2015年05月21日

ストーリーの真ん中

例えば絵や写真なら、
真ん中(付近)に大きくあるものが中心で、その他の小さいものが脇である。
配役表も同じだ。
最初に大きく出る人々が主役で、その他に小さく出る人々が脇役だ。

物事には真ん中と脇がある。

ところがストーリーは違う。
勿論真ん中と脇はある。
しかしそれが、「変化する」からストーリーなのだ。
逆に、「変化する」から、捉えにくい。
捉えにくいということは、手術台の上に乗せて分解出来ない。
そこが面白さで、難しいところなのだ。

ストーリーの真ん中と脇って?


ストーリーは、全く異なる三つのフェイズで、
変化をつけていく。

一幕、二幕、三幕である。
(その切れ目が、第一ターニングポイント、第二ターニングポイントという、
ストーリーの転換点である)


一幕での真ん中と脇は?
真ん中は、事件。
脇は、伏線や状況全体。

二幕での真ん中と脇は?
真ん中は、主人公のメインプロット。
脇は、サブプロット。

三幕での真ん中と脇は?
真ん中は、テーマの暗示。
脇は、サブテーマの暗示。

僕はこのように考えるといいと思う。


ストーリーそのものの真ん中、
という静的な考えに落としこまなければならないとき、
(たとえば予告編、企画書、一言でいうとき)
一幕、二幕、三幕の、
それぞれの真ん中を言う可能性がある。

一幕を選べば、「とんでもない事件に巻き込まれた!?」がメインになる。
二幕を選べば、「主人公がこんなことやあんなことをする!」がメインになる。
三幕を選べば、「こんなテーマの作品」になる。


僕は、名作とは、このどれもが優れているものだと思う。
だから、実はどれをとっても真ん中に見える。

例えば、ロッキー。
「芽の出ないボクサーが、偶然世界戦に指名される話。」
「朝卵を飲んで走り出し、階段を上って朝日を見る場面。」
「俺はまだ何者にもなっていない、だから俺を証明する話。」
僕は、このどれもが、ロッキーという話の真ん中を示していると思う。

当然、エイドリアンのことやポーリーの肉屋のことやミッキーのことは、
脇になるだろう。
それらが揃ってはじめてロッキーというお話になる。


僕は、これを抽出することはネタバレに該当しないと考える。
どんな話だい?と聞いたときに、
一幕や二幕の真ん中のことを話しながら、
三幕の真ん中のことについて話せる人が、
映画的物語のことを、よく分かっている人だと思う。
うまく具体的ディテールをぼかせば、
それはネタバレに該当しないと考える。

あるいは、二つを組み合わせても真ん中を表現したことになる。
事件のヘンテコさと主人公がどう四苦八苦するかを示したり、
主人公が四苦八苦しながら実はこういうテーマなんだと示したり、
こういう事件が起こってこういうテーマなんだと示したり。
(多分最後のパターンがネタバレと誤解されやすい)


昨日ツタヤでレンタルを探しているときに、
ツタヤラジオ的なものが店内で流れていて、
ロマンポランスキーの映画の紹介をしていたのだが、
なんとかサスペンスのジャンルで、
恐怖度は○○に匹敵して、
ドラマは○○に匹敵する、
幻の作品を復刻、なんて言っていた。
馬鹿かと思った。

ストーリーの真芯に全く触れていないからである。
具体的な核心に触れるのがネタバレだ。それはいかん。
だが、ストーリーの真ん中に触らないで、
外枠だけ示されたって、
それが見る価値があるかどうか判断出来ないではないか。
ツタヤは、早晩つぶれるような気がする。
自分のところの商品を、そういう扱い方しかしていない。
自分のところの商品を、深く理解していないからである。
最近の映画の予告や宣伝部も、ヤバい匂いがしている。



ストーリーの真ん中はどこにあるのか。

一幕、二幕、三幕、それぞれで変化するから、
ストーリーは捉えがたく、ウナギのようなのだ。
しかし、「真ん中が変化していく」(しかもその規則がある)と思うと、
それは捉えやすくなる。

自分が書くときにも整理しやすいし、
他人に説明するときにも整理しやすくなると思う。



これに倣うと、「てんぐ探偵」は、
一幕なら、人の心が病むのは、新しい妖怪「心の闇」のせいなのだ!、
二幕なら、人の心をほぐすことで「心の闇」を追い払う新しいドラマ、
三幕なら、闇は炎で照らすことが出来る、
になると思う。
物語後半になって、ようやくこのことが見えてきたよ。
人はまとめに入りたがるのかね。
posted by おおおかとしひこ at 10:39| Comment(0) | TrackBack(0) | 脚本論 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前: [必須入力]

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント: [必須入力]

※ブログオーナーが承認したコメントのみ表示されます。

この記事へのトラックバック