お待たせ致しました。
「ヘッド・バッド・ティーチャー」
をリライトした、
「ヤクザヘッド」です。
ヤクザヘッド.pdf
以下、少々の解説。
全ての伏線の回収具合は、
なかなか優秀だな、と自負しています。
跡目を継ぐプロポーズだけ、回収してませんが、明るい未来を感じるということで。
なんだか良くできた学園ドラマの、第一話のようでもありますね。
感触が昭和チックなのは、
元々の話が、気弱教師、ヤクザ、いじめ、頭突きと、
昭和チックな要素の為、直しようがない部分ですな。
ラストの決闘を河原じゃなく廃工場でやれば、
ちょっとは昭和じゃなくなる?
(クラブとか?)
ちょっと気に入ったので、例えば公男役を村井良大で、
15分の自主映画に出来ねえかな。
学校とヤクザの事務所が借りられたら、なんとかなる?
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この話が痛快に感じるのは、 テーマのお陰です。
なんだかんだ法を破ってますが、
「一番大事な所に、一番大事な所をぶち当てろ」が効いていて、
現代のうすら寒い閉塞感を、
なんだか風穴を開けてくれるような感じがするからです。
複雑化してお腹一杯になってる現代の感じを、
「シンプルな答えにする」というメインテーマが、
痛快にぶったぎった感じがするからです。
僕は常々、テーマを、
「必ずしも真実とは限らないが、
なんとなくみんなが真実だと証明してほしいこと」だと言っています。
今回のものも、それに該当すると思います。
だから、なんか言って欲しいことが書かれてあって、
これだよ、って思うような気がするのだと思います。
人間関係が複雑でなおかつ希薄でクールになりつつある中、
昭和チックなシンプルで熱くて濃い関係は、
ちょっと羨ましくもありますね。
ほらさんはこういうのが書きたかったのかどうかは分かりません。
なんと言っても、元原稿に、テーマらしきものが希薄だったから。
なんとなく、
「普段油断してだらだらやっているが、本気になると準備する。
つまり、普段も殺されるつもりで生きることで充実するのだ」
みたいな、「葉隠」の思想的なことを書こうとした気配はありますが、
あのワンシーンだけで、後にも先にも関係なかったので、
拾いようがありませんでした。
「練る」ということは、
ここまでやることを言うと思うのです。
次回は、何故原作つきの実写化が難しいのか、
この「練る」ということを例に議論を深めたく思います。
あと、テクニカルなこと。
プロットその2から比べても、少々構成が変わっています。
それは相変わらず大岡式白紙術、
「前の段階のものを頭に入れた段階で一端忘れ、
白紙に一からおもむろに書き始める」を使っているからです。
元の構成さえしっかり出来ていれば、
登場人物のビビッドな気持ちに寄り添えるので、
それぞれが言いたいタイミングで台詞が降りてくるのです。
結果、元のものより、人物が生き生きするのです。
虎も生き生きしてるし、公男もアキラも生き生きしています。
能動と受動の話。
公男は終始おどおどしています。気弱な男だからです。
しかし、本稿では受動的ではありません。
状況や相手に流されながらも、
自分のどうしても伝えたいことだけは、
ちゃんと伝えます。
それは、気弱だけど、どうしても叶えたい動機があるからです。
「いじめを止めたい」こと。
元原稿では、いじめの克服よりも、
自分が馬鹿にされないことのほうが配分が大きいような気がしました。
だから解決しても、あんまりスッキリしないのです。
我が身を顧みずに、自分の為でない行動をする人を、
人は必ず好きになるものです。
弱気だろうが不細工だろうが関係ない。
「行動がその人を表す」のです。
消極的だけど、能動的である。
しっかりした動機を持ち、その実現を渇望している。
だからこそ、虎と出会う前からは考えられなかった行動をするのです。
ビートの話。
卒業式とか合格発表とか、夏休みとか、
全く関係ない話になりましたね。
つまり、イベントをひとつも使わずに書けた証拠です。
あと、ちょっとしたテクニック。
