2015年06月15日

カオスへの抵抗

現実は理不尽だ。
好きな人はこちらを振り向いてくれず、変な男に抱かれて満足している。
現実は理不尽だ。
生きてほしい人はすぐに死に、どうでもいい奴ばかりのさばる。
現実は理不尽だ。
正義は伝わらず、偽善が大手を振って人を騙す。
現実は理不尽だ。
人生はちっともうまくいかない。

そこに、どういう理想を光明とするかが、物語だと思う。


物語の初心者は、
だから、理想的なものばかりを書いてしまう。
だからご都合主義になる。

作者本人だけが、理不尽な現実を否定できたと信じるが、
他の人から見たら、そんなわけないだろ、
そんな都合のいい理想郷が世界のどこにあるのだ、
と言われる。
(しかも最悪なことに、作者本人は悪くないと思っている)

キャリアを積むと多少ましになって、
理想郷の押しつけ、
たとえば巨乳で童顔の処女が主人公に惚れて離れない、
なんてのは、オカシイと気づけるようになる。
そこで、なんとかそれが成立するような、リアリティーのある条件から考えられるようになる。

さらにキャリアを積むと、理不尽な現実のカオスを書けるようになる。
悪役が人間的なばかりだけでなく、
人間や運命の残酷さも書けるようになる。
しかし理不尽がリアルなほど、
それに抗する理想が、ペラペラの願望に見えてしまい、
バッドエンドしか書けないか、
ご都合ハッピーエンドになってしまう。

さらにキャリアを積むと、
カオスも書けて、理想を自然に書けるようになる。
理不尽な現実を、物語の中の条件の時だけ、
理想的な世界へ変革してゆくことを可能にする。
それは大抵主人公の魅力だとか、人々の協力などによってだ。
(魔法やデウスエクスマキナなどの超常に頼るのは、既に卒業している)

ここで、ようやくアマチュア卒業だと思う。

ここからプロのストーリーテラーの入り口だ。
こういうのを20代前半までに終わらせていると、
見込みがある。


まあ、遅く出発した人もいるだろうから、
年齢はあまり関係ないかも知れない。
問題は何本書いて、これらをどれだけ通過してきたかだ。

最近、こういう人が減っているのかな。
それとも、採用する側に未熟者が増えているのかな。
原因はよく分からないが、
ストーリーテラーの入り口以前の作品が増えてきたような気がする。


現実の理不尽を知ろう。
その中でもなお希望を持てる話を、リアリティーを持って作ろう。
物語は、カオスへの抵抗である。



風魔の聖剣戦争でコスモはカオスに勝ったと言えるんだっけ?
対消滅しかしてないよね?
カオスに勝ててないんじゃん。
posted by おおおかとしひこ at 05:12| Comment(0) | TrackBack(0) | 脚本論 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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