかと思う。



また、タイトルだけが良くて、
内容がたいしたことのないものの特徴は、
タイトルが新しい概念を言い過ぎているタイプではないか?
「欲望という名の電車」「郵便配達は二度ベルを鳴らす」
「死刑台のエレベーター」「いつかギラギラする日」
「ノルウェイの森」「セックスと嘘とビデオテープ」
「この森で、天使はバスを降りた」「恋する惑星」などなど。
タイトルだけが突っ走っているというか。
歌のタイトルなら、内容の分量がタイトルに対して少ないから、
まだ成り立つこともある。
映画は圧倒的に内容勝負だから、タイトルの比重が少ない。
タイトル負けが起こりやすいと思う。


これは、シリーズのサブタイトルについてもそうだ。
たとえば風魔の小次郎のサブタイトルを並べてみよう。
1 小次郎、見参!
2 小さな友達
3 忍びの掟
4 白い羽の男
5 贋作
6 霧の中
7 忍び、青春す
8 甦る聖剣伝説
9 誠士館は投了するか?
10 告白
11 燃やせ命の炎を
12 決戦
13 あばよ風の中へ
タイトルから見れば、5、6、7、10、11、12あたりがいいタイトルだ。
そしてこれらは、当然人気エピソードである。
この法則さえ知ってれば、もっといいサブタイトルをつけれたものを。


なお現在進行中のてんぐ探偵のサブタイトルは、
そこまで気づかずに、過去につけてしまったものが多い。
妖怪とセットにしないと思い出せないものや、
妖怪だけで思い出せない話もあるのが、いまいちな所だな。
「炎の巨人と黒い闇」「先生の闇」「妬みは天下の回りもの」
「お前は誰か」あたりの、初期エピソードについては、
いいタイトルになっていると思う。
「半分よこせ!」や「少年は知っていた」などは、
タイトルありきで発想したものだ。


さて、いいタイトルだけではだめだ。
いいタイトルが名作なのは、
そのように内容がきちんと整理されているから、
名作なのだ。

つまりタイトルが内容を表し、
内容を要約するとタイトルになるように、
中身がよく整理されていることが、
名作の条件なのだ。

このブログ記事も、タイトルと内容の一致を心がけている。
上手くいったものは、内容も分かりやすい。
そうでもないときは、書く前に内容が整理されていないことが多い。
他山の石として、参考にされたい。



タイトルをずらりと並べよう。
他人のタイトルも自分のタイトルも。
面白そうなタイトルは、必ず光って見える。

それは、内容が想像できそうで、
でも最後まで想像しきれずに、
思わずその全貌を把握したくて、手を伸ばしたくなるものだ。
そしてその通りに内容が整理されていて、
見事にそのタイトルしかあり得ない内容の時、
それは名作になるのだ。
posted by おおおかとしひこ at 10:35| Comment(0) | TrackBack(0) | 脚本論 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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