2015年05月17日

中盤を厚くするには、人を増やすといい

身も蓋もない結論だけど、
中盤を書くのが苦手な人は、このやり方を試すのはどうだろう。


中盤が薄くなること、は、
短編から長編に挑戦しはじめたときに、
よく起こる問題だ。

問題と解決は出来ているのだが、
その過程を描こうとすると、
一直線で終わってしまって、
ストレートに三幕に来てしまう。
中盤が薄いなあ、という話になってしまう。

一直線上の「段階」を増やすやり方を、
四天王テクニックとかつて命名した。
車田漫画の定番、「十二の門を突破しなければならない」
(古くは影道、阿修羅一族。今の人には黄金十二宮か)だ。
トーナメント方式もこの変形だ。

今回は、一直線ではなく、線を増やすことで対処する考え方である。

主人公に関して二つ目のストーリーラインを作ってもよい。
(メインの事件の他にラブストーリーがあるのは、定番)
あるいは、一直線のラインとは一見関係ない別の人物をつくり、
その人物に関するストーリーラインを作る方法もある。
(二幕がはじまったときに出てくる新キャラは、この役割を持っている。
ブレイクシュナイダーの言う、Bストーリーである)

さて、ストーリーラインを増やすのは構わない。
問題は、それらが上手く絡み合うことである。
あるストーリーラインが別のストーリーラインに影響されなければ、
それらは因果関係がないことになってしまう。
(絡まないのがクリストファーノーラン)

例えば風魔では、風魔対夜叉のメインストーリーラインに対して、
小次郎と姫子のラブストーリーというストーリーラインがある。
そもそも主人公の動機になる、姫子への思いは、
姫子を守ることがメインストーリーラインの動機になる。
ふたつのストーリーラインの動機が同じなのだ。
仕事と嫁のパターンだ。
嫁を守る為に仕事をがんばる。
二つのことは同じではないが同じだ。
これが絡み合うことである。

最初は、風魔対夜叉というメインストーリーライン一本だったかも知れない。
それだけじゃ一直線で終わってしまって、
詰まらないなあ、という直感が、
姫子という新キャラを作ったのだと思う。
そして二本のストーリーラインを絡めることで、
実に豊かな話になったのだ。
絡めるとは、ただ因果関係をフラグで作るのでなく、
もはや不可分の関係になるまで、
じっくりと煮込んでいくことを意味する。
もうどろどろになるまで。
風魔対夜叉のストーリー単体でも詰まらない。
小次郎と姫子のラブストーリー単体でも詰まらない。
それが絡み合ってるから面白い。
そこまでひとつのものにしていくことだ。
(余談だが、姫子を切った舞台版は、面白かったか?
全然面白くなかったと思うよ)

さらに、小次郎と武蔵の宿命のライバルの間に、
絵里奈という別のストーリーラインが入っているから、
面白くなっている。
武蔵が単なるサイキック傭兵でないこととか、
病気で死にそうなこととかが、
物語に厚みを加えている。
(ドラマ版では更に小次郎と絵里奈を絡ませた。
僕は病院で三人を蜂合わせさせるべきだと思っていたが、
12話では陽炎大活躍のため、そこまで出来なかった。
リライトするとしたら、そこかなあ)


「物語を作るには、三角にするといい」
というのは、昔から言われる格言だ。
三角関係、両陣営に通じてるダブルスパイ、
両陣営とは別の第三勢力、
変身ものと友人(変身前と変身後の自分の二人で、三角関係になる。
スパイダーマン1がそうだ)
などは面白い物語の基本構造だ。

ドラマ風魔でも、この三角形はとても意識している。
小次郎-敵-姫子
小次郎-絵里奈-武蔵
小次郎-壬生-武蔵
小次郎-蘭子-姫子
小次郎-竜魔-霧風
竜魔-劉鵬-霧風
項羽-劉鵬-小龍
項羽-小次郎-小龍
劉鵬-小次郎-霧風
陽炎-壬生-武蔵
闇鬼-雷電-夜叉姫
夜叉姫-壬生-黄金剣
氷川-西脇-監視してる夜叉
風魔-夜叉-新生夜叉
などなど。
風魔の人間関係の豊かさは、キャラのたち加減もあるが、
このような動的な三角形を組んでいるところにあるのである。



中盤を厚くするには、人を増やすといい。
しかも、ぽっと出ではなく、
ガッツリ絡んで、三角形になるようにするべきだ。
(例えば、めぞん一刻での、三鷹さんの立場はどうだったろう。
ずっとぽっと出だったと思う。最初からもっと絡んでいれば、
三人の話になったはずだ。ただ、三鷹さんはやはり邪魔者という扱いにしたかったのだろう)

これらを自在に組み直せるのは、
プロット段階だけであることを知っておこう。
三鷹さんのように、後付けにしかならなくなる。


何故人を増やすと、中盤が厚くなるのか。
簡単だ。
「目的」が増えるからだ。

物語とは、異なる目的から起こるもめ事のことであった。
AB二者間での、異なる目的から解決に至るまでのストーリーラインに対して、
三者目Cが加わることで、AC、BC間のストーリーラインが加わり、
飛躍的に複雑になるのである。
四者目Dが加われば以下更にだ。
(で、人は、三角関係ぐらいまでしか味わえない。
四角関係だと複雑すぎるので、どこかを切る)

単純に性的関係で考えて、バイもありだとすると、
物凄く順列組み合わせが発生する。
だから三角関係ぐらいが人間の頭の中で考えるには丁度いい。

恋愛関係と仕事関係をつくるだけで、
人間関係は倍になるだろうし。
恋愛感情がなくとも、公的関係と私的関係だけでも面白くなる。
例えば大塚家具の闘争は、
父娘という私的関係と、社長という公的関係があったから面白くなった。



一直線の単純にしないためには、
人を増やす。
人間関係を豊かにし、ストーリーラインと絡みを増やし、
複数の目的の矛盾とその解決をつくる。
逆にシンプルにするには、
人を減らすとよい。
posted by おおおかとしひこ at 10:44| Comment(0) | TrackBack(0) | 脚本論 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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