2015年05月03日

脚本添削2015その4:オリジナリティー

この物語のオリジナリティーはどこか?

頭突きでしょう。
ラストの一発の為に全てが組み立てられています。
ドヤで出すタイトルにもそれは現れています。

つまり、これがすべての象徴にならなければなりません。
なんの?
テーマです。


ヘッドバットと頭が悪いことの掛詞である、
「ヘッド・バッド・ティーチャー」の意味が、
僕にはピンと来ませんでした。

頭突き教師にはなったけど、
頭の悪い教師ではないからです。
公男が頭が悪くて、頭突きでクリアしていく話なら、
ややこしいことはこれ一発で解決する話なら、
このタイトルは適切です。

さて、ここで僕は読解力があるので、
「虎が公男にとっての教師になる」という掛詞をも読み取ります。

「お互いがお互いの得意分野を教えることで、
お互いを幸せにする」というストーリーラインをです。

公男は勉強、虎は喧嘩。
頭の悪いヤクザと、頭突きをする教師の、掛詞がこのタイトルであると。

ところが、二幕のお楽しみポイントでこれはじっくり描かれませんでした。
二人の苦闘は、モンタージュの中に格納され、オフになってしまう。
ここをこそ、じっくり見たかったのに。
そしてそれは人間と人間のぶつかり合いになるから、
ついつい避けてしまったのです。
メアリースーはここにもいます。なるべく楽をしてしかも認められたい病が。


この物語の主人公が二人であるとすると、
変化をお互いに遂げるべきで、
しかもそれがこの話のテーマにならなければなりません。

虎は実は変化していません。
勉強をする過程で、何かを得ていません。
外的な大学合格は得たけど、内面の何かは変わっていません。
公男は(不完全ですが)頭突き一発の勇気を持てたという変化があります。

つまり、二人をタイトルには出来ないのです。
お互いがお互いのティーチャーになっていないのだから。


方法は二つ。
二人をちゃんと変化を描くダブル主人公にするか、
公男を主人公、虎を副主人公とするかです。

で、ようやく、この話のテーマ(つまり変化で示すもの)
って何だっけ?
というところにたどり着けるのです。


僕はこの話から、テーマを読み取れませんでした。

ある大変な事件に巻き込まれて、
それをどうにかしてクリアしたことは目撃したけど、
それがなんの意味があったのか、
全く分かりません。
ただのミッションクリアでしかない。

頭突きはあくまでそのお釣りレベルであって、
そもそもの問題、いじめへの対処が出来るようになること、
が全く描けてない。
「なめられないこと」という周囲の変化であり、
主人公の内面の変化ではないからです。

そこが、最初に、「心が震えない」と僕が言った部分です。


いじめを見てみぬふりをする気弱な教師は、
いかにして内面的な成長を遂げて、
いじめに対抗出来るようになるのか?

ケンカをマスターすることは、外的な条件です。
彼の内的なものは?

例えばいじめっ子アキラは、落ちこぼれだとしましょう。
彼にも教えられる自信がつく、
という変化はどうでしょう。
だってあの虎にすら教えられたんだもの。
どんな馬鹿生徒でも、根気があれば(或いは虎とのやり取りで得た何かがあれば)
教えることは出来る、と分かったら。


このように、内面的な変化は、それまであったことから、
「自然と訪れる」ものでないと、不自然です。

劇中では、一度も公男は頭突きの練習をしていない。
パンチをかわせることは学んだけど、
公男はもっと大事なこと、頭突きの何を習ったのか。

「一番大事なところで相手の一番大事な所へ飛び込むんだ」と、
虎が言ったとしましょう。
勿論これは比喩も含みです。

だから頭突きをしたあと(?)に、公男はアキラに言うのです。
「俺が勉強を教える、お前の分かってない所を調べよう」と。

そうすれば、
「一番大事なところで相手の一番大事な所へ飛び込む」
がテーマになるでしょう。



ということは、
それまでに受験の決着がついてないほうがよいはず。
ということで、高二の話に変えることにします。

頭突き事件のあと、皆が変わった。
アキラは勉強をしはじめ、成績が少しのび、
いじめはなくなり、
公男は堂々と授業をするようになった。
しかし最も変わったことは、
虎が転校生としてやってきたことだ。

みたいな落ちなら、変化を全て示せそうです。

となると、虎の目的も、あと二年で、と締め切りを修正するとしますか。




さあ、大分形になってきました。
タイトルは「頭はこう使う(仮)」にするとします。
勉強と頭突き、両方をかけているのは勿論です。

さて、プロットと三幕構成の組み直しに入りましょう。
posted by おおおかとしひこ at 01:13| Comment(0) | TrackBack(0) | 脚本論 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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