2015年06月09日

コストダウンは衰退への第一歩

何故なら、ルーチン化したということだから。
作業効率が見積もれてコストダウンするポイントが分かるほど、
作り方が固定化してしまったということだから。


我々の仕事は、毎回違う新しいものをつくることだ。
だから作り方は一定ではない。
下手すると、作り方から作る、なんてことはよくある。

とはいえ、過去にやったことがあるものを応用して、
前のやり方を踏襲すれば楽なこともある。
(これが一定の質を保証したり、
逆に一定の枠から出られない弊害を生む。
例えば日本のCGの作り方は大体決まっている。
ハリウッドのCGは、プログラムから作る。
当然だけど、値段は2桁から3桁違う。
CMのCGは数百万、いけちゃんのCG費は2000万。
秒単価を考えれば不当に安い。
予算配分を決めるのは監督ではなくプロデューサーだ。
財布を握る人が、前例踏襲か先行投資かを選択する)


これが前の踏襲だけになると、
(特に日本人は前例主義だ)
次にやって来るのはコストダウンだ。

同じことやるだけなら、もう少し安く出来ないか、だ。

こうして制作の価値が値崩れし、
複数の業者による見積もり競合になり、
安い業者が仕事を奪い、
質は下がり、元々よかったものがどうでもよくなる。
行き着く先は移民であり、ロボット化だろう。


今映像業界での、クリエイティビティの価値下落が激しい。
それは、コストダウンが第一になっているからだ。

いくらでも金はある、面白いものをつくれと言われても、
もう面白いものは作れないほど、
今業界全体が弱体化している気がする。
(ちなみに業界小話。本屋でも売っている専門誌で確認できることですが、
ペプシ桃太郎とカップヌードルの新作は、同じ監督です。
化けの皮が剥がれたね)


それは、デジタル導入と機を一にしている。
(最初は編集から、次にCG、次に撮影機器の順だった。
次はオールインワンの鷹の爪団方式になるだろう。
つまり、ユーチューバーとたいして変わらないレベルに堕ちるだろう)


コスト革命は結局作り手の価値を下げる。
女は安売りしたら終わり。
次も安い値段で買われ、更に値段を下げられ、
更に安い女に客を取られるだろう。


今コストを多少無視してでも、という現場はどこかな。
シンガポール?インド?南アフリカ?
日本だとオリンピック関連?
火星開発まで景気は良くならないのか?

映像業界は、ほんとにやる気があるのかなあ。
ちょっと不透明になってきたよね。

ルーチン化したところから、新しいものが出るわけがない。



いつの時代も必要なのは、新しくて面白い話が作れる人だ。
つまりそれはコスト度外視の、
莫大な先行投資(勉強や経験や研究)が必要なのだ。
学習に王道なし。
posted by おおおかとしひこ at 13:38| Comment(0) | TrackBack(0) | 脚本論 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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