2015年05月15日

切り返しというラリー

前記事で、会話をテニスのラリーにたとえた。
会話を書くのが下手な人は、
このラリーを意識するといいのかも知れない。


AとB二人が会話するとしよう。
会話を書くのが下手な人は、
ラリーを最初からするつもりで書いていない。

「やあこんにちわ」
「こんにちわ」
「今日は暑いですね」
「30度いくんですって」
「…(話すことがない)」

ラリーを最初からするつもりなら、会話は続く。
Aは告白をしたい。(目的がある)
Bはトイレにいきたい。(目的がある)

「どうしても、言いたいことがある」
「何?今じゃなきゃダメ?」
「今だ。今日だ」
「何?はやく!」
「あの、えっと、話せば長くなるかも知れないけど、半年前にさ、」
「もうちょっと手短にして?」
「じゃ、はい、言います。…あ、どうしよう」
「はやくっつってんだろ!」

これがラリーである。
あと10ターンは続けられると思う。
例えばこのあと、どうしてもトイレに急ぎ、
トイレのドア越しに告白し、
乙姫でかきけされておしまい、
なんて落ちまで行くことが出来るだろう。


ラリーとは何か。
目的があることだ。
一人ではなく、二人に、別の目的があることだ。

一人にしか目的がないとしても、ラリーは続かない。

「あの、話があるんですが」
「なに?」
「ずっと前から好きでした」
「ありがとう。でもごめんなさい」
「…(次何を言えばいいのか分からない)」

更に告白を続け、ストーカー化し、
警察に捕まってもよいだろう。
しかし、一方に目的があり、一方にはないとすると、
会話は一方的になるのである。

それが一人称的ということだ。

「今日焼鳥屋にいきたいんだけどいい?」
「別になんでもいいけど」
「ねぎま最高!レバーひゃっほう!」
「…(帰りたい)」


これが焼鳥屋とカレーだとしたらどうだろう。

「今日焼鳥屋にいきたいんだけどいい?」
「えー、今日カレーの気分だったのに、全然違うくない?」
「カレーか。焼鳥って気分にならない?」
「ならない」
「なろうよ」
「ならないわよ」
「そうか、全然違う和食にして、双方我慢しよう」
「なんでよ!チキンカレーじゃだめ?」
「ダメだよ。串がいい」
「タンドリーチキンは?」
「ううん…」
「それが串に刺さってたら?」
「刺さってないでしょ」
「刺そうよ。店員さんに刺してもらおうよ。よし決まった」
「ううん」
「じゃなにがいいのよ!」

こんな風に、違う目的があるだけで、
ラリーはいくらでも続くのだ。
串刺しタンドリーチキンでいいと思えばカレーに行くだろうし、
いったカレー屋にタンドリーチキン売り切れというアクシデントを作ることも出来る。
こうやって話は転がしていける。

串刺しタンドリーチキンがあまり面白くないから、
焼鳥とカレーの組み合わせを変えて、
よりへんてこな組み合わせになるようにして、
落ちが売り切れにすれば、
もう一本のコントの背骨が出来たようなものだ。
あとは会話のコネタを挟んでいけばよい。


ラリーとは、
最初からラリーをするつもりでなければ成立しない。
テニスにおいては、相手を出し抜く玉を打つことだ。
出し抜かれてはならないから、相手を出し抜くように打ち返し、
それが結果的に続くのがラリーである。

会話におけるラリーとは、対立である。
対立は、目的の違う人々の間で起こる。
目的が同じ人々の間にはラリーは起こらない。

「好きだよ」
「私も」
「ふふふ」

「私たち似てる」
「そうね」
「ふふふ」



ラリーは、目的の違う人々の間で起こる。
だから会話が生き生きとする。

「おもしろげな違う目的を作ること」が、
創作だといってもいいぐらいだ。
posted by おおおかとしひこ at 10:40| Comment(0) | TrackBack(0) | 脚本論 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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