第一ターニングポイント、家庭教師を引き受ける場面。
「一端断る」のがポイント。
でも思い直して引き返す。
これは、あらゆるターニングポイントに使える小技です。
プロポーズを一度は断ったヒロイン、でもまだ間に合うかな?とか、
よくあるパターンですよね。
脚本の教科書によく出てくる、
「刑事ジョンブック/目撃者」の第一ターニングポイントも、
このテクニックを使っています。
犯人に撃たれて大怪我を負い、
命からがらとある村に一泊した主人公の刑事が、
これ以上村に迷惑をかけられないと、車で村を出ます。
しかし運転もままならず、曲がるべき道をまっすぐ行って、
鳥小屋を壊して停止してしまうのです。
台詞の一切ない、絵だけで見せる、とても上手いターニングポイントです。
細かい所はこんなとこですか。
次回、議論を深めるため続きます。
2015年05月06日
この記事へのトラックバック
昨年の添削で指摘された部分を重点的に、
自分でも何度かリライトして応募したのですが、
まーまだまだ甘過ぎて、記事を読み進めるたびに
「なかなかいいのが書けたぞ」と思っていた最初の自分が
おぞましく思えました…
昨年、侍、河童、宇宙船と、自分が面白いと思う要素で書いたので、
今年はそれを封じて書いてみましたが、
ちんまりした話になってしまったなぁと自分でも思っていました。
それをここまで面白くできるのかー、と。
ここまで面白くできたはずなのに、
そこにたどり着けなかった自分を
ぶっとばしたいです。
独学だったらこの境地を知る事がなく、
ヌルく進んでしまうところ、
今年も思い切って応募してよかったです。
もうとにかく、めげずに書き続けます!
多くの人々の参考になったのではないかと。(アクセス解析からすると約50人ぐらいが全編読んでいます)
巷の脚本教室、作劇教室でここまで濃いことをやってるかどうかは知らないのですが、
過去の自分が欲しかったものを、やっているつもりです。
さて、その12あたりにも書きましたが、自分の揃えたモチーフが、果たして何を言おうとしていた(る)のか、
それを見極めるのは中々難しいことです。
その食材を使うと決めたら、それを限界値まで面白く出来るシェフの力と、
どんな食材をそもそも厨房に持ってくるかというハンターの力と、両方が必要なのではないでしょうか。
僕は長年CMをやっていたので、シェフとしての力はあるのかも知れないけど、ハンターの力を今まであまり鍛えていないことに気づきました。
創作とは、その両輪なのかも知れません。
今回は素材が定番だったので、シェフの腕の差が分かる食材だったかもですね。逆に僕は他のシェフのリライトも見てみたいものですな。
見たことない食材を選ぶのも、料理人として面白いことかと思います。
ハンター×シェフ。創作の方程式かも知れない。
虎のキャラが良いのは、外面と内面のギャップがあるからですね。
細かな点ですが、急ブレーキを踏んで後ろから追突されると、頭はフロントガラスではなく、ヘッドレストにぶつかります。(鞭打ちになるのはこれが原因)後ろの車に押された衝撃で前の物にぶつかると、頭はフロントガラスにぶつかります。
話はそれますが、ヤクザを主人公にして、恋人との恋愛成就のために、高校に入学する話も面白そう…と思ったら既に「マイ☆ボス マイ☆ヒーロー」というドラマがありました。ちえっ。
アキラが仮にヤクザの虎より強かったとしても、
そこまでは盛り上がらないかも。
肉体の危険と、内面の危険で言うと、人間ドラマは内面の危険にフォーカスすべきなので、
決闘に負けた時の内面的危険を設定しておくべきかもですね。
(これ負けたら引退とか、自分の信念が証明できずに、否定される危険をひねり出すべき)
僕のリライトが最適解ではないと思うので、
色々なバージョンがあっていいと思います。
塩さんも是非リライトに挑戦してはいかがでしょう。
マイボスマイヒーローはそんな話でしたか。そこに感情移入出来るならば、そのネタを15分におさめるのもいいかもです。
結局、そのようなディテールはテーマに左右されるので、
テーマ次第なのですが。