脚本添削の話の中で、ボトムポイントについて、
これまであまり書いてなかったなあ、と思い、
通常脚本論にて補足しておく。
ボトムポイントとは、どん底とも訳される。
主人公勝利のハッピーエンドから逆算すると、
その直前が最も敗北するべきだ。
夜明け前が最も暗い、の原理だ。
絶体絶命のピンチから、最高の勝利へかけ上がるから、
ハッピーエンドが気持ちいいのだ。
いわばこれはテクニックに過ぎない。
もうダメだ、死ぬかも知れない、
という作中のマックスのボトムポイントは、
通常第二ターニングポイント直前に置かれる。
三幕構成で、勝利と敗北に関するラインはこうだ。
一幕:
最初は敗北している。人生が上手くいっていない。
それを変えるチャンスが訪れる。
主人公は、冒険の危険と引き換えに、勝利を予感してその道を選ぶ。
(第一ターニングポイント)
二幕:
勝利したり敗北したり。
ミッドポイントで、大抵かりそめの勝利。
しかし、状況は悪化し、絶体絶命。(ここがどん底の敗北。ボトムポイント)
一筋の光明を見いだす。そのラストチャンスに賭ける。(逆転の予感)
(第二ターニングポイント)
三幕:
勝利と敗北のシーソーゲーム。
敗北かと思われたが、今までのことが何かの伏線になり、
偶然でなく必然で大逆転。(これまでのことに意味があったことを示す)
ハッピーエンドでめでたしめでたし。
ハリウッド映画は、実は殆どこのリズムで作られている。
ブレイク・シュナイダーのBS2でも、
ボトムポイントは「死の気配」と定義され、
75分近辺に出現するとされている。
これは、勝利を描く、ハリウッドならではのベタな方程式とも言える。
勿論、大ハッピーエンド以外には必要ないビートかも知れない。
(だからあまりこれまで触れてこなかった)
宇宙人に侵略される話なら、一端支配が全地球に及ぶこと。
裁判ものなら、負けが一端確定すること。
ラブストーリーなら、失恋が決定すること。
スポーツものなら、怪我やアクシデントやチームの仲違いやスポンサーの撤退で、
予選落ちや失格になってしまうこと。
どんな話でも、一番の悲劇が襲うのだ。
その最も悲しい所から、かけ上がるから盛り上がるのだ。
「トップガン」ではグースの死だ。
ドラマ「風魔の小次郎」では同期の麗羅の死だ。
「ロッキー」ではポーリーとの大喧嘩でチームが空中分解する。
「ルパン三世カリオストロの城」では、クラリスが結婚式に出される所である。
「ノッティングヒルの恋人」では、元サヤに戻られて失意の一年を過ごす、
有名なワンカットシーン。
ボトムポイント。絶体絶命。
ここからヒーローはかけ上がる。
トムクルーズは、ライバルアイスマンと組むことで。
小次郎は、風林火山の完成で。
ロッキーは、仲直りで。(ここちょっと弱いので、トレーニングモンタージュがそれに代わる)
ルパンは、結婚式を叩きこわし、報道カメラを偽札製造機へ誘導することで。
ヒューグラントは、再びイギリスロケに彼女が来ていると知り、会いに行くことで。
ちなみに公男は、虎に防御からの頭突きを習うことで。
さあ反撃の狼煙だ!
だから物語は面白いのだ!
主人公が自分だと、これが苦痛になるので、
なるべく避けようとする。
どん底も嫌だし、そこからかけ上がる勇気も力もないからだ。
必死になるのもめんどくさい。
しかし、主人公が他人だと、ここが一番燃える所になる。
大逆転の光明だからだ。
そしてあとは直接対決を制すれば、決着はつく。
この燃えは、ボトムポイントとペアなのである。
勿論、ここを組むのはとても難しい。腕の見せ所だ。
主人公が自分だと、なるべく起伏を避けて、
一定レベルに生活を保ちたくなる。
それは生物としての本能である。
しかしそれは、観客全ての詰まらない一定の日常でもある。
だからこそ観客はそれと違う、ドラマチックなものを見たいのだ。
ドラマチックとは、
「日常をなるべく一定に保とうとすることが、破綻したこと」
を言うのだ。
そんなこと、言われなくても分かっている筈なのに、
いざ書くとそうならない。一定に保とうとしてしまう。
それは、自分を主人公にしてしまうからだ。
他人、つまりある種の人形、自分でないものになら、
いくらでも無茶ぶり出来る。
人形なら、片手をもいだり火の中に入れることも出来る。
そしてその方が面白い。
それが物語である。
ボトムポイントは、その為のテクニックだ。
一回全落ちからの、逆転大勝利。
この最も落差のある所が、面白いのだ。
ここが上手い人が、最も上手いハッピーエンドを書くことが出来るだろう。
2015年05月04日
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